Episode 024
μの誕生会(中編)

music:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]


前回までの『L.D.C.』

 花火大会を観に行った遥と光は、偶然現れたアルと共に洞窟へ潜入する。しかし、進んでいる最中に地面が崩れ始め引き返すしかなくなる。
 
 同じ頃、龍助と朱里の前に天界の天使族であるミストスが現れた。天界の女神族であるクラシスの遣えで、由依を天界に帰す様に言う。何か深い事情を抱えているらしく詳しくは説明できないが由依は卵から生まれた出生の秘密で『覚醒』の兆しが見え始めているらしい。
 突然のことで二人は困惑するが、由依に心配させまいと元気を出して、せめて由依と一緒にいられる時だけでも由依を幸せで包んであげようと、彼女の誕生会を開こうと考えるのだった。
 
 遥達と一緒に洞窟を引き返しているアルは、何者かの罠にはめられたのではないか?と、感じ始めていたのだった...。

 一歩ずつ足場を確認しながらアル達は洞窟の出口へ引き返すために進んでいた。すると、光が足を滑らせて、2メートルほどずり落ちる。すぐに、アルが鞭を光の方へ伸ばして、光がそれを掴み態勢を立て直した。
「ふ~。危ないなぁ。なぜか、ここもゲートを開くことが出来ないようになっているから、自分の足で進むしか脱出出来ない。」
 アル一人であれば、武器を一時的にbreak throughさせてチェーンにして地面が崩れ去るまでに出口へ脱出も可能かもしれなかったが、遥と光が同行しているために危険な手段を避けなければならなかった。
 結界を張ってわざわざ微かな魔力らしいものを感じさせおびき寄せ、奥に進むと地面が崩れ戻るのも難しい状態になり、まるでネズミ捕りのワナの様に、この洞窟へ導かれたようにアルは感じた。
 光を慎重に引き上げて、再び前に進もうとした時、前の地面が盛り上がって土煙が上がる。
「この感じ、何だ!!気を付けろ!!」
 アルが鞭を構えて砂煙の中で叫ぶ。遥がすぐにリコに言う。

イラスト:hata_hataさん

「行くわよ!リコ!」
「ハイですの!」
「re-call!」
 遥がそう叫ぶと、リコは光り輝いてフォームチェンジし、遥の左腕に盾となって装備される。遥は光の前に立ってロッドを構え、すぐに防御用の氷属性の結界を張れるようにする。
 アルと遥は、砂煙の中から魔獣の魔力を感じ、光達のピアスは更に輝きを増した。
 
「どうやら、魔獣のお出ましだ。それも、何かの力で強化されたみたいで、通常の奴とは違うぜ。」
 そうアルが叫んだ瞬間、魔獣がアルに向かって飛び掛ってくる。アルは跳んで避けることが可能だったが、後ろに遥と光がいるので、防御することを選ぶ。
 
「仕方ない。あまり使いたくないんだが、break through!」
 
 その瞬間、アルの持っていた武器は光包まれて鞭からチェーンの形へフォームチェンジした。そして、前方へ展開して蜘蛛の巣の様に張り巡らす。
 魔獣の一匹がぶつかった瞬間、アルが魔法を唱える。すると、稲妻がチェーンを走り、魔獣を電撃が突き抜けた。大きな悲鳴と共に、その魔獣は気絶して倒れ、地面を転げ落ち、大きな陥没した場所から奈落の底へ落ちていった。
「くっ。大人しくしていれば良いものを…。」
 アルが辛そうな顔をして言うと、光がその力に驚いて見ていた。しかし、次の瞬間、アルの左右から、別の魔獣が飛び掛る。アルは両手に持ったチェーンを瞬時に左右に展開させて、魔獣へ向けて攻撃をする。チェーンは魔獣に絡みつき絞めつけた。必死に魔獣も抵抗するが、次第に力尽きて気を失った。
「こ、これが、元『レジェンド』A.の力なんだ…。」
と、遥が思わず呟いた。無駄の無い動きと、瞬時に計算尽くされた戦略で、最大限効果のある攻撃をする。しかし、無駄に敵を殺さない。それが、アルの戦い方だと改めて感じていた。
 
 ゆっくりとチェーンを緩めてアルが魔獣を地面に降ろし、道具を投げて一匹を結界に閉じ込める。しかし、もう一匹を結界に閉じ込める作業を始めた時、隠れて様子を伺っていた別の魔獣三匹が同時に襲い掛かる。
「何匹いるんだ。こいつらは!」
 アルがすぐにチェーンを三角に展開させて、三方向に攻撃を繰り出そうとした瞬間、足元の足場が崩れだす。そして方膝を付いてしまう。
「しまった!」
 チェーンで狙っていた場所がずれて、一匹だけ押し返して壁に強くぶつけて気絶させたが、他の二匹は外れてしまう。
 一匹はアルの耐性が崩れたことに気付いて加速してぶつかってくる。しかし、寸前で遥がアルの前に結界を張り防御した。
「何をドジってるの!それでも、元『レジェンド』?」
「悪い悪い。俺も歳かな?」
 苦笑いしながらアルが謝ると、もう一匹の魔獣が炎を吐きながら光に向かって飛び掛った。何も武器を持たない光がびっくりして腕で防御姿勢をして叫ぶ。
「うわぁ!!!」
 
 ダメだと思った瞬間、光には周りの動きがまるでスローモーションの様に見える。光に向けて炎が襲ってくるのを遥がリコの盾で防いでくれ、その横からチェーンが伸びてきて、魔獣を突き返していく。そして、壁に押し当て、ドドーンと洞窟内に大きな音がする。
「大丈夫?佐伯君?しっかりして!」
 遥の声で、光が、はっ、として我に返る。
「あ、あぁ。」
 残った魔獣をアルはチェーンで締め付けて気絶させては、道具で結界に封じ込めていっていた。
「どうやら、俺達はまんまとワナに誘き寄せられたみたいだ。畜生。」
「何故よ?あたしの父が大臣になったから?あたしを人質にするための政治的なワナなの?」
 アルが結界に魔獣を封じ込めた後で遥が驚いて尋ねる。しかし、彼は遥の顔を見ないで答えた。
「いいや、違うな。政治的な面は変わらないかもしれないが、狙いは俺だ。俺が、セルの反逆に関することを単独で探っていたから。どうやら、セル以外に魔界の中にもまだディアブロ様への裏切り者がいるみたいなんだ。そいつらの事を探っていたんだが、奴らもそれに気付いて俺を抹消にかかったみたいだな。」
 それを聞いて、遥がアルを心配して言う。
「そんな…。早く脱出して、お父様やディアブロ様に報告しましょう。アルを守ってもらわないと。」
 光も自分が思っていたよりも事態が大変な事に緊張して聞いている。するとアルがチェーンを持ったまま両手の平を見せて、お手上げのポーズをした。
「無駄だ。今の時点では誰が敵かも分からない。あのシーズ博士が信頼して魔界の第二研究所を任せていたセルですら反逆者だったんだ。何処にセルの仲間が潜んでいるか,どれくらいの規模なのかさえも予測がつかないんだ。セルだけでも『レジェンド』クラスの魔力には届かないがそれなりのものだし、奴は研究者として才長けていて、足りない魔力を補うノウハウで強化していて手強いだろう…。」
 アルがそう言った後で、魔獣を強化されているのはセルの研究結果という事に気づく。
「なんて事だ。この魔獣達も、セルの仕業だったんだ…。通りで、break throughせざるを得なかったわけだ。俺とした事が遥達を巻き込んでしまった。早く脱出しよう!お宝が眠る遺跡のダンジョンのトラップとは違って、ここはかなり危険だ!」
 
 

イラスト:hata_hataさん

 地面の中から、また別の魔獣が現れる。そして、炎を辺りに吐き散らす。遥達は、氷の防御魔法で結界を張り、その場で耐えることを余儀なくされた。アルが封印していた魔獣達も飛び散る炎で再び解放され暴れだす。
 遥が防御のために張った結界も、所々解け始め決壊し始めてきた。隙間から炎が差し込み、光のすぐ横を通り過ぎ、服の袖に少し火が付く。光は、手で叩くようにして慌てて火を消す。アルが自分も防御しながら、それを見て叫んだ。
「お前、大丈夫か?お前は人間なんだからなるべく安全と思う所で身を守っておけ!」
「気遣いは無用だ。確かに、俺はアルみたいに魔族じゃないから力は無いけど、子ども扱いは止してくれ。せめて、俺にも武器があったら…。」
「そうか?だったら、これを貸してやる。お前に二つ目の貸しだ。」
 アルがカバンから魔法効果の詰まった球を4個を手渡す。以前、朱里奪還の前に龍助の短期修業を手伝った時にこの球を扱ったので光にも使い方は分かる。
「このままでは結界が持たないわ。re-callしているから魔力の消耗が予想以上に早くて、今のあたしには結界を維持できないわ。」
 結界が少しずつミシミシと音を立てて砕けていく。遥はリコの盾で炎を防御するのが精一杯で再度結界を張る余裕が無かった。
「光、お前も応戦しろ!負けるな!」
「アルに言われなくても、そうするさ!」
 アルに遥の存在で無意識にライバル心を感じてしまう光は、結界が大きく敗れた先に落ちているラケットサイズの棒切れを見つけて飛び出す。
「くそっ。光は出過ぎだ。間合いを考えて下がれ。」
 アルの言葉を無視して、棒切れを掴んだら、右手でラケットを持つ様に構えて、魔法の球を二個持ってサーブのフォームを取る。一つの球が中に待った後で光が一匹の魔獣をにらんで棒切れを振り下ろしながら言う。
「俺がチャンスを広げる!」
 魔法の球が魔獣へ向かって飛び掛かり、風の矢の様に打ち抜いた。しかし、別の魔獣がその魔獣と融合して、大きくなり光の方に吠えた。再び、光が残りの三つを連続して打つが以前の腕の負傷で思った様に力が入らず、痛みで一瞬眉間にしわを寄せる。二つの球は魔獣に当たるが魔法効果が発動せずに落ち、1つは外れて壁に当たって魔法効果が発動する。
 
「いかん。天井が崩れる。」
 アルが飛び出してきて光の横に立ち、左手のチェーンで上方から落下してくる岩を持ち上げ、右手のチェーンを二人の前方に転回して防御をする。
「お前は、俺の事があんまり好きじゃないかもしれないが、こうなった以上、お前も俺も運命共同体みたいなもんだ。遥を守りたい気持ちは同じだろう?」
 少し離れた後方で、別の魔獣二匹の攻撃から身を守っている遥を見て光が唇を噛む。ちっぽけなジェラシーやプライドで自分を見失いそうになっていたからだった。
「…。」
「一時、俺とお前は休戦できるか?」
 アルがチェーンを持ったまま握手の手を差し出す。
「お、俺は、何もアルと張り合っている訳じゃ無いぞ!」
「そ、そうかぁ。それは有り難い。てっきり、嫌われちまっているのかと思ってしまったぜ。よろしくな。テニスプレイヤー。」
「光だ。」
 二人はしっかりと握手をする。
 

イラスト:hata_hataさん

「さ・て・と。じゃぁ、ここを突破するとしますか。なぁ、光?良いアイデアがあるんだが、乗るか?」
「あぁ、あんたは優秀な戦術師みたいだからな。」
「『元』が付くけどな。今は魔界一のトレジャー・ハンターだー!」
 アルがポケットから取り出した先ほどより一回り小さい玉を軽く投げて光がキャッチする。すぐにアルがチェーンを振って張り降りてくる天井を再び支えつつ、光に首を斜め前に振って攻撃ポイントを指示する。
「その魔法を高圧縮で詰めた玉をお前の棒切れのラケットで、精一杯サーブして打ち破れ。振動で魔獣の上の天井が崩れて一時的に生き埋めに出来る。上手くいけば、気絶させて攻撃も止めることが出来る。そして、天井からの岩や土で出口までの道が開けるから一気に走りぬけるぞ。分かったな?」
 うなずいて、光がラケットを左手に持ち替える。光は右手を負傷して以来、リハビリをしながらも、利き手の反対の左手でも練習をしていたのだった。光がサーブして、玉が壁に激突すると爆発する。同時に振動で魔獣達の上の天井も破裂した。魔獣の上に岩が落下して生き埋めになり、一時的に炎の攻撃が止む。
 
 
「よし、ナイス!先に行け!遥も急げ!!ノロノロしていると魔獣達が復活してしまう。」
「キャー!?何するの、アル!」
「行くぞ、光!お嬢様をキャッチしろ!それっ!」
 右手のチェーンで遥の腰の辺りに巻きつけて、前方の走り出している光に投げつけてキャッチさせる。光が振り返るとアルが動こうとしない。
「何してるんだよ!ア、アルも早く来いよ。アルー!」
 遥をその場に置いて、光がアルの元へ駆け寄ってくる。アルは少し小さな声で光に言う。
「なぁ、頼みがあるんだ。お前にはさっきの貸しがあるだろう?遥を守ってやってくれ。」
「何?」
 天井を支える事に精一杯だったアルは、爆発の際に飛んできた破片を避けずに傷ついていた。服の下からは血が流れうっすら滲んでいたのだった。
「俺はここいらが限界だ。お前だけでも逃げろ。そして遥や龍助達を守ってやってくれ。心の支えになってやってくれ。」
「馬鹿野郎!!俺は、もうこれ以上誰にも消えて欲しくないんだ。」
 そして、アルの鞄に手を入れて玉を3個掴かんだ。魔獣が地面の中から這い上がろうと動き出した様だった。
 
「な、何をしているんだ。早く行け!」
「アルらしくないじゃないか。龍助達を諦めずに魔界で支えてきたのはあんただろう?最後まで責任持って、彼らを守ってやれよ。俺も力になるから。」
 アルが光の言葉に舌打ちをする。
「ちぇっつ。かっこよく散ろうと思ったが、光には負けたぜ。そうだった、生き残った奴が強いんだったぜ。その球を出口と反対側に一発打って、その後にすぐにもう一発同じ方向へ打て。そして、その爆風で出口まで飛ぶぞ。」
「分かった。任せろ。」
「後、二発目を打ったら、俺がチェーンを爆風の破片から防御する体制を取るから、お前は吹き飛ぶ寸前に天井へ最後の一発を放ってくれ。天井から落ちてくる大きな岩を粉砕すると同時に天井が降りてくるのを少し遅める。」
「了解、じゃぁ、いくぜ!一色、アルを信じて俺達に任せろ!」
 アルが傷の痛みで顔を歪ませながらうなずく。遥は何が起こるのかも分からなかったが、うなずいてリコの盾を握って防御態勢を取る。
 光が深呼吸をして玉を打ち、続いて二発目も打つ。爆発して爆風がアル達へ迫る。アルがチェーンを爆風の方へ展開し、同時に光が上にサーブし、爆風と共に二人とも飛ばされていく。天井に当たった玉が爆発して天井が降りてくるスピードが少し弱まった。出口の方まで飛ばされて転がり込む。すぐに、アルの方を見るがアルは天井の爆風のために手前で床に叩きつけられていた。
 遥がアルの方を見て叫ぶ。
「アル~!大丈夫か?」
「大丈夫だ。ちょっと計算が足りなかったみたいだ…。」
 
 しかし、次の瞬間、ゴゴーっと大きな揺れが起こり、地面が崩れ出した。
「い、いかん…。さっきのバトルの振動で地面が更に崩れやすくなってしまったんだ。それに、奴らは何かの遠隔操作でこの洞穴ごと消し去るつもりか!遥!光!」
 アルが左右の手に持ったチェーンの先に遥と光にそれぞれ巻きつけて、出口へ投げ飛ばした。
「うわ~!」
「きゃ~、アル!!」
 投げ飛ばされながらアルが崩れ去る地面と一緒に落ちていくのが見える。そして、落ちてきた岩等に打つかって、ぼろぼろになりながら最後の力を振り絞って遥達が出口の近くなるまでチェーンを伸ばし、外す。
 
「アルーーー!!!」
 
 アルのチェーンの先が離れていくのを、遥が手を伸ばして掴もうとするが届かず離れていく。そして、同時に洞窟が崩れ出す。泣き叫ぶ遥を抱えて、光は出口の所へ走り出す。すると、目の前にデビルモードの朱里と龍助が立っていた。遥が洞窟の入り口の結界を緩めた時に、朱里が魔力の放出を感じて、由依を武司達に預けてここへ向かったのだった。
「光じゃないか!どうしたんだ!」
「早く脱出しろ!この洞窟は罠で崩れる。もうこれ以上は犠牲を出したくないんだ!」

イラスト:hata_hataさん

 光の言葉に何か大変な事が起こったのを感じ、朱里が魔力を抑えたピンクの髪のデビルモードから、魔力を解放した水色の髪のデビルモードへモードチェンジする。
 
「ここに結界を張るわ。龍助君と光君は遥ちゃんを連れてすぐに脱出して!!」
「分かった。」
 龍助が出口のロープを持って、光を登らせる。
「アルが...。」
「しっかりして!遥ちゃん。」
 気が動転している遥の頬を一度叩いてから龍助がぎゅっと抱きしめると、遥が龍助にしがみついたまま更に涙を流す。
「まずは、僕達が脱出するんだ。分かるだろう?ここで泣いていても何も変わらないんだ。」
 遥がうなずいてロープを持って崖を登る。
「龍助君!応急処置だけど、これ以上は人間界の住民が進めない様に結界を張って置いたわ。万が一、魔獣等が中にいてもしばらくは出てこれない。後で魔界へこの事を連絡して対応してもらいましょう。何か、嫌な予感がするわ。さぁ、私達も脱出しましょう!」
 
 
 朱里が結界を張り終えて、出口付近の龍助の所へ駆け寄ってくる。朱里の次に龍助が続き、崖を急いで登って空地を走り出る。すると、空地全体に大きく魔法陣が現れたかと思うと、大きな揺れとともに崩れて陥没した。
 辺りに存在する魔力が自分達以外、完全に無くなったのを確認して朱里が言う。
「危機一髪ね。危なかったわ。」
「そうだね。何があったんだい?二人とも。探していたんだよ。」
 龍助が光と遥に言うと、光が悔しそうに地面を蹴った。
「アルがあそこでセルという奴の罠で犠牲になったんだ。」
「なんだって!!アルが?」
 龍助が耳を疑って光に尋ねる。朱里も驚いて遥を見る。誰の目にも、もう先ほどの爆発の陥没で龍助が助けに行ける様な状態では無い事が分かった。
「何度も言わせるなよ。アルは抹消されてしまったんだよ!俺に力が無かったために、アルが犠牲になったんだ!もう、この地面の下に埋もれてしまった!」
 それを聞いた遥が、再び陥没した空地を見て気を失いながらよろよろと朱里にもたれかかり、朱里が龍助と一緒に支えた。リコがre-callから解放されて、寂しげに遥の肩に停まり頬を舐める。
「遥様、しっかりなさって下さいませ…。」
「大丈夫よ、リコちゃん。大きなショックで気を失っているだけだから。龍助君、遥ちゃんを負ぶってくれる?ひとまずみんなで遥ちゃんのマンションに行って、遥ちゃんを寝かせて、光君達の応急処置をするわ。」
 龍助がうなずきre-writeからリラを解放してから、ふらふらしている遥を背負う。リコは光の方も気になりながら遥の側で黙って見守る。リラはリコを心配したが横で声をかけられずにいたのだった。
 
 
 遥の家に着くと、龍助は由依の様子を自宅へ見に行く。花火大会の帰りに武司と恵と実の三人に由依を任せて龍助の家に送り届けるようにお願いしておいたのだった。実達は、てっきり龍助と朱里が一緒にデートするのかと勘違いしていたのだったが、突然、朱里が強い魔力を感じて龍助と共に遥達の行った洞窟へ辿り着いたのだった。朱里のベットで由依がぐっすり眠っている様子を確認したら、龍助の母に由依を任せて遥のマンションへ戻る。
 
 朱里は遥の緊急用デバイスを使って、魔界にいる遥の父へ連絡を終えていた。すぐに、遥の家の母シェリルと執事オーランド.Dと医者のエドワードを向かわせた。一人娘の遥の様子が気になり誰よりもすぐに向かいたい気持ちを抑えて、遥の父は魔界の大臣としての責務から緊急対策を取るべく、シーズ博士と会議の準備にかかるとのことだった。そして、調査のために魔界の兵士を向かわせると約束した。
 
 遥はアルが自分を救って洞窟に生き埋めになったことにショックを受けてすっかり落ち込んでしまっていた。心身共に衰弱していたので、朱里がベットへ寝かしつけると布団を頭から被って泣いていた。悲しみに震えている遥を、朱里は布団の上からそっと優しくなぜてあげると、遥が右手を少し出した。それを見て、朱里が手を握って涙を流した。
 隣の部屋では、うつむいたまま光が座り込んでいた。

イラスト:hata_hataさん

「光様…。」
 遥を朱里に任せて、リコが光の肩にそっと飛んできて停まる。そして、彼の頬を伝って落ちる涙を、舐めてふき取ってあげる。すると光がリコの頭をなぜながら力なく口を開いた。
「なぁ。リコ…。俺はまた生き残っちゃったんだ…。何の能力も無い唯の人間の俺なんかより、魔界や人間界の平和の為に尽くしていたアルの方が生きるべきだったのに…。」
「どちらが生きるべきだったとか、そういう話は止しましょう。あの状況では、あれが最善の策だったんです。あなたがアル様の立場であってもそうしたと思います。光様は決して悪くないですよ。」
 リコが優しく慰めるが、光が自分の膝を右手の拳で叩いた。
「でも、俺がアルに嫉妬して、能力が無いにも関わらずでしゃばって付いて行ったから足手まといになったんだ。アルと一色だけだったらこうはなっていなかった!」
 それを聞いて、リコが光にきつく言った。
「甘ったれないで下さい!あなたが決めたことでしょう?それに、魔界の厳重な警備から脱走したセルです。魔界でも捕まえるのに手こずっている輩を相手に私達だけでも生き残れたのは良かったと思わなければなりません。」
 部屋に入ってきた龍助が光に優しく言う。
「そうだよ。光。リコの言う通りだ。僕だって、アルが犠牲になった事は悲しい。でも、光や遥ちゃんやリコが生きていてくれてうれしい。すぐに元気になれっていうのも無理だと思うけど、元気を取り戻して前に進むことをアルも願っていると思うよ。」
「龍助…。リコ…ごめんな…。俺…自分の事ばっかりで。辛いのはみんな一緒なのに…。」
「私をがっかりさせないで下さい。光様は笑顔の似合う素敵な男性でいて欲しいですの。」
「ごめんな…。」
 肩に停まっていたリコを手に取って胸で抱きしめて光は大泣きした。リコは優しい声で、そっと囁いた。
「大丈夫です。悲しい涙は辛いですが、その分だけあなたは強く光り輝けるはずです。あなたの名前の様に…。」
 
 龍助は光にタオルケットをかけてやってから、遥の様子を見に行く。朱里が龍助に気づき、握っていた遥の手を龍助に預ける。遥は疲れ切っていて朱里の介抱で眠りについていた。

イラスト:hata_hataさん

「ようやく眠りについたみたい。私、コーヒーを入れてくるわ。もう少ししたら、遥ちゃんのママ達がここへ駆けつけてくれるから。」
「今日は、色々あったね。楽しい事と悲しい事が沢山あって、僕もまだ混乱してるよ。」
 遥を起こさないように龍助が小さな声で朱里に言うと、朱里はそっと龍助の背中から抱きしめる。
「そうだね…。涙はうれしい涙が良いよね。」
 龍助も静かにうなずいたのだった。
 
 
 数時間後、遥の母達が人間界へ到着し、遥のマンションへ来た。朱里と龍助は、遥を彼女の母に任せ、執事のオーランドに光を任せた。遥と光を魔界の医師のエドワードが診て遥には鎮静剤の様な魔法を施し、光には体力回復の水属性の癒し系魔法を少しかけて眠らせてやる。エドワードはディオール家のお抱えの医者で、幼い頃体の弱かった遥の為に住み込みで遥を診てきたのだった。以前、龍助が朱里奪還の際に、魔界で負傷した時もエドワードの処置により回復したことがあった。
 龍助が光も診てもらったお礼として頭を下げると、エドワードは小さく頷いて朱里の出したコーヒーを飲んだ。
「人間界へ来たのは初めてだが、あの光という人間は何故私達が見えるんだね?適応魔法をかけないと、人間には魔族は見えないはずだと聞いていたが…。」
 龍助が自分のコーヒーカップを置いてエドワードに答える。

イラスト:hata_hataさん

「光も僕と同じで、魔族を見る事が出来るみたいなんです。」
「そうだった。君も魔族じゃなかったんだったね。」
 エドワードが龍助にそう言うと、朱里が龍助の横に座って話した。
「稀に特殊な人間がいて、彼らは適応魔法をかけていない魔族を見る事が出来ると、シーズ博士からお聞きした事があります。」
「うむ……。」
 
 龍助を見ながらエドワードは腕を組んで何か考え込んだ。以前、龍助を魔界で治療した時にも何かを感じたのだが、それが何かがエドワードには分からなかった。そもそも、異世界を壁で隔てた現代では、異世界を自由には行き来できない。そのため、魔界で魔族や天使族しか診察した事が無く、人間自体が魔族とどう違うのかも古い学術書で少し学んだだけだった。
「どうしました?エドワードさん?」
「いや…?そうだ、光君だが、右腕を負傷しているね?通常の傷ぐらいだったら、癒し系の魔法で治す事が可能だと思うが、彼の傷には何故か効き目がない。」
「その傷は、今回の戦闘で付いたものでは無く、以前、人間界へキメラが迷い込んだ時に負傷したんです。私も水属性の癒し魔法等で回復を試みたのですが外傷だけしか治療出来ませんでした。」
 朱里が、エドワードにキメラが学園に迷い込んだ事件を詳細に説明した。
「光君のその傷の事は、遥ちゃんには内緒にして下さい。アルさんを自分のせいで失ったと心痛めている時なので、更に落ち込んでしまうから…。」
「分かった。君たちの言う通りにしよう。そうだ、後で彼が起きたら、少し傷口のサンプルを採取させてもらって治療法が無いか探してみよう。今のところ、見当もつかないのであまり期待できないが、何か悪化を防ぐ手段だけでも見つかるかもしれない。」
 龍助と朱里がエドワードの申し出に頭を下げる。
「是非、お願いします。」
 
 キンコン、と遥の住むマンションのオートロックの呼び出しブザーが鳴る。朱里が受話器を持って応答すると、オートロックのモニター画面にはM.が映っていた。
「ミディーさん。すぐにオートロックを解除します。」
 魔界から数名の兵士が調査に送られてきたが、その一人がM.だった。遥達の事を知っているM.が適任であろうと、シーズ博士直々の命令でM.が人間界へ向かったのだった。
 
 遥と光が心身共に疲れ切っている様子を見て、M.は案内役にリラとリコを連れて先に空き地の現場へ調査に向かう事にする。今の困惑しているだろう遥達を休めてあげたかったのもあるが、アルの抹消された現場に少しでも早く駆けつけたかったのだった。念のために、代わりに警備用に兵士を一人遥のマンションに待機させた。
 
 
 現場に到着すると、兵士が空き地の陥没した現場周辺に結界を張り巡らせて、人間がこの場所へ立ち入らない様にする。これで、普通の人間には空き地が存在しない様に見える。
 陥没した空き地の土の上をあちらこちらと兵士が散らばって調査し、リラとリコの説明を聞きながらM.がデバイスに報告書作成のためのメモを取っていた。
 リラとリコへの聞き取り調査が終わり、他の兵士にリラとリコが説明をするためにM.の前から離れる。M.はいてもたってもいられず、一人でアルが埋もれているであろう場所を素手で掘り起こそうとするが、三かき掘ったところで手を止めて悔しそうに地面を拳で叩く。そして、力なくつぶやいた。
「アル…。」
 その姿をリコが寂しそうな目で見守っている。風が吹くと砂埃が舞い、まるで彼の悲しみの様に少しずつ積もっていった。
 
 
to be continued...

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が付いたエピソードをお楽しみいただけます。さぁ、『L.D.C.』の世界へようこそ!
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■Episode 001:

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■Episode 002:

♪:[light pink -I love you.-]

■Episode 003:

♪:[nu.ku.mo.ri.]

■Episode 004:

♪:[real]

■Episode 005:

♪:[color]

■Episode 006:

♪:[my wings]

■Episode 007:

♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]

■Episode 008:

♪:[promise]

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■Episode 017:

♪:[ドキ×2]

■Episode 018:

♪:[let it go!!]

■Episode 019:

♪:[N]

■Episode 020:

♪:[tears in love]
♪:[destiny]

■Episode 021:

♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]

■Episode 022:

♪:[Happy Happy Love]

■Episode 023:

♪:[INFINITY]

■Episode 024:

♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]

■Episode 025:

♪:[pain]

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音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2017年11月01日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 9th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

[Breaker feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2016年11月02日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 8th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

 

[Come on! feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2015年09月09日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 7th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

[departure feat.神威がくぽ] shin


[Lock on feat.神威がくぽ] shin


[monologue feat.神威がくぽ] shin


[reduction feat.神威がくぽ] shin


[voice feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲5曲
2月18日(水)よりドワンゴジェイピーにて特設ペー ジを設けていただき先行配信、2月25日(水)よりiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 6th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

CIRCLE[shin entertainment]

麻宮朱里(デビルモード:魔力開放ver.)

イラスト:hata_hataさん