Episode 005
ピクニック
music:[color]
前回までの『L.D.C.』
朱里は、龍助や傷ついた遥を守るために決心して、真のデビルモード(水色の髪の色)へモードチェンジするが、その力はR.を凌駕したものの、デビルモードをコントロールできずに暴走してしまう。その瞳は朱里の「朱」が示すとおり赤く、彼女の異常を心配して近づいた龍助にまで剣を向けてしまう。
龍助は傷を受けつつも、朱里をしっかりと抱きしめ、彼女の暴走を止めた。龍助と朱里に止めを刺そうとしたR.だったが、彼らの周りにオーラが発生して、まるでバリアの様にR.の槍を阻止した。R.は無抵抗な龍助と朱里をそれ以上攻撃せずに、魔界へ帰還し、ディアブロ王へ任務の失敗と朱里の暴走について報告した。
傷ついた朱里や龍助たちの前に、楽器屋で兄のギターを修理から引き取った帰りの光が偶然通りかかる...。
ギターの修理をした後で、光が裕二と実と別れて、帰宅中に偶然、魔界からの刺客R.によって傷ついた朱里,龍助,遥の三人を見つけた。
「おい、どうしたんだ!龍助、朱里、二人とも。あっちには一色まで。」
「…。私…。」
ぼーっとしてしまっている朱里にもたれかかっている龍助の様子を光が見る。どうやら、気を失っているようだが、命に別状はなさそうだった。朱里の肩を軽くゆすりながら光が声をかける。
「おい、朱里。しっかりしろ!くそっ。おい、一色の様子を見てくるから、待ってろ。」
光が遥の所へ駆け寄り、彼女の様子を見る。
「大丈夫か?一色?」
「う、うっ。佐伯君なの?」
「ぼろぼろじゃないか。何があったんだ?龍助も朱里も。とりあえず、携帯電話で救急車を呼ぶから…。」
光が傷ついた遥を心配そうに見ながら、携帯電話を取り出した時、遥が光の腕を引っ張った。
「待って…。大丈夫だから。救急車は呼ばないでよいから、悪いけど私と龍助と朱里を私の家に連れて帰って…。なるべく誰にも会わないように…。」
「だって、そんなに怪我してるのに!」
「お願い…。」
傷ついた遥が真剣な目つきで訴える。しばらく、悩んだ挙句、携帯電話をポケットにしまって光がうなずく。
「ありがとう…。うっ。」
「そのかわり大人しくしていろ。」
遥の頭を軽くなぜて、龍助と朱里の方を見る。
「朱里、しっかりしろ。龍助を俺がおぶるから、一色の両肩を朱里と俺とで担ぐぞ。良いな? 」
遠くで朱里が力なくうなずく。
ひとまず、遥の家に4人はたどり着いた。遥をベッドに横にならせて、龍助の手当てをした。手当て後、龍助もソファーに横にならせた。
朱里は、手当ての手伝いが終わると、窓際の端に離れて座り込み、両ひざを抱えこんで黙ったままうつむいた。
「何があったんだ?お前たち。」
「…。全部、私が悪いの。私がみんなを巻き込んだの。そして、龍助君を…。」
朱里が涙を流して黙り込んでしまった。
「朱里!しっかりしろ。良く分からないけど、何か普通では考えられないことが起こったのは、俺にだって感じるぞ。話してみろ。」
「…。おいらが、説明する。」
「?」
光の後ろにあった、朱里の鞄の中から声がして、リラが出てきた。光が現れた時、慌てて鞄の中にリラは隠れていたのだった。
「なんだ?小さいドラゴンのぬいぐるみか?」
「『小さい』と『ぬいぐるみ』はハズレだが、『ドラゴン』は正解だ。」
「何?朱里、何なんだ?こいつ。お前たちはいったい何者なんだ?」
「まぁ、落ち着け、人間よ。」
そう言うと、リラはパタパタと朱里の方へ飛んでいき、彼女の肩にとまった。
「朱里。こいつには話そう。適応魔法を解除しているのにおいらたちが見えている。龍助といい、こいつといい、普通の人間ではないのかもしれない。悪い奴でもなさそうだし…。」
「…。」
静かに朱里がうなずいた。そして、少しの間、魔界から朱里と遥たちが来たことや、今日起こったことを手短にリラが説明した。光はリラの言うことをじっと聞いていた。
「分かったよ。あんた達は魔界の住民で、許可無く勝手に来たから、龍助が巻き込まれたってことだな。」
「おいらたちが悪かった…。それでも、朱里はかなえたいことがあるんだ。」
「?」
「Espoirを集めて人間になりたいって夢が。」
「Espoirって?」
「人間界でいう歌だ。」
「…。人間になるのにEspoirっていうのが良く分からないんだが…。あまりに非現実的すぎて、今までの物の見方ではすぐにハイそうですか、とは言えない。それで、お前たちは、これからどうしたいんだ?」
頭をかしげながら光はリラに尋ねた。
「まだどうしたらよいか分からない。とりあえず、おいらたちでみんなの傷を癒す。それからまた考える。」
「分かったよ。」
立ち上がって朱里のそばへ行って、光はリラに手を差し出した。
「俺は佐伯光って言うんだ。お前は?」
「おいらは、リラ。」
リラが肉球のついた小さな手を光の手にちょこんとのせる。
「そうか、リラ。ヨロシクな。一色は一人暮らしみたいだから心配だし、こんな状態で龍助も朱里も大変だから、今日は一色の家にみんなで泊まろう。俺が、龍助のおばさんに電話しておくから。」
「適応魔法の応用で、ご両親のことは大丈夫だ。なぁ、朱里?」
返事が無い。朱里は、ずっと両膝を抱え、沈んだままだった。自分の夢をかなえるために起こした行動が魔界の王の刺客まで呼び、朱里をかばってくれた大切な友達である遥が傷つき、龍助を守ろうとした自分がデビルモードになってコントロールできずに、逆に龍助を傷つけようとしたことに相当ショックを受けていた。
「…。まぁ、後で朱里が魔法を使うから、電話はしなくて良いと思う…。朱里…。」
心配そうに朱里を見つめてから、リラは視線を傷ついて気を失ったままの龍助の方へ向けた。
その晩は、光が遥のそばでずっと看病をしていた。朱里は、数時間してから、龍助と遥とリラに回復魔法をかけて、ある程度回復させた。適応魔法の応用も使い、龍助の両親が心配しないように対処した。
気を失ったままの龍助のそばには、リラが丸くなって横たわって様子を見ていた。無言で、朱里も龍助のそばに座って、彼の手を握ったまま眠りに落ちていった。
翌朝、朱里は、優しい声により目覚める。
「麻宮さん?大丈夫?風邪引くよ?」
そう言って、龍助は自分にかけてあったタオルケットを彼女に優しくかけてあげた。
「龍助君。もう大丈夫なの?ごめんなさい。私が人間界へ来たばっかりに。」
「ほんとだね。みんな昨日はボコボコだったね。でも、僕は、君が…、朱里が来てくれてすごく感謝している。」
「?」
「だって、毎日が退屈で、たまらなく退屈で、何か変えたいと思っても、何を変えたらよいのかも分からなかった僕の毎日が、朱里のおかげでなんだかワクワクする楽しい毎日になったんだから。」
「龍助君…。でも、私、龍助君に剣を向けて傷つけてしまった…。」
「おかげで、君を抱きしめることも出来たけど。ちょっと痛かったけどね。」
龍助が照れくさそうに鼻の下の辺りを人差し指で押さえながら言う。
「僕も、守られてばかりじゃなくて、朱里を守りたいと思っているんだよ。男だしね。だけど、ちっぽけな人間の僕には何が出来るかわからない。それどころか、みんなの足手まといにしかならないかも。でも、朱里のそばにいて僕が守ってあげたいんだ。…。全然、説得力ないね。」
「ありがとう…。うれしいよ。ごめんね、龍助君。」
朱里が涙を流しながらうつむく。龍助がそっと彼女を抱きしめてあげた。
「きっと、涙の数だけ強くなれるよ。泣くだけ泣いたら、すっきりするよ。それまで、僕が朱里のそばにいるから。」
リラが横になったまま瞳を閉じて寝ているふりをしていた。
隣の部屋で光と遥もその様子を聞いていた。遥は少し寂しげな顔をして、布団の中に頭をうずめた。そんな遥を光はただ見守るしか出来なかった。
その日は、土曜日だったため、学校は休みだった。龍助と朱里とリラは一旦、むかえの龍助の家に帰宅した。光は、遥と同じ部活でもある千夏や、いつも顔を合わせている仲間の恵とオカマキャラの実を電話で呼び出した。
そして、彼らに遥のことを任せて光もひとまず帰宅した。
遥の住んでいる家は、ディオール家特有の結界が何重にも張り巡らせてあるので、簡単には魔族は入り込めないとのことだった。
あまりに光が心配するので、照れくさそうに、龍助の家にも同じ効果のある結界をこっそり張っていたことも打ち明けた。以前、遥が朱里を倒そうとした時に、龍助を傷つけたことがあったが、その翌日に龍助の家にお詫びの気持ちで結界を張った。張り終えて帰ろうとした時に、朱里と龍助が出てきたので、慌てて「今日からあたしもあんたたちと一緒に登校してあげるから。ありがたく思いなさいよ。」と言ってしまい、その日以来一緒に登校してきたわけだった。
翌日の日曜日は、龍助が朱里を元気付けるために、近くの丘へピクニックに誘った。朱里の魔法のおかげですっかり龍助たちの傷も癒えていたが、朱里はまだ自分を許せないで落ち込んでいたからだ。
初めは二人きりで行こうと思っていたのだが、遥も誘ってみんなで行かないか、と、光から提案され、それをどこからともなく聞きつけた裕二と千夏と恵と実が半ば強引に合流して、結局、8名で緑の丘を目指して行くことになった。
「朱里は龍助と二人が良かったんでしょう?ごめんね。」
実が並んで歩く朱里と龍助の肩を抱きしめて、そう言った。
「い、いや。みんなと一緒も楽しいよね?ね、麻宮さん?」
「う、うん。」
少し元気の無い朱里を龍助がフォローする。
「そうよね。みんなで楽しく元気よく行くわよ!そうだ、『color』って曲をみんなで歌いながらいこうよ。」
そう言うと、実は少し前を歩く光の方へ走っていった。その前には遥,裕二.千夏,恵が雑談をしながら歩いていたが、実の決して上手いといえない歌に合わせて口ずさみながら笑顔でそれぞれが口ずさんだ。
「麻宮さんはこの曲も覚えた?」
「うん、龍助君に貸してもらっている音楽携帯プレイヤーに先日、downloadして入れてもらったから。龍助君も携帯電話で聞いているんだよね?」
「うん。元気になる感じがするから。それになんだかワクワクするような感じだし。」
龍助が口ずさみ、そして朱里も後を追うように歌いだした。
「緑の丘の向こう側 オレンジ色のシューズ履いて
目指す リズム 刻む 今日はハイキング」
龍助が口笛を吹く。つられて、向こうの方でも裕二が吹いている。
「口笛を吹きながら歩こう 青空に七色の虹が輝いている
何か良いことが起こりそう」
風に吹かれながら、朱里の茶色の長い髪が明るくリズムを刻むように揺れている。朱里が持っているバスケットの中には、サンドイッチとハンバーグなどと一緒にリラが入っていた。リラは、朱里が拾ってきたμと記された卵らしきものを大事に抱えて揺れるバスケットの中で眠っていた。
「広がる世界に両手広げ 私らしいやり方で夢描こう
楽しいときに楽しまなくちゃ
それでOK きっとOK 輝いてる(WOW WOW)」
黄緑色のクリスタルが朱里の『L'aile du coeur(心の翼)』に輝いた。
「龍助君、5つ目のクリスタルだよ。」
「本当だね。この歌のように、麻宮さん…朱里も朱里らしく夢を描いていけばよいんじゃないかな?」
「?」
「僕は、応援するよ。朱里がEspoirを集めて人間になりたいって夢。僕も一緒に描いてみたいなぁ。」
「龍助君…。私といると危険を伴うんだよ。魔界からの刺客だけでなくて、デビルモードになった私があなたをまた傷つけてしまうかもしれない…。」
「大丈夫だよ。僕が君のそばにいるって、言っただろう。大丈夫。心配性なんだね、朱里は。」
そう言うと、朱里の眉間に寄せたしわに優しく触れた。
「そんな顔ばっかりしていたら、幸運が逃げていっちゃうよ。自分らしい、僕たちらしい、夢を描こうよ。」
「ありがとう…。」
「じゃぁ、お礼に、いつもの明るい朱里の笑顔が見たいなぁ…。」
真っ赤になりながら龍助がぼそっと呟く。朱里がくすっと笑う。そして、龍助の手をぎゅっと握って、駆け出した。
「みんなに追いつこうよ。」
「よし、まずは光と実のところまで走るぞ!」
二人は手をつないで坂道を元気に駆け上がる。風が吹き抜け、二人とも癒されていく感じがした。
「これから
広がる世界に両手広げ 私らしいやり方で夢描こう
楽しいときに楽しまなくちゃ
それでOK きっとOK 輝いてる(WOW WOW)
広がる世界に両手広げ 自分らしい笑顔で微笑んでみて
みんなで楽しくなれば良いね
私 OK あなた OK 輝いてる」
8人の若者たちがそれぞれ楽しそうに丘の上まで上がったとき、遥も朱里もすっかり元気になっていた。ただ一匹、バスケットの中のリラだけがバスケットの揺れに酔ってしまっていた。
「じゅ、朱里…。おいら、なんだか気分が…。目が回って…。吐き気が…。」
朱里たちが丘の更に先にある花が綺麗な花園のある野原でランチを食べている時、その様子を遠くから見ている男がいた。R.だった。彼は、人間界に潜伏してしばらく朱里の行動と『L.D.C.』についての情報を集めていた。
「黄緑色のクリスタルが、輝きだした。どうやら、Espoirの力のようだが、それを集めて魔力を抑え込んでいるのか?逆に魔力が強くなっているようにも感じるのだが…。違うのか?何をしようとしているんだ、あのジュリア クリスティーという女は…。」
龍助がサンドイッチを持って、少し小高くなっている場所にいる遥のところへ行った。
「一色さんもこれ食べたら?美味しいよ。僕の好きなハンバーグも麻宮さんが作ってくれたから、良かったらそれもあるよ。」
「…ごめんね。あたしがR.に向かっていかなければ、あんたも怪我しなくてすんだのに。朱里だってデビルモードにならなくて済んだかもしれない。」
遥も龍助を守れなかったことを気にしていたようで、少し元気のない表情で謝った。それを見て、龍助は遥にサンドイッチを手渡してから、遥の目を見ながらゆっくりと話した。
「いや、君はがんばったよ。僕と麻宮さんを守ろうとしてくれて。あのまま、大人しく記憶を差し替えられていたら、僕は君や麻宮さんを忘れてしまうところだったんだよね。それを阻止してくれたんだから。感謝しているよ。ありがとう。それに、例え君が敵に向かっていかなかったとしても、R.という人の攻撃力を考えると、麻宮さんは僕たちを守るためにデビルモードというのになっていたと思うんだ。」
「でも…。」
「遥ちゃんはよくがんばったよ。だから、もう気にしなくて良いんだよ。ありがとう。」
遥が少しうれしそうにうなずく。しかし、すぐに、はっとして我に返る。
「な、何よ、あんたが遥ちゃんって呼ぶなんて、百年早いわよ!」
「そう言うと思った。」
二人はどちらとも無く笑った。
その頃、朱里は一人で花の髪飾りを作ろうと、少しはなれた黄色い花が咲く花園に足を踏み入れた。そこへ、R.が現れる。
「あなたは!R.。」
「おっと、慌てるな。R.という名前を覚えてくれているとは光栄だな、お嬢さん。しばらく人間界にいることにしたんで、今は、速水 涼(はやみ りょう)と名乗っているんだ。今日は、戦いに来たんじゃない。人間界での戦闘許可が下りていない以上、俺はお前に手を出せない。それよりも聞きたいことがある。それさえ聞ければ、今日は大人しく帰る。」
「何のこと?」
朱里は摘んでいた花束を少し強く握り締めた。
「お前が、何の目的で人間界へ来たのか?それと、『L.D.C.』について。」
「人間になるためよ。Espoirの効果で『L.D.C.』にクリスタルを集めると、魔力を抑える効果があるかもしれないと、シーズ博士の研究レポートに書いてあるのを見たの。人間になれるかどうかはわからないわ。でも、それでも私はそれに願いをかけてみたの。」
涼は笑いながら朱里に言う。
「そんなことがかなうはずが無い。夢ばかり見ていないで現実を見ろ。」
「私は龍助と夢を描きたいの。一緒にいたいの。そのためにEspoirを集めているの。R.さん、いいえ、速水さん、どうか私の邪魔をしないで。」
真剣に訴える朱里の顔を見て、涼はその視線から目をそらす。右手をズボンのポケットに少し入れて少し考え込んでから口を開いた。
「…。南龍助は人間なんだぞ。魔族と人間とは歳の重ね方も違うのは、お前だって分かっているだろう?それなのに、人間と共に夢を描き、人間になりたいのか?」
「そうなの。あなたにとって馬鹿らしくて価値の無いことかもしれないけど、私にとってはとても大切なことなの!約束を守るためにも。」
「人間界への通行許可も滞在許可も無く、掟を破ってまでして、なしえないといけないことなのか?くだらん。まぁ、いい。俺は、しばらくお前たちを観察しているからな。任務の命令が出たら覚悟しておけよ。ちっ。南龍助とハルカリ嬢か。」
龍助と遥が朱里を探しに来た。それに気がついた涼は、その場を離れた。
「朱里~!」
「遥ちゃんと龍助くん、こっちよ。」
「麻宮さん、何処に行ったのかと思って心配したよ。」
「今、R.という魔界の使者がここに来たの。」
龍助の元に歩み寄る。遥が朱里の表情に少し緊張を感じる。
「何ですって!どこ?」
「もう帰ったわ。どうやら、今回は任務じゃなかったみたい。すぐに消えたわ。」
「でも、危険ね。早く帰らなくちゃ。あたしたちだけじゃなくて、佐伯君や裕二さんたちまで巻き込まれかねないよ。」
「そうだね。早く帰ろう。そうだ、さっき、恵ちゃんが朱里ちゃんに、って渡してくれたんだった。はい。」
そう言いながら、龍助は朱里に花の輪を頭にのせてあげた。綺麗な花々が編みこまれており、朱里をより一層可憐に飾った。
「綺麗じゃない?ねぇ、龍助。朱里によく似合ってるよ。」
「そう?ありがとう。とても綺麗な花輪だね。うれしい。後で恵ちゃんにお礼を言わなくちゃ。ね、龍助君?」
龍助は目の前の朱里にうっとりと見とれていたが、遥が、耳たぶを軽くひねって、我に返る。
「あ、そうだね。恵ちゃんに礼を言わないとね。」
「何、朱里にのぼせてるの!馬鹿じゃないの?さぁ、行くわよ。」
そう言うと、さっさと遥が戻っていった。それを朱里が追っていって、遥の背中に抱きついて歩いていった。
「さて、帰るとしますか。二人とも元気になって良かった。」
龍助は一人呟いてから、頭を上げて彼女たちの方を見たとき、一瞬目を疑った。
朱里の姿が、まるで女神のように見えたからだ。出会った時の明るいピンクの髪の朱里でも、普段の明るい茶色の髪の朱里でも、デビルモードのときの水色の髪の朱里でもなかった。はっと、気がつくと、彼女は普段の明るい茶色の髪の毛に戻っていた。
「あれ?目の錯覚かな?」
目をこする龍助。頭をかしげながら彼女たちの後を追いかけていった。
少しはなれたところから、その様子を涼も見ていた。
「なんなんだ、あのジュリア クリスティーという女は。ますます、興味がわいてきた。ディアブロ様とシーズ博士は何を隠されているのだろう…。もう少し調べてみる必要がありそうだ。あの時のオーラのようなものも、やはり南龍助のものでは無くてジュリアのものだったのか…?」
遠くで龍助たちの声がこだまする。[color]をみんなで歌いながら帰っているようだった。
「広がる世界に両手広げ 自分らしい笑顔で微笑んでみて
みんなで楽しくなれば良いね
私 OK あなた OK 輝いてる
それでOK きっとOK 輝いてる(WOW WOW)」
「おい、どうしたんだ!龍助、朱里、二人とも。あっちには一色まで。」
「…。私…。」
ぼーっとしてしまっている朱里にもたれかかっている龍助の様子を光が見る。どうやら、気を失っているようだが、命に別状はなさそうだった。朱里の肩を軽くゆすりながら光が声をかける。
「おい、朱里。しっかりしろ!くそっ。おい、一色の様子を見てくるから、待ってろ。」
光が遥の所へ駆け寄り、彼女の様子を見る。
「大丈夫か?一色?」
「う、うっ。佐伯君なの?」
「ぼろぼろじゃないか。何があったんだ?龍助も朱里も。とりあえず、携帯電話で救急車を呼ぶから…。」
光が傷ついた遥を心配そうに見ながら、携帯電話を取り出した時、遥が光の腕を引っ張った。
「待って…。大丈夫だから。救急車は呼ばないでよいから、悪いけど私と龍助と朱里を私の家に連れて帰って…。なるべく誰にも会わないように…。」
「だって、そんなに怪我してるのに!」
「お願い…。」
傷ついた遥が真剣な目つきで訴える。しばらく、悩んだ挙句、携帯電話をポケットにしまって光がうなずく。
「ありがとう…。うっ。」
「そのかわり大人しくしていろ。」
遥の頭を軽くなぜて、龍助と朱里の方を見る。
「朱里、しっかりしろ。龍助を俺がおぶるから、一色の両肩を朱里と俺とで担ぐぞ。良いな? 」
遠くで朱里が力なくうなずく。
ひとまず、遥の家に4人はたどり着いた。遥をベッドに横にならせて、龍助の手当てをした。手当て後、龍助もソファーに横にならせた。
朱里は、手当ての手伝いが終わると、窓際の端に離れて座り込み、両ひざを抱えこんで黙ったままうつむいた。
「何があったんだ?お前たち。」
「…。全部、私が悪いの。私がみんなを巻き込んだの。そして、龍助君を…。」
朱里が涙を流して黙り込んでしまった。
「朱里!しっかりしろ。良く分からないけど、何か普通では考えられないことが起こったのは、俺にだって感じるぞ。話してみろ。」
「…。おいらが、説明する。」
「?」
光の後ろにあった、朱里の鞄の中から声がして、リラが出てきた。光が現れた時、慌てて鞄の中にリラは隠れていたのだった。
「なんだ?小さいドラゴンのぬいぐるみか?」
「『小さい』と『ぬいぐるみ』はハズレだが、『ドラゴン』は正解だ。」
「何?朱里、何なんだ?こいつ。お前たちはいったい何者なんだ?」
「まぁ、落ち着け、人間よ。」
そう言うと、リラはパタパタと朱里の方へ飛んでいき、彼女の肩にとまった。
「朱里。こいつには話そう。適応魔法を解除しているのにおいらたちが見えている。龍助といい、こいつといい、普通の人間ではないのかもしれない。悪い奴でもなさそうだし…。」
「…。」
静かに朱里がうなずいた。そして、少しの間、魔界から朱里と遥たちが来たことや、今日起こったことを手短にリラが説明した。光はリラの言うことをじっと聞いていた。
「分かったよ。あんた達は魔界の住民で、許可無く勝手に来たから、龍助が巻き込まれたってことだな。」
「おいらたちが悪かった…。それでも、朱里はかなえたいことがあるんだ。」
「?」
「Espoirを集めて人間になりたいって夢が。」
「Espoirって?」
「人間界でいう歌だ。」
「…。人間になるのにEspoirっていうのが良く分からないんだが…。あまりに非現実的すぎて、今までの物の見方ではすぐにハイそうですか、とは言えない。それで、お前たちは、これからどうしたいんだ?」
頭をかしげながら光はリラに尋ねた。
「まだどうしたらよいか分からない。とりあえず、おいらたちでみんなの傷を癒す。それからまた考える。」
「分かったよ。」
立ち上がって朱里のそばへ行って、光はリラに手を差し出した。
「俺は佐伯光って言うんだ。お前は?」
「おいらは、リラ。」
リラが肉球のついた小さな手を光の手にちょこんとのせる。
「そうか、リラ。ヨロシクな。一色は一人暮らしみたいだから心配だし、こんな状態で龍助も朱里も大変だから、今日は一色の家にみんなで泊まろう。俺が、龍助のおばさんに電話しておくから。」
「適応魔法の応用で、ご両親のことは大丈夫だ。なぁ、朱里?」
返事が無い。朱里は、ずっと両膝を抱え、沈んだままだった。自分の夢をかなえるために起こした行動が魔界の王の刺客まで呼び、朱里をかばってくれた大切な友達である遥が傷つき、龍助を守ろうとした自分がデビルモードになってコントロールできずに、逆に龍助を傷つけようとしたことに相当ショックを受けていた。
「…。まぁ、後で朱里が魔法を使うから、電話はしなくて良いと思う…。朱里…。」
心配そうに朱里を見つめてから、リラは視線を傷ついて気を失ったままの龍助の方へ向けた。
その晩は、光が遥のそばでずっと看病をしていた。朱里は、数時間してから、龍助と遥とリラに回復魔法をかけて、ある程度回復させた。適応魔法の応用も使い、龍助の両親が心配しないように対処した。
気を失ったままの龍助のそばには、リラが丸くなって横たわって様子を見ていた。無言で、朱里も龍助のそばに座って、彼の手を握ったまま眠りに落ちていった。
翌朝、朱里は、優しい声により目覚める。
「麻宮さん?大丈夫?風邪引くよ?」
そう言って、龍助は自分にかけてあったタオルケットを彼女に優しくかけてあげた。
「龍助君。もう大丈夫なの?ごめんなさい。私が人間界へ来たばっかりに。」
「ほんとだね。みんな昨日はボコボコだったね。でも、僕は、君が…、朱里が来てくれてすごく感謝している。」
「?」
「だって、毎日が退屈で、たまらなく退屈で、何か変えたいと思っても、何を変えたらよいのかも分からなかった僕の毎日が、朱里のおかげでなんだかワクワクする楽しい毎日になったんだから。」
「龍助君…。でも、私、龍助君に剣を向けて傷つけてしまった…。」
「おかげで、君を抱きしめることも出来たけど。ちょっと痛かったけどね。」
龍助が照れくさそうに鼻の下の辺りを人差し指で押さえながら言う。
「僕も、守られてばかりじゃなくて、朱里を守りたいと思っているんだよ。男だしね。だけど、ちっぽけな人間の僕には何が出来るかわからない。それどころか、みんなの足手まといにしかならないかも。でも、朱里のそばにいて僕が守ってあげたいんだ。…。全然、説得力ないね。」
「ありがとう…。うれしいよ。ごめんね、龍助君。」
朱里が涙を流しながらうつむく。龍助がそっと彼女を抱きしめてあげた。
「きっと、涙の数だけ強くなれるよ。泣くだけ泣いたら、すっきりするよ。それまで、僕が朱里のそばにいるから。」
リラが横になったまま瞳を閉じて寝ているふりをしていた。
隣の部屋で光と遥もその様子を聞いていた。遥は少し寂しげな顔をして、布団の中に頭をうずめた。そんな遥を光はただ見守るしか出来なかった。
その日は、土曜日だったため、学校は休みだった。龍助と朱里とリラは一旦、むかえの龍助の家に帰宅した。光は、遥と同じ部活でもある千夏や、いつも顔を合わせている仲間の恵とオカマキャラの実を電話で呼び出した。
そして、彼らに遥のことを任せて光もひとまず帰宅した。
遥の住んでいる家は、ディオール家特有の結界が何重にも張り巡らせてあるので、簡単には魔族は入り込めないとのことだった。
あまりに光が心配するので、照れくさそうに、龍助の家にも同じ効果のある結界をこっそり張っていたことも打ち明けた。以前、遥が朱里を倒そうとした時に、龍助を傷つけたことがあったが、その翌日に龍助の家にお詫びの気持ちで結界を張った。張り終えて帰ろうとした時に、朱里と龍助が出てきたので、慌てて「今日からあたしもあんたたちと一緒に登校してあげるから。ありがたく思いなさいよ。」と言ってしまい、その日以来一緒に登校してきたわけだった。
翌日の日曜日は、龍助が朱里を元気付けるために、近くの丘へピクニックに誘った。朱里の魔法のおかげですっかり龍助たちの傷も癒えていたが、朱里はまだ自分を許せないで落ち込んでいたからだ。
初めは二人きりで行こうと思っていたのだが、遥も誘ってみんなで行かないか、と、光から提案され、それをどこからともなく聞きつけた裕二と千夏と恵と実が半ば強引に合流して、結局、8名で緑の丘を目指して行くことになった。
「朱里は龍助と二人が良かったんでしょう?ごめんね。」
実が並んで歩く朱里と龍助の肩を抱きしめて、そう言った。
「い、いや。みんなと一緒も楽しいよね?ね、麻宮さん?」
「う、うん。」
少し元気の無い朱里を龍助がフォローする。
「そうよね。みんなで楽しく元気よく行くわよ!そうだ、『color』って曲をみんなで歌いながらいこうよ。」
そう言うと、実は少し前を歩く光の方へ走っていった。その前には遥,裕二.千夏,恵が雑談をしながら歩いていたが、実の決して上手いといえない歌に合わせて口ずさみながら笑顔でそれぞれが口ずさんだ。
「麻宮さんはこの曲も覚えた?」
「うん、龍助君に貸してもらっている音楽携帯プレイヤーに先日、downloadして入れてもらったから。龍助君も携帯電話で聞いているんだよね?」
「うん。元気になる感じがするから。それになんだかワクワクするような感じだし。」
龍助が口ずさみ、そして朱里も後を追うように歌いだした。
「緑の丘の向こう側 オレンジ色のシューズ履いて
目指す リズム 刻む 今日はハイキング」
龍助が口笛を吹く。つられて、向こうの方でも裕二が吹いている。
「口笛を吹きながら歩こう 青空に七色の虹が輝いている
何か良いことが起こりそう」
風に吹かれながら、朱里の茶色の長い髪が明るくリズムを刻むように揺れている。朱里が持っているバスケットの中には、サンドイッチとハンバーグなどと一緒にリラが入っていた。リラは、朱里が拾ってきたμと記された卵らしきものを大事に抱えて揺れるバスケットの中で眠っていた。
「広がる世界に両手広げ 私らしいやり方で夢描こう
楽しいときに楽しまなくちゃ
それでOK きっとOK 輝いてる(WOW WOW)」
黄緑色のクリスタルが朱里の『L'aile du coeur(心の翼)』に輝いた。
「龍助君、5つ目のクリスタルだよ。」
「本当だね。この歌のように、麻宮さん…朱里も朱里らしく夢を描いていけばよいんじゃないかな?」
「?」
「僕は、応援するよ。朱里がEspoirを集めて人間になりたいって夢。僕も一緒に描いてみたいなぁ。」
「龍助君…。私といると危険を伴うんだよ。魔界からの刺客だけでなくて、デビルモードになった私があなたをまた傷つけてしまうかもしれない…。」
「大丈夫だよ。僕が君のそばにいるって、言っただろう。大丈夫。心配性なんだね、朱里は。」
そう言うと、朱里の眉間に寄せたしわに優しく触れた。
「そんな顔ばっかりしていたら、幸運が逃げていっちゃうよ。自分らしい、僕たちらしい、夢を描こうよ。」
「ありがとう…。」
「じゃぁ、お礼に、いつもの明るい朱里の笑顔が見たいなぁ…。」
真っ赤になりながら龍助がぼそっと呟く。朱里がくすっと笑う。そして、龍助の手をぎゅっと握って、駆け出した。
「みんなに追いつこうよ。」
「よし、まずは光と実のところまで走るぞ!」
二人は手をつないで坂道を元気に駆け上がる。風が吹き抜け、二人とも癒されていく感じがした。
「これから
広がる世界に両手広げ 私らしいやり方で夢描こう
楽しいときに楽しまなくちゃ
それでOK きっとOK 輝いてる(WOW WOW)
広がる世界に両手広げ 自分らしい笑顔で微笑んでみて
みんなで楽しくなれば良いね
私 OK あなた OK 輝いてる」
8人の若者たちがそれぞれ楽しそうに丘の上まで上がったとき、遥も朱里もすっかり元気になっていた。ただ一匹、バスケットの中のリラだけがバスケットの揺れに酔ってしまっていた。
「じゅ、朱里…。おいら、なんだか気分が…。目が回って…。吐き気が…。」
朱里たちが丘の更に先にある花が綺麗な花園のある野原でランチを食べている時、その様子を遠くから見ている男がいた。R.だった。彼は、人間界に潜伏してしばらく朱里の行動と『L.D.C.』についての情報を集めていた。
「黄緑色のクリスタルが、輝きだした。どうやら、Espoirの力のようだが、それを集めて魔力を抑え込んでいるのか?逆に魔力が強くなっているようにも感じるのだが…。違うのか?何をしようとしているんだ、あのジュリア クリスティーという女は…。」
龍助がサンドイッチを持って、少し小高くなっている場所にいる遥のところへ行った。
イラスト:hata_hataさん
「一色さんもこれ食べたら?美味しいよ。僕の好きなハンバーグも麻宮さんが作ってくれたから、良かったらそれもあるよ。」
「…ごめんね。あたしがR.に向かっていかなければ、あんたも怪我しなくてすんだのに。朱里だってデビルモードにならなくて済んだかもしれない。」
遥も龍助を守れなかったことを気にしていたようで、少し元気のない表情で謝った。それを見て、龍助は遥にサンドイッチを手渡してから、遥の目を見ながらゆっくりと話した。
「いや、君はがんばったよ。僕と麻宮さんを守ろうとしてくれて。あのまま、大人しく記憶を差し替えられていたら、僕は君や麻宮さんを忘れてしまうところだったんだよね。それを阻止してくれたんだから。感謝しているよ。ありがとう。それに、例え君が敵に向かっていかなかったとしても、R.という人の攻撃力を考えると、麻宮さんは僕たちを守るためにデビルモードというのになっていたと思うんだ。」
「でも…。」
「遥ちゃんはよくがんばったよ。だから、もう気にしなくて良いんだよ。ありがとう。」
遥が少しうれしそうにうなずく。しかし、すぐに、はっとして我に返る。
「な、何よ、あんたが遥ちゃんって呼ぶなんて、百年早いわよ!」
「そう言うと思った。」
二人はどちらとも無く笑った。
その頃、朱里は一人で花の髪飾りを作ろうと、少しはなれた黄色い花が咲く花園に足を踏み入れた。そこへ、R.が現れる。
「あなたは!R.。」
イラスト:hata_hataさん
「何のこと?」
朱里は摘んでいた花束を少し強く握り締めた。
「お前が、何の目的で人間界へ来たのか?それと、『L.D.C.』について。」
「人間になるためよ。Espoirの効果で『L.D.C.』にクリスタルを集めると、魔力を抑える効果があるかもしれないと、シーズ博士の研究レポートに書いてあるのを見たの。人間になれるかどうかはわからないわ。でも、それでも私はそれに願いをかけてみたの。」
涼は笑いながら朱里に言う。
「そんなことがかなうはずが無い。夢ばかり見ていないで現実を見ろ。」
「私は龍助と夢を描きたいの。一緒にいたいの。そのためにEspoirを集めているの。R.さん、いいえ、速水さん、どうか私の邪魔をしないで。」
真剣に訴える朱里の顔を見て、涼はその視線から目をそらす。右手をズボンのポケットに少し入れて少し考え込んでから口を開いた。
「…。南龍助は人間なんだぞ。魔族と人間とは歳の重ね方も違うのは、お前だって分かっているだろう?それなのに、人間と共に夢を描き、人間になりたいのか?」
「そうなの。あなたにとって馬鹿らしくて価値の無いことかもしれないけど、私にとってはとても大切なことなの!約束を守るためにも。」
「人間界への通行許可も滞在許可も無く、掟を破ってまでして、なしえないといけないことなのか?くだらん。まぁ、いい。俺は、しばらくお前たちを観察しているからな。任務の命令が出たら覚悟しておけよ。ちっ。南龍助とハルカリ嬢か。」
龍助と遥が朱里を探しに来た。それに気がついた涼は、その場を離れた。
「朱里~!」
「遥ちゃんと龍助くん、こっちよ。」
「麻宮さん、何処に行ったのかと思って心配したよ。」
「今、R.という魔界の使者がここに来たの。」
龍助の元に歩み寄る。遥が朱里の表情に少し緊張を感じる。
「何ですって!どこ?」
「もう帰ったわ。どうやら、今回は任務じゃなかったみたい。すぐに消えたわ。」
「でも、危険ね。早く帰らなくちゃ。あたしたちだけじゃなくて、佐伯君や裕二さんたちまで巻き込まれかねないよ。」
「そうだね。早く帰ろう。そうだ、さっき、恵ちゃんが朱里ちゃんに、って渡してくれたんだった。はい。」
そう言いながら、龍助は朱里に花の輪を頭にのせてあげた。綺麗な花々が編みこまれており、朱里をより一層可憐に飾った。
「綺麗じゃない?ねぇ、龍助。朱里によく似合ってるよ。」
「そう?ありがとう。とても綺麗な花輪だね。うれしい。後で恵ちゃんにお礼を言わなくちゃ。ね、龍助君?」
龍助は目の前の朱里にうっとりと見とれていたが、遥が、耳たぶを軽くひねって、我に返る。
「あ、そうだね。恵ちゃんに礼を言わないとね。」
「何、朱里にのぼせてるの!馬鹿じゃないの?さぁ、行くわよ。」
そう言うと、さっさと遥が戻っていった。それを朱里が追っていって、遥の背中に抱きついて歩いていった。
「さて、帰るとしますか。二人とも元気になって良かった。」
龍助は一人呟いてから、頭を上げて彼女たちの方を見たとき、一瞬目を疑った。
朱里の姿が、まるで女神のように見えたからだ。出会った時の明るいピンクの髪の朱里でも、普段の明るい茶色の髪の朱里でも、デビルモードのときの水色の髪の朱里でもなかった。はっと、気がつくと、彼女は普段の明るい茶色の髪の毛に戻っていた。
「あれ?目の錯覚かな?」
目をこする龍助。頭をかしげながら彼女たちの後を追いかけていった。
少しはなれたところから、その様子を涼も見ていた。
「なんなんだ、あのジュリア クリスティーという女は。ますます、興味がわいてきた。ディアブロ様とシーズ博士は何を隠されているのだろう…。もう少し調べてみる必要がありそうだ。あの時のオーラのようなものも、やはり南龍助のものでは無くてジュリアのものだったのか…?」
遠くで龍助たちの声がこだまする。[color]をみんなで歌いながら帰っているようだった。
「広がる世界に両手広げ 自分らしい笑顔で微笑んでみて
みんなで楽しくなれば良いね
私 OK あなた OK 輝いてる
それでOK きっとOK 輝いてる(WOW WOW)」
to be continued...
- 世界
- 属性
- 魔方陣
- 情報
- 宝具[L.D.C.]
- Espoir01
- Espoir02
- Espoir03
- Espoir04
- Espoir05
- Espoir06
イラスト:hata_hataさん
■Episode 001:
♪:[blue]
■Episode 002:
♪:[light pink -I love you.-]
■Episode 003:
♪:[nu.ku.mo.ri.]
■Episode 004:
♪:[real]
■Episode 005:
♪:[color]
■Episode 006:
♪:[my wings]
■Episode 007:
♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]
■Episode 008:
♪:[promise]
イラスト:hata_hataさん
■Episode 009:
♪:[Dancing in the night!]
■Episode 010:
♪:[月影の唄]
■Episode 011:
♪:[Burning Love]
■Episode 012:
♪:[ETERNITY]
■Episode 013:
♪:[ときめき]
■Episode 014:
♪:[flower's song]
■Episode 015:
♪:[baby baby]
■Episode 016:
♪:[your breath]
イラスト:hata_hataさん
■Episode 017:
♪:[ドキ×2]
■Episode 018:
♪:[let it go!!]
■Episode 019:
♪:[N]
■Episode 020:
♪:[tears in love]
♪:[destiny]
■Episode 021:
♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]
■Episode 022:
♪:[Happy Happy Love]
■Episode 023:
♪:[INFINITY]
■Episode 024:
♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]
■Episode 025:
♪:[pain]
イラスト:hata_hataさん
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[interrupt feat.神威がくぽ] shin
音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2018年11月21日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 10th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)
[above feat.神威がくぽ] shin
[HEAVENLY feat.神威がくぽ] shin
[initiative feat.神威がくぽ] shin
[Breaker feat.神威がくぽ] shin
[Come on! feat.神威がくぽ] shin
[departure feat.神威がくぽ] shin
[Lock on feat.神威がくぽ] shin
[monologue feat.神威がくぽ] shin
[reduction feat.神威がくぽ] shin
[voice feat.神威がくぽ] shin
音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲をiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信中!!『がくっぽいど(神威がくぽ) Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)
一色遥(普段着姿)
イラスト:hata_hataさん