Episode 022
遥と光(前編)

music:[Happy Happy Love]


前回までの『L.D.C.』

 人間界で生活をしていた南龍助は、魔界から来た少女、麻宮朱里と出会う。そして、一度は魔界に二人は引き離されたのだが、仲間と共に魔界を旅して立ち向かい彼女を取り戻し、再び人間界で夢を追いかけることになった。
 
 龍助達がクラスメートを誘って海へ遊びに言った時に、光達が軽音楽部へ遊びに行く約束をする。
 
 そして、その日が訪れたのだったが...。

 光がギターを持って、軽音楽部の部屋の前に立つ。海へ龍助を誘った時に、軽音楽部へ遊びに行く約束をしたのだった。朱里達もラクロス部が休みで先に集まっているようだ。
「光様が到着!」
 実がいち早く光に気付き、飛び出してきて部室へエスコートする。中を見渡すと、龍助や武司がシンセサイザーを準備しており、恵がアップライトピアノの前に座っていた。朱里と遥は見学のために椅子に座っている。どうやら、由依はお留守番のようだ。
 あらかじめ何曲か曲を決めて各自が練習してきたので、光もギターケースを開きギターをチューニングする。
「そろそろ、準備は良い?」
 実がドラムの椅子に座ってスティックを回しながら言うと、龍助達がうなずく。
 
 
 数曲を練習した後で、少し休憩をとることになった。恵が作ってきたクッキーをみんなで食べながら話をする。
「恵ちゃんのクッキーは外は香ばしくてサクサクで中はふんわりしていて美味しいね。ねぇ、今度、作り方を教えて。」
 朱里が言うと、恵が恥ずかしそうにしながら小さくうなずく。
「あたしも一緒に教えてもらおうかしら。それにしても恵は料理だけでなくて、ピアノまで上手とは。」
 遥が感心しながら、恵のクッキーを美味しそうに食べている光達を見る。実は首元にナプキンの代わりに花柄のお洒落なハンカチをかけて、上品に食べている姿が印象的だった。
「…遥ちゃんだって…、ラクロス…上手だよ。それに、一緒に料理の勉強して作っている時に口ずさむ歌…。上手だし…。私…好きだよ…。」
 恵が珍しく色々と話す。人見知りがちな恵も、遥にはかなり心を許しているようだった。朱里が幼い頃に遥と出会って、歌を通して少しずつ仲良くなってきたことを思い出していた。
 
「そうだよね?遥ちゃんは歌も上手なんだよ。」
 朱里の言葉に、光達が遥の方を一斉に見ると、遥が両手を振りながら慌てて話す。
「た、大したことないわよ。あたしは朱里に教えてもらっただけ。朱里の方が上手。」
 龍助が紙コップでお茶を飲みほしてから遥に尋ねる。

イラスト:hata_hataさん

「どんな曲が好きなの?そーいえば、由依ちゃんと一緒に歌った[N]とか?」
「それも好きだけど、そうね…。一時期、あんたから借りていた携帯音楽プレイヤーに入っていた曲よ。例えば…、[Happy Happy Love]とか?」
 龍助に聞かれて、うれしいのを隠しながら、すまして答える。
「お、意外に、遥も乙女なのね。クールな曲かと思いきや可愛い曲が好きなんだ。あたいとお・な・じ!」
 実が遥の側にやって来てほっぺたを人差し指でつんと軽く押すと、遥が恥ずかしさで真っ赤になってうつむく。光が笑いながら実に突っ込む。
「実と同じじゃ、一色が可愛そうだぜ。」
「どういうことよ、光様!」
 実と光の間に龍助が割って入って、なだめる。
「まぁまぁ。遥ちゃんも実君も可愛い曲が好きなんだね。あ、麻宮さんは?」
「あたしも可愛い曲好きだよ。龍助君に借りている携帯音楽プレイヤーに色々入っているから色々聞いているの。明るい元気な曲も好き。うーん、いろんな曲が好きだから、迷うけど。」
 朱里が携帯音楽プレイヤーを鞄から出して、曲を検索しながら言う。その姿を少しうらやましそうに遥が見つめていた。以前、朱里を魔界へ取り戻しに行った頃に、遥もその携帯音楽プレイヤーを朱里を取り戻すまでの期間限定という条件で龍助から借りていたことがあったからだった。
 
 
 クッキーを片手にノートパソコンをいじりながら、武司がふと話題を振る。
「ところで君達はオリジナリティーってどう思うかい?コピー曲をさっき演奏したけど。」
「難しいよね。オリジナル曲もやってみたいけど。」
 龍助が呟くと、光がギターを触りながら龍助達に言う。
「まぁ、俺はあんまり型にはまったことばかりやるのも好きじゃないけど。なんか、龍助達を見ていると型にはめすぎな気がしないでもないな。もっと自由にだな…。」
 それを聞いた実が少しむっとして光に返す。
「型にはめるのが悪い?そういったやり方でも良いじゃないの?」
「まだ僕らは音楽を始めたばかりだしね。最初は…。」
 龍助が少し気まずい雰囲気を感じながら答えると光が更に続ける。
「まぁ、オリジナル曲を演奏する場合とは違って、コピー曲だけど、俺は俺達のオリジナルな感じにした方が良いと思うぜ。」
「オリジナリティーって大切だと言うが、個性を出すとそこが駄目って言われる。OKな個性の出し方って難しいよ。そうじゃない?」
 武司がメガネに手をやりながら光に問いかけた。すると光がギターをいじっている手を止めた。
「人と同じなんて、面白くないじゃん?俺だったらもっと自分らしさを大切にしたい。」
「そんなこと言っているけど、自分らしさって?結局、誰かの真似なんじゃないの?」
 武司の言葉に光が少し言葉を濁す。
「確かに真似かもしれないけど…。数ある選択肢の中で、どれをチョイスするかということでも、ちょっとずつ自分らしさって出てくるのかもよ…。」
「それって、組み合わせとかの問題じゃない?。それが君の言う自分らしさ?オリジナリティー?」
 武司の言葉で珍しく少しイラついている光を見て、龍助がコップを置いて考え込みながら話す。
「う~…。難しいね。でも、その組み合わせの中から、何か新しいものが生まれて、それが自分らしさの核になるかもしれないよ。と、言っても、まだ良く分からないし、まだ何も自分らしさが出てないのかもしれないけど。」
 
「だったら、君は何のために音楽をやっているの?」
 武司が更に光に問いかける。
「お、俺は…、兄貴の…ギターで…。なんだって良いだろう!俺が俺らしくギターを弾きたいんだから!!」
 光が立ち上がって武司に強めの口調で言うと、武司も少し馬鹿にした様な口調になる。
「お兄さんの形見でお兄さんを思い出しているのが君らしさかい?君のオリジナリティー?過去に囚われてばかりじゃないか。」
「それは、言いすぎだよ。武司君。」
 龍助が武司に言うと、武司がむっとする。
「君達には付き合っていられないよ。」
「俺の方もお断りだ!俺は帰る!」
 光がギターケースにギターをさっとしまって、立ち去る。慌てて、遥が追いかける。朱里が遥を呼び止める。
「遥ちゃん?」
「放っておけないでしょう?そっちはそっちでちょっと頭を冷やしなさい。馬鹿ばっかりなんだから!」
 遥が振り返って、龍助達に言う。
「そうね。遥に任せるわ。お願い。」
 部長の実が、部員の自分達よりも第三者の遥の方が適任だと判断して、走っていく遥に頼む。
 
 
「僕も、帰らせてもらう。君達と音楽をする気分じゃなくなったよ。」
「ちょっと待ってよ。その言い草も、違うんじゃないの!確かに光様も問題があったけど、あんたもあれはないんじゃないの?まずはちゃんと光様に謝りなさいよ。あのお兄様の形見のギターでね、光様はあたいが辛い時に弾いて励ましてくれたこともあるの。元気もらったの。」
 さっきまでは光にプンプンしていた実が武司に迫ると、武司が履き捨てるように言った。
「ただ古傷をなめあう様に群れてるだけじゃないか!」
 武司も自分のノートパソコンを鞄にしまうと、部室を出て行く。恵が武司の孤立していく様を心配して泣き出しそうになり、朱里が心配そうに彼女を抱きしめる。
 
 武司が廊下を曲がろうとした時、龍助が部室から出て叫んだ。
「違う!確かに、人はそんなに強くない。だからこそ、みんなで支えあって、励ましあって乗り越えていこうとしているんだよ。君だって、生きていれば辛くて、寂しくてどうしようもない時があるだろう。」
 武司は足を止めて振り返らずに強い口調で応える。
「僕は、どんな時でも今まで一人で乗り越えてきた!これからも。」
 龍助はその言葉に彼の苦悩を感じた。強がっていてもその芯は人一倍とても繊細でガラスの様に今にも崩れそうに思えたのだった。
「分かったよ。もう、これ以上は言わない。だけど、覚えておいてよ。僕は…、いや、僕達はいつでも君の友達だから。いつでも、仲間だから。」
 その言葉に武司がうつむく。
「…。」
「じゃぁ、ね。また、明日。待ってるよ。」
 龍助が後方から優しく声をかけて部室に戻ろうとする。武司は左手の拳をぎゅっと握って、唇を少しかんだ。10メートルほど離れたところで、龍助の後姿に向かって武司が口を開いた。
「心配してくれてありがとう…。言い過ぎた…。」
 首だけ振り返って龍助は武司に微笑む。武司は龍助と目線が合って、一瞬視線を下に向けるが、再び戻して、龍助に言った。
「また、明日。」
 その表情は少し明るくなっていた。
 
 
 逃げるように部室を出た光を追って、遥が走っていたが校門を出た所でバランスを崩して転んでしまう。
「痛い!」
 その声を聞いて、光が足を止めてすぐに引き返してくる。
「大丈夫か?何やっているんだ。馬鹿だなぁ。」

イラスト:hata_hataさん

「佐伯君が走って行っちゃうからでしょう!馬鹿は、佐伯君の方じゃないの!」
 遥が光の胸元を両手で叩く。それを光は黙って受けながら寂しそうな表情をしたのだった。遥が光の様子に気づき手を止めると、光は少しすりむいた遥の膝小僧に自分のハンカチで手当てをしながら、反省した。
「そうだよな。俺が悪い…。部員でもないのに軽音楽部へ遊びに行かせてもらったにもかかわらず、龍助達に調子乗って偉そうな事言って。一色にまで痛い思いさせてしまって。せっかくの楽しい空気が台無しだ。すまない…。」
 光の瞳が少し潤んでいたのを見て、遥はため息をついた。
「ほんと、佐伯君らしくない。『星の塚公園』であたしに落ち着けって言ってたあの冷静な佐伯君はどこへ行ったのかしら。」
「そうだな。俺もダメな人間だ。気を付ける。」
「だったら、あたしは許してあげるわ。」
 腰に片手を当てて少しつんとして遥が言う。光が軽音楽部の部室がある方を見た。
「龍助や武司達にも明日謝るよ。」
「そうだ、この膝の傷のお詫びに、罰として何かしてもらおうかしら?」
 遥がにっこりしながら光に言う。
 
「え?あぁ、俺のできることだったら何でもするよ。」
「だったら…。あ、あのね…。この前、海へ遊びに行った時に言っていた話覚えてる?」
 少しもじもじしながら遥が言うと、光が回想しながら頭をかしげる。
「え~っと。」
「街のスポットを案内してくれるって言ったでしょう?」
 光が思い出すまで我慢できずに遥が言う。
「あぁ、言ったけど。」
「今度の休みに、一日、案内役をしてよ。それが罰ゲーム…。分かったの?ダメなの?」
 遥が少し照れながら光に強い口調で言うと、光がうれしそうににっこりする。
「OK!勿論、OKだよ。今度の休みな。詳細はメールするから。」
 しょんぼりしている光を励ますために遥が思わず光と約束してしまったのだが、遥の中で光の存在が少しずつ大きくなってきているのを感じていたのだった。龍助への片想いも消えたわけではなかったが、今は流れに任せてみようと思った。
「あ、あたしとリコの案内役として満足させてよね。」
「仰せの通りに。」
 二人はにっこり微笑んだ。
 
 
 その頃、軽音楽部の部室では朱里が恵の頭をなぜてあげながら落ち着かせていた。

イラスト:hata_hataさん

「大丈夫だよ。恵ちゃん。武司君も光君もきっと仲直りするよ。ねぇ、実君?」
 朱里の声に部室を片付けていた実が手を止めて応える。
「そうよ。それに、恵は何も悪いことしてないんだから、泣かないでよいのよ。悪いのは、場をまとめられなかった部長のあたいよ。」
「…。伊集院君は…小島君とまた音楽をしてあげて…。彼の力になってあげて…。…お願い…。」
 恵が小さな声で実にお願いする。それを聞いて促すように龍助が言う。
「大丈夫だよ。彼はきっと戻ってくるから。ねぇ、実君。松本さんは安心して。」
 実がため息をついてうなずく。
「当たり前でしょう。『歩く電脳』は、ちょっと偏屈だけど、あたい達の仲間だし。」
 それを聞いて恵の目に抑えていた涙が溢れる。
「…ありがとう…。彼もきっと寂しいんだよ…。…私も…千夏ちゃんに友達として誘ってもらうまでは一人ぼっちだったから…。分かるの…。」
「でも、今は千夏だけで無く私達も友達でしょう?さぁ、涙は拭いて。大丈夫。武司君だって、龍助君達や恵ちゃんや私が仲間だから。」
 優しく朱里がハンカチで恵の涙をそっとふき取ってあげる。
 
「それにしても、最近の光様。ちょっとおかしいわ。前は、あんなにむしゃくしゃした感じなんて見せなかったのに。そういえば、最近、テニスラケットを持っている姿を見ない気がするし。どうしちゃったのかしら。あたしの光様は…。」
 何か分からないが実が光のことを感じていたようだった。以前、キメラが迷い込んで遥をかばった時に、利き腕の右腕を負傷した。テニス部の期待の星だった光がそれまでの様にテニスの出来ない身体になってしまっていることを知っていた朱里と龍助が少し暗い表情になる。おそらく、光なりに苦悩しているのをみんなに悟られないように必死に耐えているのだが、そのストレスがこういう形で武司とぶつかってしまったのだと。光の苦悩を知っていてもただ見守るだけしか出来ない朱里と龍助はそれぞれ歯がゆい思いをしていた。
 実と龍助が片付けを終えると帰宅するために部室を出る。
「そー言えば、遥に光様を任せちゃったけど、大丈夫かしら?あの二人もなんだか最近仲が良くない?一緒にいるところを時々見る気がする。」
「遥ちゃんに任せておけば大丈夫だよ。きっと。」
 龍助が実に言うと、実が龍助の肩を両手でがっしり掴んで問いかける。
「本当に?あたいの光様を奪われたりしない?心配になってきた。」
「奪うって…。ねぇ…。」
 どう答えたらよいか分からない龍助と朱里が苦笑いをする。おそらく、裕二がいれば、上手い突込みを入れるんだろうな、と龍助は思ったが、龍助自身には思いつかなかった。
 龍助と実の様子を見ていた恵がくすっと笑う。小さな笑みだったが、その笑みはその場にいた龍助達にとって大きな笑みに感じ、モヤっとしていた気持ちの靄を晴らして暮れたのだった。
「まぁ、あたいの光様への想いは誰にも負けないから!帰るわよ。」
 実が大きな声で叫ぶと、遥と帰宅中だった光がくしゃみをしたのだった。
 
 
 学校を出た武司が地元の図書館へ来ていた。学校の図書室が閉まると、彼が勉強する時に時々地元の図書館へ足を運んでいたのだった。彼の家は比較的裕福で学校の近くの高級な高層マンションだったが、両親が共働きで一人でいることが多く、一人でに図書館へ足を運んでしまうことがあった。無意識の内に、寂しさを紛らわしたかったが人との干渉もあまり受けたくないということだったのかもしれない。
 ため息をついて、武司が図書館の机のあるスペースの椅子に座る。
 すると、隣の机に裕二が座っていたのだった。
「なんや、奇遇やな。ため息なんてついて、どうした?」
「ゆ、裕二先輩。」
 見られたくない姿を見つかってしまい少々戸惑ったが、武司はメガネを拭いて平静を取り戻す。
「なんかあったんか?」
「なんでもないです。それよりも先輩こそこんな所で何をしているんですか?」
 裕二の質問に武司が質問で返すと、裕二は開いていた分厚い本を何冊か閉じる。どうやら法律関係の本が数札あるようだ。それとは別に考古学の古い本が一冊あった。
「ん?ちょっと調べ物や。わいやって、たまには勉強するで。でも、枕代わりにちょうど良い厚さの本やから、つい居眠りしてしまうわ。」
「そ、そうですか。風邪を引かないように、寝るんだったら家に帰った方が良いですよ。」
 武司がクールに言うと、裕二は、にんまりした。
「おおきに。で、何があったんや?」
 裕二に聞かれて、武司はなぜか普段、龍助たちのバンドで思っていたことを話し始めた。いつもは、あまり自分の考えを話さない武司だったが、裕二には自然と心を少し許してしまう。何か、裕二は不思議な存在だった。
 
「みんなでいても独りでいるような孤立感を感じていました。そもそも、人それぞれ、物事に対する温度差があってもしょうがないんですけど。」
「立場によってや、育った環境によって考え方も違うからな。その時、楽しければ良いというわいみたいな奴もいれば、お前みたいな馬鹿みたいに超真面目な奴もいる。」
 少しおどけてみせる裕二に武司が言う。
「裕二さんは、龍助達の仲間の中で一番真面目じゃないですか?普段から、わざとふざけて装っているけど、一番全体を見て動いているのはあなたですよ。」
「そんな、褒めても何も出んぞ。」
 裕二がいつも通りに返すと、武司は気にせずに淡々と話し続ける。
「まぁ、良いです。大切なのは、温度差が違う人たちで、どう物事をやり遂げるか、です。この場合バンドです。各自が練習参加したくなるようなモチベーションを上げつつ、でも一時的なお祭りなノリだけで終わらせないこと。株でも何でもそうですが、急に上がったものは必ず落ちます。一時的なノリで盛り上がってもすぐに飽きてめんどくさくなったり、興味が他に移ったらそこで下落や停滞してしまいます。」
「まぁ、人間やからな。」
 鉛筆をクルクルっと回しながら裕二がうなずく。
 
「問題なのは、自分一人でやっている分には、気分が向いた事をやっていれば良いのですが、バンドの様にみんなで協力してやっていくものは、一人のメンバーが辞めてしまうと、他のメンバーのモチベーション低下にも影響し、穴埋めが出来ない場合はバンド自身が解散になってしまうことがあるということです。」
 そう言いながら、武司がまたため息をつく。
「そうやな。せっかく時間をかけて練習をしてきても、ドラムが辞めたり歌がいないとかなると、わいもやる気無くなりそうや。まぁ、わいはバンドに参加している訳や無いけど。応援している立場でも同じ感じするわな。なんや、打ち込みいうやつでカバーできるいうても、やっぱなんだか寂しい気もするな。ほんま難しいなぁ。」
 裕二は武司の話をゆっくりと聞いてあげていた。
「本当にそうですね。龍助達が何処まで本気なのか…。」
 武司がそう言うと、裕二が鉛筆を回すのを止めてから言う。
「あいつは、本気やと思うけどなぁ。ちょっととろいところもあるけど。まぁ、朱里ちゃんもいればあいつ的にモチベーションも充分な気もするし。」
 冗談交じりだったが、武司や龍助達にとって幼い頃から面倒見の良い少し頼りない兄貴分の裕二の言葉を聞いて、本当は分かっていたことかもしれないと、なぜか安心したのだった。
「ははは。ふー、そうですね。裕二さんの言う通りです。もう少し待ってみます。気を使ってくださってありがとうございました。」
「なんも気を使ってないぞ。仲間やろ?わい達は。」
 裕二が笑いながら、大きなあくびをした。
「わい、そろそろ帰るわ。そうや、帰りに飯を食って帰ろうかと思うけど、お前もどうや?ご両親は共働きだったろう?」
 厚い本を重ねて持って、近くの本棚に返しながら武司を誘う。
「そうですね。たまにはご一緒しましょう。」
「お、そうか。そやったら、近くに安くて美味いいた飯屋があるから、そこへ行こうや。サバの味噌煮定食がお奨めやで。」
 裕二に背中を押されながら武司が図書館を出て行く。武司の頭の中で裕二が読んでいたと思われる考古学の一冊を何故読んでいたかが気になったが、尋ねなかった。
 
 

イラスト:hata_hataさん

 その空の下で、黒い子猫の様な姿をしたデニーが街を歩く。
「まぁ、可愛い子猫。どこの子かしら?」
 街でショッピング中だった女性が、デニーの頭をなぜると、尻尾を立ててなつっこく身体を摺り寄せる。
「失礼。そいつは、俺のパートナーだ。デニー行くぞ。」
 涼が言って、デニーが涼の後ろへ走っていく。そして、バイクに涼が飛び乗るとバイクの鞄にデニーは飛び込んだ。女性が涼にうっとりしながら見送る。
「可愛い子猫ちゃんのご主人は、かっこよい男性だったのね。」
 

イラスト:hata_hataさん

 バイクに乗りながら海岸線を進みながら、雨上がりの空を見上げる。彼の薄れてしまった記憶のどこかに眠る不思議な感覚がする。
「どうしました?涼様。」
「いや、何も無い。お前は、虹が好きか?いや、何もない。忘れてくれ。それよりも、どうやら、新たな勢力がこの街に訪れているようだ。この『L.D.C.』を狙っているのか?それとも、朱里の『L.D.C.』か?それとも…別の目的か?」
 涼はバイクを停めると目の前の男を睨む。その男は、朱里達が海で出会ったクラシスという女性に付き添っていた執事の様なミストスだった。
「お前、人間界の者ではないな。」
「あなた様こそ。私達を放っておいてくださいませんか?」

イラスト:hata_hataさん

 そう言うと、ミストスが手を前に向けて涼へ氷属性の攻撃魔法を唱える。同時に、涼の前へデニーが飛び出す。そして一瞬にして黒い子供の豹の姿から成獣の姿へフォームチェンジして、前足で氷の矢を叩き落した。
「大丈夫ですか?涼様?」
「あぁ。」
 涼とデニーの前にはもうミストスはいなかった。
「申し訳ありません。逃げ足が速く、取り逃がしてしまいました。」
 デニーが再び小さな黒豹の子供の様な姿にフォームチェンジすると、涼がしゃがんで頭をなぜてやりながら呟いたのだった。
「あちらも、無駄な戦いはしたくないのだろう…。いったい何者なんだ?」
 
 
to be continued...

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■Episode 001:

♪:[blue]

■Episode 002:

♪:[light pink -I love you.-]

■Episode 003:

♪:[nu.ku.mo.ri.]

■Episode 004:

♪:[real]

■Episode 005:

♪:[color]

■Episode 006:

♪:[my wings]

■Episode 007:

♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]

■Episode 008:

♪:[promise]

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■Episode 017:

♪:[ドキ×2]

■Episode 018:

♪:[let it go!!]

■Episode 019:

♪:[N]

■Episode 020:

♪:[tears in love]
♪:[destiny]

■Episode 021:

♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]

■Episode 022:

♪:[Happy Happy Love]

■Episode 023:

♪:[INFINITY]

■Episode 024:

♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]

■Episode 025:

♪:[pain]

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[interrupt feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2018年11月21日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 10th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

 

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音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲をiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信中!!『がくっぽいど(神威がくぽ) Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

CIRCLE[shin entertainment]

南龍助(普段着姿)

イラスト:hata_hataさん