Episode 012
悲しき想いと涙(前編)

music:[ETERNITY]


前回までの『L.D.C.』

 魔界から来た麻宮朱里を取り戻すために魔界へ突入した龍助,遥,リラは、新たに仲間になった魔界のトレジャーハンターであるアルと共に、洞窟の遺跡を抜け、遥の家をまずは目指していた。
 
 アルの復帰により、なんとかJ.達を追い返すことが出来たが、J.の攻撃から遥をかばうことで龍助が傷つき、彼は気を失ってしまった。
 
 自分の身代わりに傷ついた龍助を心配して、遥が落ち込む。敵のキメラを捕らえて龍助を乗せて森を抜けると、遥の生まれ育ったディオール家のお屋敷のあるディクセンオールという大きな街へたどり着くのであった。
 
 一方、捕らわれの身の朱里が持つ宝具『L.D.C.』にも新たな変化が起こることになる...。

 傷ついて気を失ったままの龍助をキメラに乗せて、アルが引きながら町に入る。遥はリラに龍助を任せてキメラから降りて、町の道案内をする。この町は、魔界の大貴族であるディオール系の屋敷があるディクセンオールという町だ。遥が生まれ育ち、朱里に出会い共にこの町の魔法学校へ通ったのだった。
 アルには、龍助と遥たちが魔界に捕らえられている朱里を奪い返しに魔界へ来たことを伏せていた。そして、ディオール家に迷惑がかからないように、遥がディオール家のお嬢様であることも、龍助が人間界の住民ということも言っていなかった。
 しかし、傷ついた龍助を一刻も早く治療する必要があり、遥が以前、ディオール家の頭首の命を助けたということにして、アルをディオール家の屋敷へ案内した。
 
「すんげーでかいなぁ。これが、かの有名なディオール家のお屋敷かぁ。超、お宝が沢山ありそうだな。遥がこんなお金持ちとお知り合いとは…。俺もお知り合いになりたいなぁ。」
「あ、あたしは、頭首の命を昔助けたことがあるだけ。だ、だから、命の恩人を一晩ぐらいは泊めてくれるでしょう。」
「そ、そうだぞ!遥は、貴族のお嬢様なんかじゃないぞ!」
「リ、リラ!な、なんでもないわ。行くわよ。」
 思わずリラが下手なごまかしをしてアルに素性がばれるのを、冷やりとしながら遥が屋敷の立派な門をくぐる。
 
 アル達を扉の前に待たせて遥が先に屋敷の中に入り、遥の父であるディオール家の頭首に説明をする。遥の父は一人娘の遥のいう事をよく吟味してから、匿うことに同意したのだった。魔界の中でも指折りの大貴族であるディオール家にとって、魔界の捕虜になった朱里を奪還しにきた龍助たちを匿い、娘までがその作戦に参画していることを容認するのは、決して許されることではなかった。しかし、遥の真剣な眼差しを見て、娘を見守ることに決めたのだった。
 
 
 遥が扉の前で待っているアル達を家に入るように言う。執事が数人荷物などを預かり、アル達を客室へ案内する。龍助を乗せてきたキメラは敷地内のキメラを数匹飼っている納屋へ、執事の一人が連れて行く。ここにいる執事は、魔族ではなく、天使族だった。天使族は天界に多くいるが、一部は魔界の住民にもおり、魔族へ仕えながら暮らしているものもいるそうだ。
「なぁ、龍助という少年の怪我を早く治療したいんだ。どこか、病院へ連れていかなくては。」
「当お屋敷にはこの地域一優秀な医師がおりまする。その医師に診せましょう。」
「ありがたい。一応、遥が、応急処置したから、彼は気を失っていて、おそらく骨がいくつか折れているが、致命傷ではないと思う。なるべく、早く治療してやりたい。大切な仲間なんだ。よろしくお願いします!」
 深々とアルが執事に頭を下げる。それを見て、慌ててリラも小さな翼でパタパタ飛びながらアルと同じように頭をペコリと下げた。
 にっこりと執事は笑顔で応える。
「それでは、早速、医者を呼びますから、皆様はそれぞれのお部屋にて旅のお疲れを癒してくださいませ。夕食のお食事はお部屋の方へ後ほどお運びします。」
 
 ベッドへ龍助を寝かした後で執事が部屋を出て行く。しばらくして、医師が龍助を診察して治療を施す。水の癒し系の魔法と薬などを使って、あっという間に傷の跡が無くなり、骨折と疲労を癒しの結界を張って治療をすることにして、医師は部屋を後にした。切り裂いた武器の魔法効果が特殊だったので外傷とは別に何か精神へも傷をおったかもしれないので今晩が山場だが、上手くいけば翌朝には完治して目を覚ますだろうということだった。
 
 夕食後、遥が龍助に付いていたいと願い出たので、風邪をひかないようにアルは遥に自分の上着をかけてやって、リラを連れて隣の部屋へ行き、ベッドへ横になった。窓からは少しずつ激しくなって雨が降っている様子が分かった。アルには、その様子がまるで遥の心の中の様に感じられた。
 リラは、アルのそばで丸くなった。本当は、リラも龍助のそばについていたかったのだが、遥の気持ちを察してアルについて来たのだった。アルが左手を頭の後ろに置いて、右手で横に丸くなったリラをゆっくりと無言でなぜてやりながら小さく口笛を吹く。
 
 
 龍助の部屋に残った遥は彼のベッドのそばの椅子に座ってずっと手を握っていた。龍助の持ち物の携帯電話の音楽プレイヤー機能がずっと再生されたままで、イヤフォンから寂しげに音が漏れていた。その曲は、[ETERNITY]だった。
 
「永遠にこの想いは 届かないままで
本当の気持ちは 伝えられないけれど
今もずっと 変わらないよ
優しいあなたのことが好きよ  I miss you...」
 
 遥は、龍助の顔を見つめながら、自分をかばう様にして傷ついた彼の行動を思い出していた。スローモーションで再現される。そして、「僕は朱里も助けたいけど、遥ちゃんも一緒に帰ると心に決めたんだ。」という彼の言葉を聞いてとてもうれしかったことを思い出した。
 
 ディオール家の一人娘としての期待に応えようとするあまり冷たく閉ざされていった遥の心だったが、人間界へ行った朱里を追っていき龍助に出会い、少しずつ彼の持つ温かさでほぐされてきた。龍助が誰よりも朱里のことを大切なのを知っているので、彼を好きになっていく自分を必死に抑えてきた。しかし、龍助と魔界へ来て一緒に旅を続けながらどんどん彼に魅かれていっていたのだった。遥はせめて朱里を助けるまでは龍助のそばで共に歩んでそっと彼を感じていたいと思う様になっていた。
 
「いつかは訪れる
あなたのそばにいられなくなる日が...
それでも 今だけは感じたい そっと...」
 
 涙がこぼれる。今まで、色々と押さえてきた気持ちが一気にあふれ出す。
 
「想いが込み上げて 押さえきれなくなる
涙がもう止まらない I just for you」
 
 外では雨が激しく降り、遠くで雷が一瞬光りゴロゴロと音がこだます。暗闇に結界の緑色の光が浮かび上がって、遥の涙に反射して、キラキラと冷たく輝く。
 
「落ちていく闇に ココロが絞めつけられて
吹き抜ける風が 冷たく髪を揺らすよ
ずっといつも 見つめさせて
かなわないこの願いを込めた 宇宙(そら)へ...」
 
 少し開けている窓の隙間から風が吹き抜けて、遥のセミロングの髪を揺らした。想いが押さえ切れなくて遥は龍助の頬にそっとkissをした。決して、朱里から彼を奪おうとか、そういった気持ちは無かった。遥は、我がままでマイペースな感じな女の子だが、同時に、とても繊細でとても女の子らしい一面を持ち恋には少し従順だった。朱里の様に素直に恋する気持ちを表現できず、龍助に強く当たってしまうこともあった。
 
「素直になれなくて
強く当たっていたね...」
 
 遥が龍助の左腕にはめられているドラゴンの刻印の入ったシルバーのブレスレットに触れながら、彼に寄り添っていた。
 
 
 その頃、朱里はμと記された卵をなぜてやりながら歌を口ずさんでいた。耳には龍助からのプレゼントのイヤリングがつけてあった。彼女もまた、龍助のことを想っていた。
 
「明るく微笑んで 少しずつ私の
ココロを包み込んでた I still for you」
 
「永遠にこの想いは 届かないままで
本当の気持ちは 伝えられないけれど
今もずっと 変わらないよ
優しいあなたのことが好きよ  I miss you...」
 
 朱里の『L'aile du coeur(心の翼)』に、グリーン系のforestgreenのクリスタルが輝いた。同時に『L.D.C.』が点滅する。
「どうしたのかしら、12個目のクリスタルが点灯したら、『L.D.C.』が突然点灯したわ。何が起こったの?これは一体!」
 すると、光を吸い込んだように『L.D.C.』が一度暗くなってから、突然まばゆい光に包まれてフォームチェンジした。同じようにペンダント型だが、少し形が変わった。
「前と違うものになったの?これも『L.D.C.』なの?」

イラスト:hata_hataさん

 
 
「…そうよ…。」
 
「!?」
 ペンダントの中からかすかに心の声がして朱里が驚く。
「誰なの?『L.D.C.』が話しているの?それとも、どこか別の場所からあなたが声をかけてくれたの?それから聞きたいことがあるの。『L.D.C.』って一体何なの?人間になるという願いはかなうの?」
 慌てて、朱里が尋ねる。
「…今はまだ時期が熟していなくて詳しくは話せないの。ごめんなさい。」
「時期?何のこと?」
「…ごめんなさい。本当に話せないの…。あ、もう封印が…。またお話できる時に…、元気を出して希望を持ってね。あなたを私がいつも見守っているから。そして…。」
 途切れ途切れだった心の声が完全に途切れる。
「何?どうしたの?」
 朱里が『L.D.C.』に声をかけるが、もう反応は無かった。
「『L.D.C.』のクリスタルが12個集まったら、フォームチェンジして、更に心の声まで聞こえてきたわ。私を見守ってくれていると言っていた。そして希望を持って、と…。」
 新たにフォームチェンジした『L.D.C.』によって、朱里は少し励まされて、ほんの少し希望を持ってみようと思えるようになっていた。しかし、依然、具体的にどうしてよいのかも分からなかったのだが、全ての夢を断ち切られて心細かった朱里にはわずかな希望も大きな眩しい光に感じたのだった。
「龍助君…。」
 
 
「うっ、朱里…。」
 龍助がうなされて朱里の名を口にする。彼のそばで看病をしていた遥が彼の手を両手で握ったままドキッとする。
「やっぱり、朱里のことが大切だよね…。あたしも朱里のことが大切だもの…。大丈夫、朱里はあたしが取り戻してあげるから…、龍助はいつも優しい笑顔をあたしに…、あたし達に見せていて…。あたしじゃ、朱里の代わりにはなれないのね。やっぱり、あの子じゃないと…。」
 遥は涙で一杯になりながら、静かに囁くように話しかけた。龍助の手を少し強めに握って優しく声をかけた。
「大丈夫、朱里はここにいるよ。だから、龍助は早く元気になってね。ここでずっと手を握っていてあげるから安心してね。」
「…朱里…。」
 うなされていた龍助が、また大人しく深い眠りに付いた。遥は、朝までずっと彼の手を握って看病をしていた。
 
 
 翌朝、龍助が目を覚ます。まだ目の前が朦朧としているが、一瞬、朱里が手を握っているように見えてはっとする。しかし、ゆっくりと視界がはっきりしてきて、瞬きをすると目の前にいたのは遥だった。彼女は龍助の看病に必死で、自分の戦いの傷の治療は後回しにしていた。龍助が気を取り戻したことに気が付いて、遥が慌てて握っていた手を離し、覗き込むようにして声をかける。
「りゅ、龍助!大丈夫?」
「一色さん。その怪我。」
「あ、こんな怪我たいしたこと無いわ。それよりあんたの方がボコボコじゃない。素人なのに私をかばって怪我して…。」
 龍助の傷は治療により回復していたが、衣服は戦いで切り裂かれたままだった。龍助が遥を守れなかっただけでなくて、足手まといになってしまったのではと申し訳なさそうに謝る。
「ごめん。僕がもっと強ければよいのに。これじゃぁ、一色さんの足手まといでしかないね。」
 

イラスト:hata_hataさん

「あー、もう、ぐじぐじしないでよ!いらいらする。今回、守れなかったのなら、次は守れるように強くなれば良いんじゃない!まだあんたは『生きてるんだから』。」
 
「?」
 龍助は、はっとして遥を見つめて、少し笑顔になる。
「そうだね。がんばってみるよ。ありがとう、一色さん。」
「あ、ありがとうは、こっちのセリフよ。一応、助けてもらったから礼は言っておく…。一回しか言わないからね…。ありがとう…。」
 少し下を見ながら照れくさそうに遥が話す。そして、二人は微笑んだ。
「こちらこそ。さぁ、少し回復したから行こうか。」
 ベットの上に起き上がった龍助に、遥はいつもの様につんとした感じで腰に手を当てて話した。
「あ、それから、遥で良いと言ったでしょう?あんた、バトルでやられてそれすら忘れてしまったのかしら?相変わらず馬鹿ね。何度も言わないといけないのかしら?」
「ごめん…。遥ちゃん。」
「分かれば良し!後で、服を買いに行くわよ。魔法で修復も出来るんだけど、もう少しちゃんとした格好にしたほうが良いわね。もう少し魔界の住民に見えるように、あたしが選んであげるわ。」
 遥の心の中でも何かが前向きに変わっていたようだった。まるで、昨日の雨が彼女の涙と共に綺麗に洗い流したように。外は、相変わらず曇り空だったが雨はやんでいた。
 龍助は心の中で遥の「今回、守れなかったのなら、次は守れるように強くなれば良いんじゃない!まだあんたは『生きてるんだから』。」という言葉をかみ締めて、更に決心を固めていた。
「更に強くなろう。せめて、心持ちだけでも。すぐには強くなれないかもしれないけど、あきらめていては何も始まらないんだ。こんなことでは、麻宮さんを、朱里を取り戻せない。伝えたい想いを届けに来たんだから。」
 こうして、彼はまた一歩踏み出したのだった。
 
 
 朝食を食べてから、ディオール家の頭首とその妻に龍助たちは出かけにお礼を兼ねて挨拶をする。
「昨日はありがとうございました。」
「うん、君の傷が回復してよかった。遥お嬢さんには昔お世話になったからお礼が出来てよかったです。」
 頭首が龍助に軽くウインクをする。頭首の妻もそっと微笑む。アルには遥の素性を伏せているのだが、龍助とリラには、このディオール家が遥の実家であり、このやさしく微笑む頭首が遥の父だと、分かっていたからだ。
「ほんと、晩御飯も朝御飯もご馳走で、満腹だった…。おいら、もう一日ここにいたいぐらいだ。」
「リラは食いしん坊ね。」
「遥もな。」
「何でよ!」
 
「まぁまぁ、育ち盛りのガールとドラゴンだからな。リラは、もっと食べると大きくなるかもな。偉大なドラゴンの様に。それから、遥は胸がもっと大きくなってナイスバディーに、うっ!」
 その瞬間、遥がアルの足をかかとで力強く踏み込んだ。アルが苦痛で顔を歪ませながらしゃがむ。
「朱里ほどじゃないけど、あたしだって脱いだらすごいんだから!」
「え?」
 龍助とリラがびっくりして遥の胸の辺りを見る。
「エッチ!!何処を見ているのよ、あんたも。」
 龍助の足もかかとで踏み込む。龍助がアルの横にしゃがみこんだ。
「うっ!ごめん、だって、遥ちゃんが脱いだらすごいなんていうから…つい。」
 リラが遥の攻撃を恐れて、びくびくしながらしゃべる。

イラスト:hata_hataさん

「おいらは、遥の胸にも興味ないぞ。朱里に抱きしめられると良い香りがしてやわらかくて気持ちもよいけど、おいらはドラゴンだから魔族にも人間にも興味が無いからな。勘違いするなよ!」
「わ、分かってるわよ。」
 
 遥の行動に、頭首と妻は苦笑いをしながらも、仲間達とのコミュニケーションをとりながら楽しそうに話す愛娘を見てうれしく思っていたのだった。遥の両親は、歳を重ねるごとにディオール家の一人娘として自覚し、期待に一生懸命こたえようとしてきたことをずっと見守ってきた。そんな中、朱里という存在が遥の唯一の心を許せる友人と知っていたが、その彼女も今は魔界へ捕らえられて会う事も許されなくなってしまったことを心配していた。しかし、心を開いて話ができる、龍助,リラ,アルのような仲間が出来たことに安心したのだった。それに、龍助という人間界の住民を見る彼女の瞳が、普通でないことも感じながら。
 
「それにしても、ここはすごいお屋敷ですね。お宝、いや、芸術品の宝庫ですね。いや~、実にすばらしい。」
「お分かりですか?」
 屋敷の装飾品を見渡しながら目をキラキラとさせているアルに頭首の妻が答える。
「そりゃぁ、俺も芸術品には少し詳しくて。」
「なんたって、あんたは、『ベテラン盗掘師』だもんね。」
 遥がアルに向かって言う。
「お、おい、『ベテラン』は正しいが、『盗掘師』じゃなくて、『トレジャーハンター』と言ってくれよ。なんだか、泥棒みたいで、ここの装飾品を狙っているみたいじゃないか。」
「いくらになるんだろう、って鑑定してなかった?」
「あ、ちょっとだけ。」
 ばつが悪そうに顔の前で右手の親指と人差し指で1.5cmほど隙間を空けてみせた。
「ほらみなさい。」
 にこっと遥が笑顔を作る。みんなも笑顔で応える。
 
 
 屋敷を出る時に龍助を頭首が呼び止める。
「龍助君だったかな?」
「先、みんなでキメラの様子を見に行くから。それじゃぁ、ありがとうございました!」
 アルが遥とリラを連れて屋敷内のキメラを飼っている建物の方へ向かっていった。
「分かったよ。後で行く!あ、なんでしょうか?」
 龍助はアル達に手を振ってから、頭首の方へ振り返った。
「うん。あなたは本当に澄んだ良い瞳をしている。あなたに、お渡ししたいものがあります。」
 頭首は、執事から短剣を受け取り、龍助の手に持たせる。その短剣の柄の部分には『D.』の文字が刻まれていた。
 
「これを、僕に?」
「我が家の家宝の1つです。これがきっとあなたの力になってくれると思います。」
 慌てて、龍助が答える。
「え、そんな大切なものは受け取れませんよ。遥さん、いや、ハルカリさんのお父さん。」
 頭首がにっこり笑顔で応える。横に立っていた頭首の奥様である遥の母が龍助の手を握って優しく言った。
「いいえ、これはあなたが持つべきものなのです。それに、これでハルカリを守ってやってください。あの子はあんな感じなので素直に気持ちを表現できないこともありますが、とても繊細ですぐ自分でなんでも抱え込んでしまいます。どうか、あの子を守ってあげてください。」

イラスト:hata_hataさん

「あの子の大切な親友でもあるジュリアさんを釈放できるように作は尽くしたのですが、残念ながら身柄を牢屋から結界が張られた宮殿の奥の部屋に移すことしかできませんでした。ハルカリがあなたと一緒に、ジュリアさんを奪還すると聞いて、心配でならないのですが、私達が付いていくよりも少数で動いたほうが良いと説得されました。私も出来るだけの情報を集めて遥には先ほど色々と伝えておきました。」
 龍助の手を頭首も握る。
「私達は、いつでもあなた達をフォローできるように準備をしています。無事に、ジュリアさんを助け出して人間界へ帰れるようにお祈りしながら。」
「分かりました。僕は、ハルカリさんに助けられてばかりですが、僕の命に替えてもお嬢さんを守りたいです。そして、みんなで朱里を助け出して、人間界へ帰りたいです。この短剣はお預かりします。」
 
 そう言うと、丁寧にお辞儀をして龍助は遥の両親の元を去った。龍助は短剣に記された『D.』という文字はディオール(Diorl)家の頭文字かと思っていた。
「どうか龍助君とハルカリたちに、あの方のご加護がありますように。」
「そうだな。きっとあの方の、D.様のご加護があるに違いない。ジュリアさんを助け出して、あの子達が無事人間界へ行ける様に祈ろう。私も頭首として出来ることがまだあるかもしれないので更に手を尽くしてみるよ。」
 遥の母が龍助を見送りながら祈り、遥の父も同じく祈った。
「ハルカリも龍助君と共に幸せになれると良いのに…。」
「それは、本人達の問題だから、我々にはどうしようもないが、あの子のあんなに明るい笑顔を見たのは本当に久しぶりだった。実に良い笑顔だった。これも龍助君のおかげだな。ありがとう…。」
 
 
 龍助たちはディオール家のお屋敷を出て、町の道具屋へ向かっていた。龍助が遥の横に来て話す。
「人間界のみんなは元気にしているのかな?光は無事かな?」
「大丈夫よ。佐伯君は。なんたって、我が家の宝具を渡してあるんだから。」
 横でキメラを引いているアルが興味ありげに話しに入ってきた。
「お、お宝の話か?お前の右耳のイヤリングもよさそうだな。売ったら金になるかも。あ、でも、片方だから買取価格も下がっちゃうかな。残念。」
「何を計算してるのよ!これはあたしの…!」
「あ、ああああ、遥!あ、あれだ、遥のお母ちゃんの形見だ。そう、形見だ。」
 遥がディオール家の令嬢ということを話してしまうかと勘違いして、リラが慌てて話を作る。
「何よ!リラまで。あたしのママはまだ…!」
 龍助が慌ててリラに続く。
「あ、ああああ、お父さんだね。お父さんの形見だ。」
 遥が、リラと龍助の慌てようではっとする。ハルカリ家に迷惑をかけないように動いているので、アルには遥の身分を伏せていたのだった。
「そ、そうよ。両親は生きているけど、おばあちゃんの形見よ。今は片方しかないけど、あんたにはあげないんだからね。」
 龍助とリラがほっとして胸をなでおろす。
 
「なんだか、お前ら、俺に何か隠してないか?」
「そ、そんなことないぞ。おいら達は、道に迷った魔界の旅人なんだ。」
「そうか?まぁ、良いや。俺は、お前達がどんな奴でも。なんだか、気に入っちまったしな。遥が俺を。」
「誰があんたなんかを!少なくともあんたなんかより龍助の方が良いんだから!じゃなくて、少なくとも龍助やリラの方がまだましよ!!」
 不意をつかれて、動揺し思わず本心を話しそうになって、遥があたふたとする。リラが遥の気持ちを察して「ましよ」と言われたことに今回は怒らず話す。
「そうだろう。おいらの方が男前だからな。」
「ちぇっつ。遥は俺とお似合いだと思うんだけどなぁ。なぁ?龍助?」
「あー、どうなんだろうね。遥ちゃん次第かな…。いて。」
 遥が龍助の腕をつねる。龍助が遥のちょっとつんとしたご機嫌斜めな様子を恐る恐る伺いながら、遥の耳につけられたピアスを見て、もう片方のピアスをつけている光を再び思い出し、人間界の仲間のことを考えていた。
「まぁ、まぁ。先に進まないと昼御飯の時間になってしまうぞ。おいら、昼は何を食べれるのかな?」
「あんた、今さっき朝御飯食べたばかりでしょう!それに、道具屋でまずは龍助の服をあたしが選んであげるんだから。龍助はありがたく思いなさいよ。」
 うれしそうに遥が鼻歌を歌いながら軽くスキップをしながら歩く。
 
 
to be continued...

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♪:[ドキ×2]

■Episode 018:

♪:[let it go!!]

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♪:[tears in love]
♪:[destiny]

■Episode 021:

♪:[Touch to your heart!]
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♪:[Happy Happy Love]

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[interrupt feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2018年11月21日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 10th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

 

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[voice feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲をiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信中!!『がくっぽいど(神威がくぽ) Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

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麻宮朱里(デビルモード姿:魔力を抑えたver.)

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