Episode 019
揺れる想い(前編)

music:[N]


前回までの『L.D.C.』

 人間界で生活をしていた南龍助は、魔界から来た少女、麻宮朱里と出会う。そして、一度は魔界に二人は引き離されたのだが、仲間と共に魔界を旅して立ち向かい彼女を取り戻し、再び人間界で夢を追いかけることになった。
 
 ある日、人間界に何か異変が起きて、龍助達の通う学園へキメラが迷い込んだのだが、遥をかばって光が右腕を負傷したものの、後から駆けつけた龍助や涼によってキメラを魔界へ帰すことができた。
 
 人間界に潜伏する魔界の精鋭『レジェンド』の涼は、何か目的を持って動いているようだが、朱里達には詳細を告げずに立ち去ったのだった...。

 龍助の町にある楽器屋で、クールなギターの音が鳴り響く。
「あの兄ちゃん、時々来ては試奏していくんだけど。音もかっこよいけど見た目もいいからなぁ。最近、女性のお客が増えているんだ。出来れば、家の店で働いてくれると売上が倍増かも。」
 さりげなくギター売り場を覗いている女性客を見ながら、楽器屋の店員がレジカウンターで呟く。すると、店の入り口から実が入ってくる。
「お、実君か。ドラムの練習はかどってるかな…。」
 時々、実も放課後に楽器屋へ来てはドラムを叩いていた。イケメンの店員にドラムを無料でレクチャーしてもらえるので、気分良く店へ足を運ぶ回数も自然に多くなり、上達も早かった。
「こんにちは、マスター。」
「やぁ、実君。あのね。レジカウンターには立っているけど喫茶店じゃないから、マスターはないだろう…。それに、俺は雇われの身で店長でもないしなぁ。」
 笑いながら、実に言う。
「なんだか、最近、女性客が多いじゃないの?まぁ、熱血ドラマーのあたいには関係ないけど。昨日、進入部員が増えていよいよバンドかユニットを組めそうな予感よ。」
 実がいつもの様にドラムコーナーへ足を運んで、ドラムセットを一つ選んで座る。
「そりゃぁ、良かったね。練習した甲斐があったんだ。是非とも、先日の練習台の購入に続いて、ドラムセットも購入をご検討くださいませ。」
「まぁ、ちゃっかりしてる。まだまだ先ね。練習台とスティックとCD購入なんかで今は節約中なの。」
 愛用のスティックを取り出した。購入してまだそんなに経ってはいないのだが、練習によってかなり使い込まれたスティックの様相になっていた。店内放送のBGMに合わせてドラムを軽快に叩き始めた。
「お、また上手くなったんじゃないか。」
「そう?店員さんのレクチャーが上手だからよ。」
 
 しばらく、実がドラムを叩いていたが、それに合わせるように、奥のギターコーナーからギタープレーが聞こえる。初めは気にしていなかったのだが、段々と実もその演奏に惹惹き込まれるようにしてセッションを楽しんだ。
 3曲ほど演奏した時、ちょうど切りよく楽曲が終わったのでドラムの手を止めると、ギターコーナーには女性陣の拍手が包む。
「なんなのよ。あたいのドラムには誰も拍手は無し?まぁ、ギターの演奏は上手かったけど、誰よ。」
 立ち上がって、ちょっぴり不機嫌気味にギターコーナーへ向かった。
「あんた…。」

イラスト:hata_hataさん

 女性客を掻き分けてギター演奏の主の前に立った実が固まった。そこには、憧れの涼がギターを片付けていたからだ。
「なんだ?またお前か?確か…、実とかいったか。」
「はい!!!光栄です。御一緒にセッションさせていただいた上に、名前を覚えていただけているとは。」
「お前が名刺を押し付けたからだろう。そうか、お前、名刺を貰った時にドラムを始めたと言っていたな。さっきのドラムがお前のプレイか?」
「はい…。」
「初心者にしたら、まぁまぁだ。荒削りだが、ポイントポイントのリズムの頭をちゃんと合わせられているから。もう少し、他のパートの演奏を聞ける様になって、一体感を感じられるようになると良いな。じゃぁな。」
 そう言うと、実の肩をぽんと叩いて涼が店から出て行く。そして外に停めているバイクに乗って走り出した。
「涼様に褒められたわ。すごいじゃない、あたい!!!」
 一人盛り上がっているハイションな実を店内にいた女性客と店員が呆然と見ていたのだった。
 涼はバイクで風を切って走りながら呟く。
「やはり、もう一つの『L.D.C.』はこの町に眠っている…。」
 
 

イラスト:hata_hataさん

「えっ、えっとね…。」
 たどたどしい感じで、朱里の部屋で白鳥由依が子供用の赤くキュートなオモチャのピアノを弾いていた。朱里のクラスメートの松本恵から貸してもらったものだ。恵は朱里のクラスメートで彼らが通う学園の理事の親戚でもある。
「龍助が音楽始めたから由依ちゃんまでピアノを弾きたいっていう気持ちは分からないでもないけど、まだ早すぎる気がするぞぉ…。」
 なかなか上手く弾けない由依を見かねて、パタパタと小さい翼で飛びながらリラが呟く。
「そんなことない!ゆいもひけるもん。ひきたいもん。むぅ…。」
 由依がリラの言葉を耳にしてぷいっとふくれっ面になってから、またオモチャのピアノに指を伸ばす。
「そうですわ、由依ちゃんも弾けるようになりますとも。ゆっくりと楽しみながら練習すると、きっとピアノが上手になりますわよ。まずは、黒い鍵盤が二つと三つに分かれているので、その二つの方の左側にある白い鍵盤を押さえてみてくださいませ。」
 リコが由依のオモチャのピアノに前足を可愛くちょんと載せて、少し乗り出すようにして優しくレクチャーする。
 遥が遊びに来ていて、龍助の部屋に朱里と遥と龍助で、昨日、キメラが人間界へ迷い込んだ件について話をしていた。リコも遥に付いてきていたのだった。
 
「これ?」
 由依が鍵盤を押すと可愛いピアノの音が鳴った。
「お上手ですわ。これが『ド』の音ですわ。横に白い鍵盤を押すと『ド』『レ』『ミ』『ファ』『ソ』『ラ』『シ』『ド』って感じですの。」
 リコの言うように由依が鍵盤を人差し指で順番に弾くと、『ド』『レ』『ミ』『ファ』『ソ』『ラ』『シ』『ド』と音が鳴った。
「ドレミだ。ドレミ。」
 ピアノの白鍵盤を弾きながら由依が喜んだ。
「そのまんまだな。オイラでも出来るぜ、それくらい。でも、何処が『ド』の音かは初めて知ったぞ。さすがリコ…。ちゃんと由依ちゃんも手なずけているし。」
 リラがちょっぴりリコにいいところを見せようとちょっぴり見栄を張るが、リコの由依にピアノを教えてあげている優しい笑顔を見ると、ちょっぴり赤くなった。
 
 由依がリコの言うとおりに鍵盤を押すと、優しいメロディーが奏でられた。由依も朱里が歌っていたので知っている[N]という曲だった。歌のはじめの一節だけゆっくり弾けると、後は「ららら」で口ずさむ。リコも一緒に「ららら」で歌う。リラもオモチャのピアノの側に降りてきて尻尾を振って聴いていた。
「あら?なんだか楽しそうだね。」
 隣の部屋にいた朱里達が歌を聞きつけて、覗きにきた。
「じゅり、うたって。ねぇ、うたって。」
「じゃぁ、一緒に由依ちゃんもみんなで歌おうよ。」
「あたしは聞いてるわ。」
 遥が遠慮すると、朱里が遥の腕に自分の腕を絡ませて由依の側に座らせる。
「そんなこと言わないで、遥ちゃんだって歌、好きでしょう?昔、よく一緒に歌ったじゃないの。」
「へぇ~、僕も遥ちゃんの歌も聞いてみたいなぁ。」
 龍助の言葉を聞いて、ちょっぴり照れくさそうにしながらリコを膝に乗せて言う。
「そ、そんなたいしたもんじゃないんだから…。まぁ、由依ちゃんのために歌ってあげても良くてよ。」
「はるかおねえちゃん、ありがとう。ゆいもいっしょにうたう。」
 由依が遥に抱きついて、にこにこしながら朱里も横に座るようにスカートを引っ張る。朱里が座って、リラを膝に乗せると、龍助がオモチャのピアノで簡単な伴奏をする。
 窓からは、そよ風が吹き込み彼らを優しく包み込んでいた。
 
「風が髪をなびかせてる いつもの帰り道
心がトキメイてる Just in my love
大好きだよ Just to your heart」
 朱里と遥が歌詞を口ずさみながら、らららで歌う由依に笑顔で応える。
 

イラスト:hata_hataさん

「あなたの前なら素直な私でいられるの
あなただけ見ているよ Just in my love
世界で一番だから...」
 オモチャのピアノを弾いている龍助を、さりげなく装って魔界を彼と旅した頃を思い出して、ちょっと照れながら、遥も歌う。
 
「私だけに見せて欲しい
その笑顔 その瞳 いつまでも
抑えきれないこの気持ち
あなたにも届けたい 優しさとぬくもり」
 
 歌い終わると、みんなでなんだかとても温かい気持ちになっていたのだった。うれしさで由依が遥と朱里の手を両手で握ってゆすりながらご機嫌な様子である。すると、朱里の胸元にある宝具『L'aile du coeur(心の翼)』に、ivoryのクリスタルが輝いた。
 
「ゆいちゃん良かったね。麻宮さんも歌が上手だけど、遥ちゃんも上手でびっくりした。」
 龍助が遥の歌にも感心した。
「当たり前でしょう。あたしは何だって出来るの!朱里を取り戻す時に魔界を一緒に旅して感じなかった?このセンスの高さを。」
「そうですわ。魔界でも指折りの大貴族ディオール家のご令嬢の遥様ですから。」
 リコが遥と一緒にちょっと胸を張って、つんとしてみせる。みんなが笑う。
「楽しかったよ。久々に遥ちゃんと一緒に歌えて、なんだか幼い頃を思い出しちゃったわ。」
 幼い頃、病気がちだった遥の家に、朱里が度々遊びに行っては歌を良く歌っていたのだった。口数が少なく心を閉ざしていた遥に、朱里は歌を口ずさんで歌を通して接して彼女の閉ざされていた心の扉をそっと開けてあげたのだった。今では、ツンデレな感じの遥だが、朱里のお陰でもある。よって、クラスメートの恵を見ていると、昔の自分を見ている様で学校では自然に引っ込み思案な恵に気をかけていたのだった。
 
 
 龍助達はしばらく楽しい時間を過ごして、遥とリコは夕食前に帰っていったのだった。
「どうしたの?麻宮さん?」
 夕食時に少しボーっとしている朱里へ龍助が声をかける。
「ううん、何でもないよ。何でも…。」
 少し上の空な朱里の横でリラと由依が小さなスプーンとフォークを持ってうれしそうに黙々と食べている。
「おいしいなぁ。今日は餃子だ。おいら餃子も大好き。」
「ゆいもだいすき。」
「おお、そうだろうそうだろう。さすが由依ちゃんだ。分かってる~。そうだ、おいら、カレーも大好きだから、カレー餃子ってどうかなぁ、って思うんだけど。スープカレーに餃子を入れてみるとか。スープカレー餃子。龍助の好物のハンバーグも入れてみるとか?」
 カレー好きのリラのメニューの提案に龍助が答える。
「…。まぁ、いろんな食べ方があってよいんじゃないかな。僕は、ラーメンに餃子っていうオーソドックスな感じが好きだけど。」
「ラーメンも美味しいな。あれ?おいらのチャーシュー入ってない。何処にもない。おいらの食い物の恨みは恐ろしいぞ!」
「僕のを上げるよ。」
 自分のチャーシューを龍助がリラの小さな御碗に入れてあげると、リラがペロッとすぐに食べてしまう。
「サンキューな。さすが龍助。」
 

イラスト:hata_hataさん

 朱里が夕食後に風呂場で湯船に浸かって一人でいた。由依とリラは一緒に入ったのだが、好きなテレビ番組を見るためにすぐに上がったのだった。
「最近、龍助君…。麻宮さん、って呼ぶの…。遥ちゃんには遥『ちゃん』なのに…。」
 由依がおいていった湯船に浮かぶオモチャのヒヨコを眺めながら呟いた。
「遥ちゃんは龍助君と私を助けに魔界を旅してくれた…。私の知らない龍助君のことを知っているの…。」
 靄のかかった天井を見ながら朱里が瞳を閉じた。
「なんだか、やきもちかしら…。私…。」
 
 その頃、龍助もシンセサイザーのマニュアルを読みながら考え事をしていた。
「麻宮さんの幼い頃か…。きっと可愛かったんだろうなぁ。遥ちゃんとはその頃からの親友かぁ…。僕も二人の小さな頃を見てみたかったかも。魔界の魔族と僕ら人間とは歳の重ね方が違うから、彼女達が小さい頃といったら、僕はまだ生まれてもないんだっけ。」
 マニュアルを閉じてシンセサイザーに向かって、演奏の練習をする。

イラスト:hata_hataさん

「今日、麻宮さん、夕食の時、なんだか元気なかったなぁ。もっと彼女の気持ちを分かってあげれると良いんだけど…。人間の僕は、魔族の様に心の声や魔力の様なのを感じたり出来ないから…。涼さんだったら、きっと察してあげて彼女を守ってあげられるんだろうな…。」
 ふと、無意識に涼の名前が出てきて、龍助が、はっとする。
「そういえば、昨日のキメラの騒動の件でも、彼女は涼さんを大切にしていたんだ。彼もあの時、学園に来ていて、僕を誘導してくれたおかげで助かったけど、なんであそこにいたんだろう…?ひょっとして、涼さんも麻宮さんのことを…?魔界でも彼女に親切にしてくれたようだし。僕の知らない麻宮さんを涼さんは知っているのかな…。」
 キーボードを弾く手を止めて、立ち上がって窓を開ける。夜空には星がいくつか光っていたが、少しところどころに薄雲で靄がかかったような感じだった。
 
 
 龍助が再びキーボードの練習を始めた時、夜空に一筋の流れ星が流れる。龍助の家の北東に位置する『星の塚公園(ほしのつかこうえん)』内にある隕石落下跡に暗闇から人影が現れた。
 この公園には大昔に隕石が落下したという言い伝えがあり、その遺跡の名を『星の塚』といつしか呼ばれるようになったのだった。今では、公園が整備され、住民の憩いの地となっていた。μと記された不思議な卵を朱里と龍助が拾ったのもこの公園である。後に魔界でその卵が孵化し、由依が生まれたのであった。
 
「この公園の遺跡に何か秘密がある様な気がするが…。」
 隕石が落下したといわれている隕石落下の跡らしい場所を調べるが、何も見つからない。
「ここではないのか?まぁ、この公園のどこかに眠っていたとしてもそう簡単に分かる様なものでもないだろうがな。」
 ペンライトを鞄から取り出し、独り言を言いながら調査をしていたのは、魔界のトレジャー・ハンターのアル・レインだった。彼は、龍助達が魔界へ朱里奪還のために旅立った時に偶然出会い、仲間として一緒に魔界を旅をした。彼は今は退役しているものの、元『レジェンド』のA.でもあった。魔界のディアブロ王の特命で、魔獣やキメラ達が人間界へ迷い込む現象が多々起きていることの原因を調査していたのだった。
「今日のところは帰ろうよ、アル?」
 アルに同行している男が声をかけるが、調査に没頭していて気付かない様だった。
「遺跡の研究となると、しょうがないんだから…。ミーは疲れたから先に帰るわよ。」
「あ、分かったから、待てよ。残念だが、明日、出直すか。」
 アルが調査を止めて慌てて追いかけていき、二人の姿は暗闇に消えた。
 
 
 翌朝、龍助と朱里が登校するために家を出ると、いつもの様に遥とリコが待っている。
「おはよう、遥ちゃん、リコ!」
 龍助がにっこりしてリコの頭をなぜてあげる。
「おはようございますですの。龍助様。ぽっ。」
 リコがお気に入りの龍助になぜられてうっとりしている。
「おぃ、おいらもいるぞ。リコ…。おはよう…。」
 ちょっぴり照れくさそうに、リラがリコにアピールすると、リコが挨拶代わりににこっとして頭を下げる。リラは、うれしそうに朱里の肩から飛び降りて朱里の鞄に滑り込む様にして入り、リコも遥の鞄にもぐりこんだ。
 龍助と遥が並んで歩く後ろを少し見つめながら朱里が歩き出した。別に喧嘩をした訳ではないのだが、なんとなく龍助と朱里はいつもの様に接することが出来ないでいたのだった。
 校門をくぐると、朱里がちょっとにっこりして龍助達に言う。
「遥ちゃん達は、先に教室へ行っていて。私、教官室へ用事があるから?」
「だったら、あたしも付いていってあげるわよ。」
 遥が言うと、朱里が横に首を振った。
「良いよ。ありがとう、遥ちゃん。でも、一人で行けるから大丈夫。」
 そう言って、足早に教官室の方に向かって行ったのだった。
 
「なんか、今日の朱里、変じゃなかった?」
 朱里の後姿を見送りながら遥が足を止めて、龍助に小さな声で訪ねる。
「そ、そうかな…。」
 なんとなく朱里とのぎこちなさを感じてはいたものの、その状況を信じたくなくて龍助が曖昧な返事をする。
「あんた、一緒に住んでいて分かんないわけ?あんたにとって朱里は大切な人なんでしょう?あ、ひょっとして喧嘩した?あたしの親友の朱里を泣かしたら、龍助だって許さないわよ!」
「喧嘩なんてしてないよ。」
 慌てて龍助が否定する。
「だったら、何よ…。そういえば、昨日も今日も佐伯君は始業時間ぎりぎりに来ていたわね。」
「うん。いつもだったら、途中で合流して学校へ来るんだけど。昨日、尋ねてみたら部活の朝の練習が忙しいって言っていたよ。」
「そう…。だったら、良いの。」
 遥は朱里の様子もなんだか気になったが、光が二日続いて龍助達と一緒に投降しなかったことにも気になっていたのだった。
 龍助達の学園へ魔界からキメラが迷い込んだ時に、遥を守るために光がかばって右腕を負傷した。後で、朱里が水属性の癒し系魔法で彼の傷への応急処置をしたものの、「俺はもう平気だ。一色の足の傷も治してやってくれ。」と遥が負傷していた足の傷を治す様に指示したのだった。龍助からテニス部で朝の練習していると聞いて、遥は少しほっとしたのだった。
 
 
 教室へ入ると、片隅の窓際にある席で武司がノートパソコンを開いて、なにやら勉強をしていた。遥が自分の席へ向かい、龍助は武司の席の前へ言って声をかける。
「おはよう、武司君。あのね、今日の放課後、ちょっと時間があるかな?」
 武司がパソコンを触っている手を止めて、メガネを拭きながら龍助に答える。
「おはよう。今日は予備校の日なんだけど。まぁ、予習はもう終わっているから、30分ぐらいは時間がないわけでもないけど。君が僕に何の用事?」
 少し距離を置くような感じで冷たく武司が訪ねた。龍助が手をもじもじしながら話し出した。
「あ、あのね。実君が部長をしている軽音楽部に僕も入ったんだ。昨日、入部届けも出したんだ。」
「それで?まさか、君の入部を祝ってくれって、ことじゃないだろう?時間がないから、さっさと本題を言ってくれたまえ。」
 メガネを拭き終わって、またパソコンのキーボードを叩きながら龍助に言う。
 
「そ、そうだね。ごめん。武司君も…君も軽音楽部へ入らないか?」
 
 突然の龍助の言葉に、武司が眉間にしわを寄せながら話す。
「突然、何の話しかと思ったら、『軽音楽部へ入らないか?』だって?馬鹿にしているのか?僕は君達と違って予備校で忙しいんだ。前にも言ったけど音楽は一人で好きな時に出来るから満足しているんだ。それに、仮に入部したとしても、君は何をさせたいんだ、僕に?」
「あのね。実君が武司君のアドバイスでドラムを始めたんだ。すごく練習しているんだよ。僕も、シンセを勉強中なんだ。まだメンバーも二人だけだし演奏技術も未熟なんだけど、バンドかユニットをしようと二人で練習を始めたんだ。」
 少し呆れ気味の武司だったが、次の言葉で再び手を止めた。
「レベルが違うとは思うけど、武司君がメンバーに入ってくれるとうれしいなぁ、って。一緒に音楽を楽しめるときっと素敵だろうなぁ、って思ったんだ。あ、でも、忙しかったら、アドバイスもらえるだけでもうれしい。たまに顔を出してもらえるだけでも。」
 武司は龍助の真剣な表情と「一緒に音楽を楽しめるときっと素敵だろうなぁ、って思ったんだ」という言葉にすぐに断ろうと思った気持ちを止めたのだった。少し困った顔をしながらも、龍助の目を見て武司が話す。
「君も分からない奴だな。僕は、君達のバンドには興味はないんだ。でも、頭ごなしに君達との音楽を楽しむことを否定するのも、ナンセンスだ。時間がないんだけど、今日の放課後に20分だけ付き合う。それで、君達と音楽をしたいかどうかを判断すれば君は満足か?」
「ありがとう。武司君!」
 うれしそうに龍助が武司の手を取って大きな声で喜ぶ。
「僕は何も入部するとも、君らと一緒に音楽をするとも言ってないんだぞ。」
「うん、分かっているよ。でも、軽音楽部の部室へ来てくれるだけでもうれしいんだ。」
 龍助の様子に武司が照れくさそうに慌てて念を入れるが、龍助はニコニコしていた。教科書を机に出しながら遥が龍助の様子を遠くから見て、自分のことの様に少しうれしそうにしたのだった。
 
 
 その頃、朱里が教官室へ向かう途中で、鞄の中のリラに気が付かれない様に心の中で小さく呟いた。
「教官室には何も用がないのに嘘までついて私は何をしているのかしら…。龍助君となんだかぎこちなくなってしまって…。それに大好きな遥ちゃんにまでやきもちやいて…。はぁ~。なんだかこんな気持ちになるんて、自分が嫌だよ…。」
 彼女はうつむいて小さくため息を付いた後で、教室へ向かおうと思った。その時、廊下の向こう側に学生服姿の光を見つけた。彼は朱里にも気付かずに暗い表情で屋上へ続く階段を昇っていった。朱里が時計を見て呟く。
「あら、光君じゃないの?試合前でテニス部の朝の練習をしているんじゃ…。どうしたのかしら…。」
 その日、光は龍助達の教室へは来なかった。
 
 
to be continued...

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■Episode 001:

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■Episode 002:

♪:[light pink -I love you.-]

■Episode 003:

♪:[nu.ku.mo.ri.]

■Episode 004:

♪:[real]

■Episode 005:

♪:[color]

■Episode 006:

♪:[my wings]

■Episode 007:

♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]

■Episode 008:

♪:[promise]

イラスト:hata_hataさん

■Episode 017:

♪:[ドキ×2]

■Episode 018:

♪:[let it go!!]

■Episode 019:

♪:[N]

■Episode 020:

♪:[tears in love]
♪:[destiny]

■Episode 021:

♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]

■Episode 022:

♪:[Happy Happy Love]

■Episode 023:

♪:[INFINITY]

■Episode 024:

♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]

■Episode 025:

♪:[pain]

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VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2016年11月02日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 8th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

 

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VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2015年09月09日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 7th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

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2月18日(水)よりドワンゴジェイピーにて特設ペー ジを設けていただき先行配信、2月25日(水)よりiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 6th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

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