Episode 010
トレジャーハント?(中編)
music:[月影の唄]
前回までの『L.D.C.』
洞窟の遺跡には様々なトラップが仕掛けられており、トレジャーハンターのアルの道案内でなんとかクリアしていた。
洞窟は更に奥に続いており、まだ龍助たちの行く手には数々の遺跡のトラップが待ち受けているのだった...。
●第三の石碑(リピートボール)
「と、止まれ!その先には…。…ワナがある。」
突然、アルが叫ぶ。遺跡があるという洞窟の中で、細い道と太い道の分かれ道で、石碑の古代文字を確認してからアルが辺りの様子を探っている最中に、遥が何気なく前に進んでしまったのだった。
朱里を助けに魔界へやってきて、アクシデントにより目的地から座標を外れてしまった龍助たちは、偶然、出会った魔界のトレジャーハンターのアルを道案内役に仲間に迎え入れ、洞窟にある遺跡を抜けて、ひとまず遥の家である大貴族ディオール家のある街へ向かっていた。
洞窟へ入ってから数時間経っているのだが、数々のトラップと格闘しつつ、洞窟をなかなか抜け出せない状況に遥は少し焦ってきていたのだった。
アルに向かって龍助が申し訳なさそうに口を開く。
「もう遅いみたいだよ…。」
遥が振り向いて、アルに文句を言う。
「あんたもっと早く言いなさいよ!グズばっかじゃないの。」
遥の様子を見て頭を抑えている龍助が苦笑いをする。その肩に停まっているリラが遥に尋ねる。
「おいらもそのグズの仲間に入っているのか?」
「うるさい!ほら、大きな玉が来るよ!どうするの?」
遥はリラに怒鳴りながら、後ろを指差しながらアルに指示を請う。彼女が踏んでしまった床がスイッチになっていたようで、洞窟の通路を一杯の大きさの玉がゴロゴロと大きな音を立てながら転がってきているのが見えた。
腕組して考えた後で、アルが口を開く。龍助たちがアルの側に顔を近づけた。
「に、逃げる!」
そう言うと、唖然としている龍助たちをよそ目に、アルは元来た方向へ走り出した。
「え?遥ちゃん、アルは逃げちゃったよ。僕達も逃げようよ!」
龍助が、はっと、我に返って、遥の肩を両手で揺らす。
「そうだよ、遥。おいらたち、ぺっちゃんこになってしまうぞ。」
「一々うるさいわね。リラはぺっちゃんこにしてもらって少しスリムになると良いわ。でも、私は十分スタイルが良いから、押しつぶされるなんてお断りよ!龍助、リラ、下がってなさい!あたしの力でこんな玉なんて押し返してやるわよ!」
遥が転がってくる大きな玉の方に向かってから、瞳を閉じて深呼吸した。そして、ぎゅっと目を開ける。その瞬間、ロッドを振りかざして氷攻撃魔法の呪文を唱えて、玉に食らわす。その衝撃で玉のスピードが少し弱まる。しかし、まだ龍助たちの方へと転がってきていた。
「だ、だめじゃん、遥。」
リラが龍助の肩から乗り出すようにして叫ぶ。
「まだまだよ!」
再度、遥が氷攻撃魔法を繰り出すが、轟音と共にどんどん玉が迫ってくる。数メートルに迫ってきた時、龍助が遥の腕を掴んで彼女をかばう様に強く抱き寄せた。
その瞬間、玉が止まった。
大きな玉が龍助たちを押しつぶさんと接触するすれすれで、アルが戻ってきて彼の武器であるチェーンを地面に突き立てて玉を止めていたのだった。
「馬鹿か、お前ら!俺がぎりぎりで止めることが出来たから良かったようなものの、トレジャーハンターが逃げるように指示したんだから、指示に従え!」
遥や龍助たちを見渡しながら、アルが険しい顔つきで怒鳴る。命を救ってくれたアルのチェーンを見ながら遥が謝る。
「ご、ごめん。」
「ありがとう、アル。助かったよ。でも、遥ちゃんが氷攻撃魔法でスピードを遅くしてくれていなかったら、人間の僕はどっちみち追いつかれていたと思う。」
「まぁ、そうかもな。遥は龍助を守りたかったんだな。」
龍助の腕の中で反省している遥を気遣ってアルが応える。
「おいらは逃げようと思ったんだけど、腰が抜けてしまって…。ちびりそうだった…。」
「お前のどこが腰なんだか分からないが、まぁ俺もびびったぜ。」
アル,リラ,龍助が笑う。龍助の腕の中で遥が赤くなってドキドキしている。
「いつまで、あたしを抱きしめてるの!」
「あ、ごめんごめん。大玉が迫ってきたから夢中だったんだ。痛かった?ごめんね。」
龍助が慌てて遥を抱きしめている腕を解いて、遥の顔を見つめる。少し、指をつんつんさせながら遥が照れながら吐き出すように言う。
「なんとも無いわよ。あ、あり…が…と…う。あ~、助けてくれてありがとう!」
龍助が笑顔で答える。
「こちらこそ、ありがとう。」
「お、素直だな、遥。」
遥の様子を見ていたリラがちょっぴりにやけながら言う。
「うるさいな!ちびドラゴン!」
「ちびちび言うな!」
「まぁまぁ…。」
また遥とリラの口げんかが始まったのを龍助がなだめる。
我関せずのアルが、大玉の動きが完全に止まっていることを確認して、玉の間から見える洞窟の通路の先を指差した。
「おい、あそこを見ろよ。玉が転がってきた方向に何か見えるぜ!お宝かも!」
このトラップは、遥が進んだ道は間違いではなかったようだった。このトラップの発動する少し前の位置にある石碑によると、楽譜のリピートの模様が記されたところまで行って引き返す必要があったようだ。おそらく細い方の道は長年の間に風化や地崩れによってできたもので行き止まりになっており、結局はこの太い道を進み、大玉が転がってきたら引き返して、ある程度まで道を戻ると玉が壁に吸い込まれて、通れるようになる仕組みだったのだ。
龍助たちが玉を止めてしまったので、その間をぬうようにして通り抜けた。全員が通り抜けた後で、アルがちょんと軽く手で押すとゆっくりと転がっていき、大玉は壁に吸い込まれていった。
先ほどアルが指差した方向へ少し歩くとちょっとした広間に出る。
「ここいらで、ちょっと休憩するか。俺は、次のトラップの石碑をチェックしてくるから、お前らは少し休んでおけ。」
「おい、アル。おいらも、付いていくぞ。」
リラが興味本位で次の石碑のチェックに同行しようと声をかける。アルが振り返りながら笑顔で手招きする。
「なんだ、お前、そんなに俺が好きか?しょうがないなぁ。うれしいから、お前もうれしくなるようにキャンディーをやる。」
リラが、うれしそうに山吹色のキャンディーを受け取って口に入れる。キャンディーをもぐもぐしながら目をキラキラさせてしゃべる。
「サンキュな。くぉれは、甘いけどレモンとミカンの間みたいかもぉ。バナナ味もする気が。りんご味も。うううん、スペシャルな感じだぬぁ。」
「ミックスジュースの感じなのかな?良かったねリラ。僕たちまでもらってありがとう、アル。」
「いいってことよ。大したもんじゃないし。甘いもので少し疲れを取っておいたほうが良いと思って。遥もどうよ?」
「ありがとう。」
遥にもキャンディーを渡すとリラと共にアルは次の石碑の方へ歩いて行った。
龍助が携帯電話を取り出し、座ったまま音楽プレイヤー機能で音楽を聴いているのを見て、横に立っていた遥も慌てて真似するように龍助から借りた携帯音楽プレイヤーを取り出した。彼の耳元のイヤフォンから漏れている音を聞いて、遥も龍助と同じ曲を横に座って聞くことにした。楽曲は、[月影の唄]だった。
「静寂に包まれながら目を閉じ
こだまする精霊たちの囁き
流れ往(ゆ)く歴史の中で
古(イニシエ)の神々の歌
奏でよう 想い紡いでゆく」
龍助の横顔をしばらく見つめながら、疲れと緊張から少し解放され、癒されて遥は目を閉じていった。龍助は朱里からプレゼントされたブレスレットを触って朱里のことを考えていた。
「朱里…。」
ちょうどその頃、朱里もまた囚われた何重にも結界の張られた部屋の中で、龍助からプレゼントされたイヤリングに触れつつ、[月影の唄]を口ずさんでいた。
「月の光に 今 照らし出され
広がる空の下で カワラヌモノ
想いと共に 護りたくて...
月影の中にかえらぬ日々だけが
消えてゆくよ
時の鎖で全てを繋ぐ
強く抱きしめられるように...」
朱里の『L'aile du coeur(心の翼)』に、山吹色のクリスタルが輝いた。
「また、一つ”Espoir”によるクリスタルが光り輝いてるのね。もう夢もかなわないのに。」
窓から見える景色を眺めながら囚われの身の彼女はそうつぶやいた。
「ここでは、月が見えないけど、人間界で見た月は綺麗だったなぁ。流れ星もあって…。流れ星を見た後で、龍助君と『星の塚公園(ほしのつかこうえん)』に行ったんだった。楽しかったなぁ。今頃、龍助君は記憶置換されてすっかり私との思いでも忘れちゃっているんだろうな。ちょっと寂しいなぁ。でも、私は覚えているから。大切な龍助君と過ごしたあの時間を。」
突然、乾いた風が吹き抜ける。そして、朱里の前に涼が現れた。
「ジュリア。もう、人間になる夢はあきらめたのか?」
「?。どうしてそんなことを言うの?囚われの身の私に何が出来るというの?龍助君たちを危険に巻き込んでまで、『L.D.C.』にクリスタルを龍助君と一緒に集めて、私が人間になって夢の約束をかなえようと思ったのに、結局は、クリスタルの魔法力を使った武器になっただけだった。その技術を応用すれば、あなた達の武器をbreak throughさせて強化させるようなものだったでしょう。そんな状況で、まだ私に人間になるという夢をかなえることが出来るの?」
「所詮、そのような程度のものだったのか?お前の夢をかなえようとする思いは。まぁ、良い。南龍助は俺が記憶置換しておいたから、今頃、何事も無かったように人間界で暮らしているだろう。お前も、南龍助のことは忘れることだ。」
そう言うと、机に一輪の花を置いて立ち去っていった。朱里が捕らえられてから、時々、彼女の様子を見に来ては、涼は花をたった一輪、置いていくのだった。
その花に目をやりながら、大切な龍助のことを思い出して、朱里は涙した。
物陰で涼がその様子を伺いながらつぶやく。
「南龍助のことが、魔族でもないあの人間が、そんなに大切なのか…。俺には、何が大切なんだろうなぁ。本当に信じるべきものとは、何なのだろう…。」
朱里の囚われている城の通路を一人歩きだしながら涼は考え事をする。
「それにしても、南龍助といい、ハルカリお嬢様といい、本当に懲りないやつらだ。せっかく、俺がだまされた振りをして記憶置換の拒否を見逃してやったというのに。どうしようもない。あのジュリアを取り戻すために命がけで魔界まで乗り込んでくるとは、少し見直したがな。あいつにも何か感じるものがある。俺の武器の槍やbreak throughさせた時のドラゴンキラーが何かをあいつから感じた。あのちびドラゴンを装備して強くなったあいつと俺は戦いたいのか?もう少しすれば、魔界の保安局も南龍助たちに気づくだろう。それとも、魔界の王であるディアブロ様は、俺の動きも含めて全てお見通しで手を打っていらっしゃるのかな?まぁ、ゆっくりと待つとするか。南龍助とハルカリお嬢様が捕まらずに俺の前に現れるのを。」
涼が城を出て、頭を上げて寂しげに空を眺める。
「そういえば、俺がこの魔界へ来た時もジュリアが歌っていた[月影の唄]が似合うような満月の夜だった…。いかん、もう昔のことだ。おれは魔界の兵士のR.だ。なぜか、あの女を見ていると昔を思い出してしまう。だが、記憶がぼやけていてはっきりしないんだが…。」
月のない曇った空を見上げながら涼はぼやけた記憶を思い出していたのだった。
●第四の石碑(ハーモニーステップ)
その頃、龍助たちは休憩を終えて、また歩き出していた。あらかじめ、アルが石碑の古代文字を分析してくれていたので、すぐに説明に入った。
「次は、ハーモニーだ。」
「ハーモニー?」
龍助が頭をかしげながら尋ねる。
「そう、ハーモニー。つまり、和音だ。第一の石碑が『メロディー』で、第二の石碑が『リズム』。第三の石碑は『リピート記号』、第四の石碑は『ハーモニー』。第三は関係ないんだけど、『メロディー』『リズム』『ハーモニー』って、確か音楽を構成する重要な要素だったと思うんだ。どうやら、この洞窟の遺跡は音楽にかかわるトラップが仕掛けられているようなんだ。」
「何でも知ってるんだなぁ、アルって。さすがおいら達のトレジャーハンターだ。」
リラに褒められて少し鼻高々なトレジャーハンターが説明を続ける。
「今回は、ハーモニーなんだけど、どうやら、床に描かれているパネルを音にあわせて踏んでいかないといけないみたいなんだ。ハーモニー、すなわち和音の時は三人で別々のパネルを、そして、単音の時はみんなでひとつのパネルを。」
遥がアルの説明を聞きながら髪をくるくると指でいじっていたが、ふと口を開いた。
「何の音に合わせるの?」
「それが、分からないんだ。石碑が風化でかけていて、何かが充電されることが必要みたいなんだが、意味がさっぱり分からなくて。ははは。さっぱり。」
「ははは、じゃないでしょ。ここを抜けないと、洞窟も抜けられないし。」
「なぁ、遥。あそこを見てみて。おいらちょっと気になってたんだけど、あの岩のくぼみのひし形のマークって、氷属性者が好んで使うマークに似てない?」
リラが、小さい手で指した壁の方にくぼみでひし形があった。
「確かに、そうも見えるわ。」
遥がロッドを掴み、振りかざす。そして、そのくぼみめがけて氷攻撃魔法を繰り出す。すると、くぼみの近くで突然魔法を吸い込むように魔法が消える。
「!?」
その様子を見て一同がびっくりする。
「あたしの魔法を吸収してるの?だったら、もっとパワーのある魔法を。」
左手でロッドを3回大きく振り回して、そして右手でロッドに対して十字に構えると大きな氷の吹雪を壁に向けて放った。しかし、同様に壁の辺りで魔力を吸収して魔法は消えた。そして、どこからとも無く音楽が聞こえる。
「は、遥。これだ!」
リラが叫ぶ。
「魔法をその穴に放って、吸収させることで、魔力を充電して音がなる仕組みだったんだ!!やったぞ、遥!!これは、古の遺跡なのか?それとも大昔に滅んだといわれる機械文明のものなのか?」
アルが、少し興奮気味に話す。
「そんなことよりも、早く渡っちゃわないと、魔力の充電が切れてしまうでしょう?」
「そうだね。早く抜けよう。」
洞窟の石畳が一列三枚で数十メートル奥まで曲がりくねった通路に沿って並べられているようだった。
リラが龍助の頭にうつ伏せの形で摑まったら、左から龍助,アル,遥と一列に並んだ。
「用意はいいな?魔法の充電というやつが、どれくらい持つのか分からないから、なるべく早く通り抜けるぞ。和音が鳴っているときはそれぞれのパネルに。そして、単音のときは低音が龍助の進んでいる左側。高音の時は右側の遥のパネルに全員が瞬時に移動すること。真ん中の音は俺の進んでいるパネルへ集まれ。」
「分かったよ。」
「龍助、あんたしっかりついてきなさいよ。みんなの息が合わないと失敗なんだから。」
遥が心配そうに龍助を見る。
「それじゃぁ、行くぜ!3.2.1.GO!」
アルの合図と共に龍助たちが走り出す。
和音の時はそれぞれがパネルを踏みつつ、単音の時は一つのパネルに集まって走り抜けてゆく。
「なぁ、同じ音で歌ったりすることをユニゾンって言うんだぜ。確か。で、12音上だとオクターブ。まぁ、ハモルのって、3度上とか3度下が多かったりするんだ。」
「アルって、音楽にも詳しいんだね。」
「何、自慢してるの。話している余裕なんてないでしょう!少しずつ音の大きさが小さくなってきているの分かってるの?」
「え?そう言えば…。」
遥の指摘したとおり、少しずつ音が小さくなっていっていた。
「音が止まっちゃうと何が起こるんだ?誰か教えてくれ。」
「いや、アルにそう言われても、おいら達には分からないぞ。」
「とにかく早く抜け出すことよ。あんた達、ぐずぐずしないで。」
龍助が慌てて、パネルの隙間で少し躓く。その瞬間、アルが龍助の襟首を掴んで転ばないように走りながら引き上げる。
「おいおい、大丈夫かよ?頼むぜ、龍助。」
「あ、ありがとう。危なかった。」
「ねぇ、あそこがこのトラップの終了地点だと思うんだけど、段々天井が下がってきてるよ。きっと、魔力が蓄積されて充電状態で音が鳴っている時は天井が上がって、通路が開くけど、魔力が尽きると天井が下がって通路が閉じちゃうんだわ。」
「パネルを間違えたりしたら、それが速まるって寸法だな。」
段々と天井が迫ってくる。
「くそ、もう引き返している時間もない。このまま抜けるぞ。」
「おいら、ぺちゃんこになっちゃうかも…。」
龍助の頭の上のリラが迫りくる天井を上目遣いでこわごわ見る。龍助たちは中腰になって姿勢を低くしながら何とか走り抜けた。
その瞬間、天井が床に付いて通路が閉じた。
「と、止まれ!その先には…。…ワナがある。」
突然、アルが叫ぶ。遺跡があるという洞窟の中で、細い道と太い道の分かれ道で、石碑の古代文字を確認してからアルが辺りの様子を探っている最中に、遥が何気なく前に進んでしまったのだった。
朱里を助けに魔界へやってきて、アクシデントにより目的地から座標を外れてしまった龍助たちは、偶然、出会った魔界のトレジャーハンターのアルを道案内役に仲間に迎え入れ、洞窟にある遺跡を抜けて、ひとまず遥の家である大貴族ディオール家のある街へ向かっていた。
洞窟へ入ってから数時間経っているのだが、数々のトラップと格闘しつつ、洞窟をなかなか抜け出せない状況に遥は少し焦ってきていたのだった。
アルに向かって龍助が申し訳なさそうに口を開く。
「もう遅いみたいだよ…。」
遥が振り向いて、アルに文句を言う。
「あんたもっと早く言いなさいよ!グズばっかじゃないの。」
遥の様子を見て頭を抑えている龍助が苦笑いをする。その肩に停まっているリラが遥に尋ねる。
「おいらもそのグズの仲間に入っているのか?」
「うるさい!ほら、大きな玉が来るよ!どうするの?」
遥はリラに怒鳴りながら、後ろを指差しながらアルに指示を請う。彼女が踏んでしまった床がスイッチになっていたようで、洞窟の通路を一杯の大きさの玉がゴロゴロと大きな音を立てながら転がってきているのが見えた。
腕組して考えた後で、アルが口を開く。龍助たちがアルの側に顔を近づけた。
「に、逃げる!」
そう言うと、唖然としている龍助たちをよそ目に、アルは元来た方向へ走り出した。
「え?遥ちゃん、アルは逃げちゃったよ。僕達も逃げようよ!」
龍助が、はっと、我に返って、遥の肩を両手で揺らす。
「そうだよ、遥。おいらたち、ぺっちゃんこになってしまうぞ。」
「一々うるさいわね。リラはぺっちゃんこにしてもらって少しスリムになると良いわ。でも、私は十分スタイルが良いから、押しつぶされるなんてお断りよ!龍助、リラ、下がってなさい!あたしの力でこんな玉なんて押し返してやるわよ!」
遥が転がってくる大きな玉の方に向かってから、瞳を閉じて深呼吸した。そして、ぎゅっと目を開ける。その瞬間、ロッドを振りかざして氷攻撃魔法の呪文を唱えて、玉に食らわす。その衝撃で玉のスピードが少し弱まる。しかし、まだ龍助たちの方へと転がってきていた。
「だ、だめじゃん、遥。」
リラが龍助の肩から乗り出すようにして叫ぶ。
「まだまだよ!」
再度、遥が氷攻撃魔法を繰り出すが、轟音と共にどんどん玉が迫ってくる。数メートルに迫ってきた時、龍助が遥の腕を掴んで彼女をかばう様に強く抱き寄せた。
その瞬間、玉が止まった。
大きな玉が龍助たちを押しつぶさんと接触するすれすれで、アルが戻ってきて彼の武器であるチェーンを地面に突き立てて玉を止めていたのだった。
「馬鹿か、お前ら!俺がぎりぎりで止めることが出来たから良かったようなものの、トレジャーハンターが逃げるように指示したんだから、指示に従え!」
遥や龍助たちを見渡しながら、アルが険しい顔つきで怒鳴る。命を救ってくれたアルのチェーンを見ながら遥が謝る。
「ご、ごめん。」
「ありがとう、アル。助かったよ。でも、遥ちゃんが氷攻撃魔法でスピードを遅くしてくれていなかったら、人間の僕はどっちみち追いつかれていたと思う。」
「まぁ、そうかもな。遥は龍助を守りたかったんだな。」
龍助の腕の中で反省している遥を気遣ってアルが応える。
「おいらは逃げようと思ったんだけど、腰が抜けてしまって…。ちびりそうだった…。」
「お前のどこが腰なんだか分からないが、まぁ俺もびびったぜ。」
アル,リラ,龍助が笑う。龍助の腕の中で遥が赤くなってドキドキしている。
イラスト:hata_hataさん
「あ、ごめんごめん。大玉が迫ってきたから夢中だったんだ。痛かった?ごめんね。」
龍助が慌てて遥を抱きしめている腕を解いて、遥の顔を見つめる。少し、指をつんつんさせながら遥が照れながら吐き出すように言う。
「なんとも無いわよ。あ、あり…が…と…う。あ~、助けてくれてありがとう!」
龍助が笑顔で答える。
「こちらこそ、ありがとう。」
「お、素直だな、遥。」
遥の様子を見ていたリラがちょっぴりにやけながら言う。
「うるさいな!ちびドラゴン!」
「ちびちび言うな!」
「まぁまぁ…。」
また遥とリラの口げんかが始まったのを龍助がなだめる。
我関せずのアルが、大玉の動きが完全に止まっていることを確認して、玉の間から見える洞窟の通路の先を指差した。
「おい、あそこを見ろよ。玉が転がってきた方向に何か見えるぜ!お宝かも!」
このトラップは、遥が進んだ道は間違いではなかったようだった。このトラップの発動する少し前の位置にある石碑によると、楽譜のリピートの模様が記されたところまで行って引き返す必要があったようだ。おそらく細い方の道は長年の間に風化や地崩れによってできたもので行き止まりになっており、結局はこの太い道を進み、大玉が転がってきたら引き返して、ある程度まで道を戻ると玉が壁に吸い込まれて、通れるようになる仕組みだったのだ。
龍助たちが玉を止めてしまったので、その間をぬうようにして通り抜けた。全員が通り抜けた後で、アルがちょんと軽く手で押すとゆっくりと転がっていき、大玉は壁に吸い込まれていった。
先ほどアルが指差した方向へ少し歩くとちょっとした広間に出る。
「ここいらで、ちょっと休憩するか。俺は、次のトラップの石碑をチェックしてくるから、お前らは少し休んでおけ。」
「おい、アル。おいらも、付いていくぞ。」
リラが興味本位で次の石碑のチェックに同行しようと声をかける。アルが振り返りながら笑顔で手招きする。
「なんだ、お前、そんなに俺が好きか?しょうがないなぁ。うれしいから、お前もうれしくなるようにキャンディーをやる。」
リラが、うれしそうに山吹色のキャンディーを受け取って口に入れる。キャンディーをもぐもぐしながら目をキラキラさせてしゃべる。
「サンキュな。くぉれは、甘いけどレモンとミカンの間みたいかもぉ。バナナ味もする気が。りんご味も。うううん、スペシャルな感じだぬぁ。」
「ミックスジュースの感じなのかな?良かったねリラ。僕たちまでもらってありがとう、アル。」
「いいってことよ。大したもんじゃないし。甘いもので少し疲れを取っておいたほうが良いと思って。遥もどうよ?」
「ありがとう。」
遥にもキャンディーを渡すとリラと共にアルは次の石碑の方へ歩いて行った。
龍助が携帯電話を取り出し、座ったまま音楽プレイヤー機能で音楽を聴いているのを見て、横に立っていた遥も慌てて真似するように龍助から借りた携帯音楽プレイヤーを取り出した。彼の耳元のイヤフォンから漏れている音を聞いて、遥も龍助と同じ曲を横に座って聞くことにした。楽曲は、[月影の唄]だった。
「静寂に包まれながら目を閉じ
こだまする精霊たちの囁き
流れ往(ゆ)く歴史の中で
古(イニシエ)の神々の歌
奏でよう 想い紡いでゆく」
龍助の横顔をしばらく見つめながら、疲れと緊張から少し解放され、癒されて遥は目を閉じていった。龍助は朱里からプレゼントされたブレスレットを触って朱里のことを考えていた。
「朱里…。」
ちょうどその頃、朱里もまた囚われた何重にも結界の張られた部屋の中で、龍助からプレゼントされたイヤリングに触れつつ、[月影の唄]を口ずさんでいた。
イラスト:hata_hataさん
広がる空の下で カワラヌモノ
想いと共に 護りたくて...
月影の中にかえらぬ日々だけが
消えてゆくよ
時の鎖で全てを繋ぐ
強く抱きしめられるように...」
朱里の『L'aile du coeur(心の翼)』に、山吹色のクリスタルが輝いた。
「また、一つ”Espoir”によるクリスタルが光り輝いてるのね。もう夢もかなわないのに。」
窓から見える景色を眺めながら囚われの身の彼女はそうつぶやいた。
「ここでは、月が見えないけど、人間界で見た月は綺麗だったなぁ。流れ星もあって…。流れ星を見た後で、龍助君と『星の塚公園(ほしのつかこうえん)』に行ったんだった。楽しかったなぁ。今頃、龍助君は記憶置換されてすっかり私との思いでも忘れちゃっているんだろうな。ちょっと寂しいなぁ。でも、私は覚えているから。大切な龍助君と過ごしたあの時間を。」
突然、乾いた風が吹き抜ける。そして、朱里の前に涼が現れた。
「ジュリア。もう、人間になる夢はあきらめたのか?」
「?。どうしてそんなことを言うの?囚われの身の私に何が出来るというの?龍助君たちを危険に巻き込んでまで、『L.D.C.』にクリスタルを龍助君と一緒に集めて、私が人間になって夢の約束をかなえようと思ったのに、結局は、クリスタルの魔法力を使った武器になっただけだった。その技術を応用すれば、あなた達の武器をbreak throughさせて強化させるようなものだったでしょう。そんな状況で、まだ私に人間になるという夢をかなえることが出来るの?」
「所詮、そのような程度のものだったのか?お前の夢をかなえようとする思いは。まぁ、良い。南龍助は俺が記憶置換しておいたから、今頃、何事も無かったように人間界で暮らしているだろう。お前も、南龍助のことは忘れることだ。」
そう言うと、机に一輪の花を置いて立ち去っていった。朱里が捕らえられてから、時々、彼女の様子を見に来ては、涼は花をたった一輪、置いていくのだった。
その花に目をやりながら、大切な龍助のことを思い出して、朱里は涙した。
物陰で涼がその様子を伺いながらつぶやく。
「南龍助のことが、魔族でもないあの人間が、そんなに大切なのか…。俺には、何が大切なんだろうなぁ。本当に信じるべきものとは、何なのだろう…。」
朱里の囚われている城の通路を一人歩きだしながら涼は考え事をする。
「それにしても、南龍助といい、ハルカリお嬢様といい、本当に懲りないやつらだ。せっかく、俺がだまされた振りをして記憶置換の拒否を見逃してやったというのに。どうしようもない。あのジュリアを取り戻すために命がけで魔界まで乗り込んでくるとは、少し見直したがな。あいつにも何か感じるものがある。俺の武器の槍やbreak throughさせた時のドラゴンキラーが何かをあいつから感じた。あのちびドラゴンを装備して強くなったあいつと俺は戦いたいのか?もう少しすれば、魔界の保安局も南龍助たちに気づくだろう。それとも、魔界の王であるディアブロ様は、俺の動きも含めて全てお見通しで手を打っていらっしゃるのかな?まぁ、ゆっくりと待つとするか。南龍助とハルカリお嬢様が捕まらずに俺の前に現れるのを。」
涼が城を出て、頭を上げて寂しげに空を眺める。
「そういえば、俺がこの魔界へ来た時もジュリアが歌っていた[月影の唄]が似合うような満月の夜だった…。いかん、もう昔のことだ。おれは魔界の兵士のR.だ。なぜか、あの女を見ていると昔を思い出してしまう。だが、記憶がぼやけていてはっきりしないんだが…。」
月のない曇った空を見上げながら涼はぼやけた記憶を思い出していたのだった。
●第四の石碑(ハーモニーステップ)
その頃、龍助たちは休憩を終えて、また歩き出していた。あらかじめ、アルが石碑の古代文字を分析してくれていたので、すぐに説明に入った。
「次は、ハーモニーだ。」
「ハーモニー?」
龍助が頭をかしげながら尋ねる。
「そう、ハーモニー。つまり、和音だ。第一の石碑が『メロディー』で、第二の石碑が『リズム』。第三の石碑は『リピート記号』、第四の石碑は『ハーモニー』。第三は関係ないんだけど、『メロディー』『リズム』『ハーモニー』って、確か音楽を構成する重要な要素だったと思うんだ。どうやら、この洞窟の遺跡は音楽にかかわるトラップが仕掛けられているようなんだ。」
「何でも知ってるんだなぁ、アルって。さすがおいら達のトレジャーハンターだ。」
リラに褒められて少し鼻高々なトレジャーハンターが説明を続ける。
「今回は、ハーモニーなんだけど、どうやら、床に描かれているパネルを音にあわせて踏んでいかないといけないみたいなんだ。ハーモニー、すなわち和音の時は三人で別々のパネルを、そして、単音の時はみんなでひとつのパネルを。」
遥がアルの説明を聞きながら髪をくるくると指でいじっていたが、ふと口を開いた。
「何の音に合わせるの?」
「それが、分からないんだ。石碑が風化でかけていて、何かが充電されることが必要みたいなんだが、意味がさっぱり分からなくて。ははは。さっぱり。」
「ははは、じゃないでしょ。ここを抜けないと、洞窟も抜けられないし。」
「なぁ、遥。あそこを見てみて。おいらちょっと気になってたんだけど、あの岩のくぼみのひし形のマークって、氷属性者が好んで使うマークに似てない?」
リラが、小さい手で指した壁の方にくぼみでひし形があった。
「確かに、そうも見えるわ。」
遥がロッドを掴み、振りかざす。そして、そのくぼみめがけて氷攻撃魔法を繰り出す。すると、くぼみの近くで突然魔法を吸い込むように魔法が消える。
「!?」
その様子を見て一同がびっくりする。
「あたしの魔法を吸収してるの?だったら、もっとパワーのある魔法を。」
左手でロッドを3回大きく振り回して、そして右手でロッドに対して十字に構えると大きな氷の吹雪を壁に向けて放った。しかし、同様に壁の辺りで魔力を吸収して魔法は消えた。そして、どこからとも無く音楽が聞こえる。
「は、遥。これだ!」
リラが叫ぶ。
「魔法をその穴に放って、吸収させることで、魔力を充電して音がなる仕組みだったんだ!!やったぞ、遥!!これは、古の遺跡なのか?それとも大昔に滅んだといわれる機械文明のものなのか?」
アルが、少し興奮気味に話す。
「そんなことよりも、早く渡っちゃわないと、魔力の充電が切れてしまうでしょう?」
「そうだね。早く抜けよう。」
洞窟の石畳が一列三枚で数十メートル奥まで曲がりくねった通路に沿って並べられているようだった。
リラが龍助の頭にうつ伏せの形で摑まったら、左から龍助,アル,遥と一列に並んだ。
「用意はいいな?魔法の充電というやつが、どれくらい持つのか分からないから、なるべく早く通り抜けるぞ。和音が鳴っているときはそれぞれのパネルに。そして、単音のときは低音が龍助の進んでいる左側。高音の時は右側の遥のパネルに全員が瞬時に移動すること。真ん中の音は俺の進んでいるパネルへ集まれ。」
「分かったよ。」
「龍助、あんたしっかりついてきなさいよ。みんなの息が合わないと失敗なんだから。」
遥が心配そうに龍助を見る。
「それじゃぁ、行くぜ!3.2.1.GO!」
アルの合図と共に龍助たちが走り出す。
和音の時はそれぞれがパネルを踏みつつ、単音の時は一つのパネルに集まって走り抜けてゆく。
「なぁ、同じ音で歌ったりすることをユニゾンって言うんだぜ。確か。で、12音上だとオクターブ。まぁ、ハモルのって、3度上とか3度下が多かったりするんだ。」
「アルって、音楽にも詳しいんだね。」
「何、自慢してるの。話している余裕なんてないでしょう!少しずつ音の大きさが小さくなってきているの分かってるの?」
「え?そう言えば…。」
遥の指摘したとおり、少しずつ音が小さくなっていっていた。
「音が止まっちゃうと何が起こるんだ?誰か教えてくれ。」
「いや、アルにそう言われても、おいら達には分からないぞ。」
「とにかく早く抜け出すことよ。あんた達、ぐずぐずしないで。」
龍助が慌てて、パネルの隙間で少し躓く。その瞬間、アルが龍助の襟首を掴んで転ばないように走りながら引き上げる。
「おいおい、大丈夫かよ?頼むぜ、龍助。」
「あ、ありがとう。危なかった。」
「ねぇ、あそこがこのトラップの終了地点だと思うんだけど、段々天井が下がってきてるよ。きっと、魔力が蓄積されて充電状態で音が鳴っている時は天井が上がって、通路が開くけど、魔力が尽きると天井が下がって通路が閉じちゃうんだわ。」
「パネルを間違えたりしたら、それが速まるって寸法だな。」
段々と天井が迫ってくる。
「くそ、もう引き返している時間もない。このまま抜けるぞ。」
「おいら、ぺちゃんこになっちゃうかも…。」
龍助の頭の上のリラが迫りくる天井を上目遣いでこわごわ見る。龍助たちは中腰になって姿勢を低くしながら何とか走り抜けた。
その瞬間、天井が床に付いて通路が閉じた。
to be continued...
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- 宝具[L.D.C.]
- Espoir01
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- Espoir04
- Espoir05
- Espoir06
イラスト:hata_hataさん
■Episode 001:
♪:[blue]
■Episode 002:
♪:[light pink -I love you.-]
■Episode 003:
♪:[nu.ku.mo.ri.]
■Episode 004:
♪:[real]
■Episode 005:
♪:[color]
■Episode 006:
♪:[my wings]
■Episode 007:
♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]
■Episode 008:
♪:[promise]
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■Episode 009:
♪:[Dancing in the night!]
■Episode 010:
♪:[月影の唄]
■Episode 011:
♪:[Burning Love]
■Episode 012:
♪:[ETERNITY]
■Episode 013:
♪:[ときめき]
■Episode 014:
♪:[flower's song]
■Episode 015:
♪:[baby baby]
■Episode 016:
♪:[your breath]
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■Episode 017:
♪:[ドキ×2]
■Episode 018:
♪:[let it go!!]
■Episode 019:
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■Episode 020:
♪:[tears in love]
♪:[destiny]
■Episode 021:
♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]
■Episode 022:
♪:[Happy Happy Love]
■Episode 023:
♪:[INFINITY]
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♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]
■Episode 025:
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イラスト:hata_hataさん
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[interrupt feat.神威がくぽ] shin
音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2018年11月21日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 10th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)
[above feat.神威がくぽ] shin
[HEAVENLY feat.神威がくぽ] shin
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[Lock on feat.神威がくぽ] shin
[monologue feat.神威がくぽ] shin
[reduction feat.神威がくぽ] shin
[voice feat.神威がくぽ] shin
音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲をiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信中!!『がくっぽいど(神威がくぽ) Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)
南龍助(普段着姿)
イラスト:hata_hataさん