Episode 021
海へ出かけよう!(前編)

music:[Touch to your heart!]


前回までの『L.D.C.』

 人間界で生活をしていた南龍助は、魔界から来た少女、麻宮朱里と出会い、朱里の『L.D.C.』に"Espoir"のクリスタルを集めながら人間界で学園生活を送っていた。
 
 『星の塚公園』へ特務で人間界へ来たアルとM.と共に龍助達は隠された遺跡のダンジョンを進み、人間界に封印されていた第二の『L.D.C.』を涼に託したのだった。
 
 涼の手に入れた『L.D.C.』は"Espoir"のクリスタルに宿る召喚獣を召喚する能力を持つ。そして、彼は[destiny]のクリスタルに宿るデニーに戦いで力を示し、召喚の契約を結んだ。涼にも共に戦うパートナーが出来たのだった。
 
 ある日、光がある計画を話すために、インドカレーのランチバイキングへ龍助達を誘うことになる...。

イラスト:hata_hataさん

「ランチバイキング?」
 下校中の龍助が、光の方を振り返る。龍助,朱里,遥,光が一緒に歩いていた。
「あぁ。そこの店で明日の祭日にカレーを食べようぜ。」
「カ、カレー!!!おいらカレー好きだぞ。」
 大好物のカレーと聞いて、思わず朱里の鞄からリラが飛び出す。
「お、リラもカレー好きか?」
「おう!!」
 リラが元気に応える。カレー好きの光とリラはすっかり意気投合していた。その様子を見ながら龍助が話し出した。
「そう言えば、朱里とリラが空から落ちてきて初めて出会った日に、リラは光のカレーパン食べちゃったんだよね。」
「そうね。」
 朱里がうなずきながら微笑む。
「お、それじゃぁ、リラ。その店でナンを食べてみると良いよ。」
 光の言葉にリラが目を更に輝かせながら小さな前足でホッペを抑えるような仕草をしながら尋ねる。
「ナン?なんなんだそれ?美味いのか?あ、ナンを3つ掛けた駄洒落じゃないぞ。」
「ははは、まぁ、食べてみると良いよ。ランチバイキングだからナンもカレーもお替りし放題だしな。」
「うおおおお、そうなのか。ナンがなんなんだか、なんだか分からないけど、なんとも楽しみだ。」
 
 ナンという言葉を連発して、まるでお替りし放題のランチバイキング状態のリラを、遥がクールに澄まして見ている。リコが遥の鞄から出てきて遥の肩に停まった。
「もうリラはナンで一杯ですわ。ご主人様。」

イラスト:hata_hataさん

「本当に馬鹿ね。」
 遥の言葉に、リラが遥の前に小さな翼をパタパタさせて飛んでくる。
「何だと、だったら、遥は知っているのか?」
「え、えぇ知っているわよ…。ナンってあれでしょう…。」
 魔界から来た遥もナンを食べたことが無く知らなかったのがバレバレな様子で少しひるんだのを見て、遥とリラの間に割って入って、光がなだめる。
「まぁまぁ、リラも一色も楽しみにしておけよ。あそこの店のナンは美味しいから保障する。勿論カレーも。」
「まぁ、佐伯君が言うんだったら、あたしもあんた達に付いていってあげるわ。ありがたいと思いなさい。ねぇ、リコも楽しみね。」
「ハイですの。」
 リコも遥と光に可愛くお辞儀をする。リラが龍助の肩に停まると、リラをなぜながら龍助が言う。
「じゃぁ、明日、光のお勧めのお店に行こうか。あ、リラとリコは見つかっちゃうとマズイね。どうしよう。」
「それも大丈夫!俺に任せておけ。お店の奥の方の席は、死角になっているから、店員から最初に料理の皿が運ばれて来るまでリラとリコはいつもの様に縫いぐるみの振りをしておいて、その後は自由にバイキングだから店員も来ないと思う。一応、端っこで大人しく食べろよ。お替りは俺が持ってきてやるから。」
 うれしそうに尻尾を振っているリラとリコを見て、朱里がリラとリコに言う。
「良かったね。リラもリコも。光君に感謝しないと。」
「よし、そうと決まったら行くぞ!あ、それから、その時に、ある計画の提案があるんだ。」
「何?」
 龍助が光に尋ねるが、彼は代わりにウィンクして言う。
「今は秘密だ。明日、話すから。まぁ、楽しみにしておけよ。じゃぁな。」
 テニスが出来なくなっている光の腕の症状のことを知っている朱里は、いつも以上に元気に光が振舞っているのを少し心配していたのだった。
 
 
 翌日、昼に駅前で龍助,朱里,遥,由依,光が待ち合わせた。リラは朱里のポシェットの中に入って、リコは人に見られて大丈夫なようにぬいぐるみのふりをして由依が抱いていた。光の誘導で龍助達は駅前の通りから少し入ったところの店に入った。
「へぇ、こんな所にカレー屋さんがあるなんて、僕、知らなかったよ。」
「そうだろう。俺も先週、偶然、通りかかったら新しい店が出来ていたんだ。張り紙を見たらランチバイキングはお替りし放題で俺達のお小遣いでも食べれる様な値段だったから、思わず入っちまった。味も美味しいし、リハビリの帰りにラッキーだったぜ。おっと。まぁ、リラも腹いっぱい食えよな。」
「リハビリ?佐伯君、何のリハビリなの?」
 光がうっかり口を滑らせてしまい、遥が尋ねるが彼は話をそらそうとする。
「そ、そんなこと俺、言ったっけ?一色の気のせいだ。」
 その道の方面には病院があったことに朱里が気が付き、遥に心配をかけないために腕の症状を伏せている光の気持ちを察して遥に声をかける。
「遥ちゃん、リコとリラは店の奥の死角のスペースに座らないといけないから、先に入ろう。由依ちゃんも一緒にね。」
「あ、う、うん。」
 
 朱里に押されるようにして遥が店に入っていく。それを見て、光がほっとため息をつく。その姿を龍助が見ていて、ゆっくりと話す。

イラスト:hata_hataさん

「腕、そんなに悪いの?」
「何、言ってるんだ?大したこと無い。」
 光が腕を振り回しながら、龍助の言葉に平静を保とうとする。
「言いたくなければ、良いんだ。だけど、僕の親友の光が辛い思いで一人で抱えているんだったら、僕も何か力になりたいんだ。」
「龍助…、お前…。気が付いていたのか…?」
「うん。最近、少し元気が無いなぁ、って感じてたんだ。昔から、光は優しくて僕の支えになってくれるのに、自分は一人で何でも抱え込む癖があるだろう?」
 少し寂しそうな表情で龍助が話すと、観念したように光が龍助に訳を話す。
「さすが幼馴染だ。テニス部の朝の練習に出ているっていうのもウソだ。悪気があったわけじゃないんだ。だけど、一色には言うなよ。あいつは少し強気で振舞っているけど、結構、繊細な奴だから、キメラからあいつを庇った時にテニスが出来なくなってしまったなんて言うと、すごく悩むだろう。リハビリして治せば良いだけのことだ。お前達の様な特殊な力を持ってはないけど、こんな逆境程度に俺は負けないぜ。」
 うなずきながら龍助が光の腕を見つめる。
「そうだね。光はいつも優しくて頼もしいよ。そうだ、光も音楽しない?テニスに復帰するまでだけでも。実君と僕と一緒に。ギターがリハビリになるかもしれないし。指の動きや音楽療法的な意味でも。たまに武君も遊びに来るんだよ。ドラムとキーボード二人なんで、ギターがいると良いねぇ、って実君とよく話していたんだ。」
「分かった。考えておく。一色には内緒な。男の約束。って言っても、朱里には問い詰められて前に話しちゃったんだけど。」
「麻宮さんも知っているの?彼女は僕には何も言ってくれなかったなぁ…。」
 少し朱里との距離を感じていた龍助が寂しそうにすると、光がデコピンをして元気付ける。
「なんだ、朱里も時々元気ない感じがするけど、お前もか。俺の腕どころの話じゃなさそうだな。昨日、言っていた俺が考えてきた計画があるんだけど、ちょうど良いかもな。さぁ、入るぞ。まずは腹ごしらえして元気出そうぜ。カレーとナンが俺達を待っているから。」
 龍助を励ますように光が龍助の肩を押しながら店に入っていく。
 
 
 奥のテーブルへ龍助達が座り、ランチバイキングを5つ頼むと、カレーを入れる小さな皿が1セット3つずつ運ばれてきた。その後、ナンが5枚運ばれてくると光が店員に声をかける。
「あ、俺、すっごくお腹空いているから、ナンのお代わり作っておいてください。…えっと、龍助も腹ペコだよな?みんなもここのナンは美味しいから是非堪能してもらいたいから、あと、5枚お願いします。」
「分かりました。ナン5つ作っておくわね。」
「あ、後で、俺が取りに行きますんで、呼んでください!その分、美味しいのヨロシクです!」
 にっこりしながら、インド人の店員がテーブルを離れていく。光が縫いぐるみの振りをして由依の膝の上に座らせて抱っこされているリラと遥の膝の上で可愛くしているリコに、ウィンクする。光がリラとリコのためにナンを多めに頼んでくれたことを察して、リコが光にポッとなる。リラは初めて見る、白いパンの様なナンという食べ物を目の前にして、よだれが垂れそうなのを我慢していた。
「なんだか、あたし達7人分払っても良かったのよ。こそこそしなくても。なんたって、あたしは魔界でも大貴族のディオール家の一人娘なんだから。お金なら気にしなくても良くてよ。なんだったら、この店を借り切っても良いのに。」
「でも、遥ちゃん。せっかく人間界の人達の様にみんなで楽しくご飯食べに来たんだから、光君のお勧めな食べ方で楽しもうよ?」
 朱里が遥に言うと、光が壁のチラシを指差しながらにっこりする。
「この店はお子様は大人一人まで無料だから。朱里に由依ちゃん,龍助にリラ,一色にリコって感じでOKじゃないか?ちょっと拡大解釈だけど。」
「まぁ、そうね。せっかく佐伯君が気を利かせてくれたんだし。また来てお店の売上に貢献すれば良いわね。」
 遥が渋々納得する。
「それよりも、おいら、もう我慢できないぞ。」
 リラが小さな手を合わせて、食事前の「頂きます」のポーズをとってせかす。
「りらはくいしんぼうさんね。でも、ゆいもおなかすいた。」
「じゃぁ、食べようか?ねぇ、光。」
 龍助もお手拭で手を拭きながら光の方を見る。それに応えて光が言う。
「それでは!良く味わって食べるように。リラはちゃんと噛めよ。ランチバイキングだから慌てないでも大丈夫だからな。」
「うおおおお、すごいぞランチバイキング!頂きます!」
 リラに続いて、みんなもにっこりしながら手を合わす。
「頂きます!!!」
 
 リラは龍助の膝の上に移って、ナンを分けてもらう。
「焼き立てだから、火傷しないように気をつけようね。」
「あちっ。でも、ふんわりだ。バターか何かの香ばしくて甘い香りもするぞ。」
 ふわっと柔らかいナンをリラが小さな両手でちょっと緊張しながら持って、口に入れてみる。みんなが、リラに注目する。一口かじった後で、ブルブルっと震えて、目がきらめいた。
「こ、これは。なんと!ナンはなんとも言えない食感!なんとなく、ほわーってなりそう。」
「リラのセリフは『なん』という言葉のランチバイキングみたいだね。」
 龍助がにっこりしながら、自分もちぎって口に入れる。
「僕も初めてだったから、どんな味がするのかと思ったけど、ほんとに美味しいね。」
 龍助やリラの表情を見た朱里がナンに手を伸ばして、由依にも食べやすい大きさにちぎって渡すと二人も食べた。

イラスト:hata_hataさん

「おいしいね、じゅり。しゃろんちゃんもよんであげればよかった。」
「本当ね。魔界の魔王のシャロンちゃんにも食べさせてあげたいわね。由依ちゃんは本当に優しい子だわね。」
 龍助達の様子を見ながら光が満足そうに、ナンの入った皿を隣に座っている遥にも渡す。そして、カレーに目をやりながら言う。
 
「そうだろう、そうだろう!そのまま食べても香ばしくて美味しいけど、こうやってちぎって、カレーに浸けて食べるとまた美味しいぞ。ここのカレーは3種類あるんだ。ちょっとずつ入っているけど、お替り自由だから、それぞれのカレーに浸けて食べてみるといいぞ!お、なんだ、一色!」
「な、なによ?」
 遥がナンやカレーに手をつけずにサラダを食べているのに光が気が付いた。
「お前、何遠慮してるんだ?食べ放題なんだぞ?」
「あ、あたしは、別にお腹が空いているわけじゃないから、そこの食いしん坊なチビドラゴンと一緒にしないでよ。」
 遥がツンと澄まして言うと、それを聞いたリラが口にナンを頬張りながら怒る。
「な、なんだと!チビ言うな!おいら、ナンとカレーをたくさん食べて偉大なドラゴンになってやる!龍助、カレーの入れ物を取ってくれ。」
 リラがカレーの小さな入れ物を龍助から受け取って、飲んだ。しかし、いつも食べている甘口のカレーとは違い、本格的なインドカレーでした。
「か、辛いかも。でも、病み付きになりそう。なんだかナンとカレーのおかげで、炎が吹けそうな気分だ!!」
 苦笑いをしながら龍助がコップを持ってリラに水を飲ませてやる。水を飲ん出から、ドラゴンがフーと炎を吐く様な振りをリラがするが、勿論、炎等は出ない。
「えっと、まぁ、リラはナンとカレーをたくさん食べて、気分だけにして、せいぜい炎で回りに迷惑をかけない程度に大きくなってくれ。で、話がそれたが、一色、お前はなんで食べないんだ?お腹空いてないって、ウソだろう?」
 光が言ったのと同時に、遥のお腹がギューっとなる。
「…。」
「ほら見ろ。嫌いなものでもあるのか?」
 遥が両手の人差し指をつんつん合わせながら、光と龍助とカレーを順番に見て、一言小さい声で呟く。
「あたしは、カレーを食べたことがないの…。だから、ちょっと、躊躇していただけ…。」
 カレーを浸したナンにかぶりつきながら遥を横目に、リラがちょっぴりつんとした感じで遥に言う。
「なんだ、初めてか。遥もまだまだお子ちゃまだな。ディオール家のお嬢様もまぁこんなもんだ。」
「リラ!ダメでしょう。」
 朱里がリラを叱ると、由依も真似をする。
「はるかおねえちゃんにごめんなさいでしょう。」
「ごめん…。遥。言い過ぎた。おいらも人間界で龍助とであった時に始めてカレーパン食ったんだ。」
 渋々、リラが遥に謝ると、遥もリラに頭を下げる。
「あ、あたしの方こそ悪かったわ…。」
 
 由依がカレーで口の周りを少し汚していたので、拭いてやりながら朱里が優しく遥に声をかける。
「遥ちゃん、美味しいよ。このカレーはちょっぴり辛いけど、こっちのオレンジよりの色のはピーナッツバターなのか甘い感じだよ。もう一つはほうれん草で緑色なんだね。野菜好きな遥ちゃんにぴったりだよ。」
 由依が心配そうに遥の顔を見つめている。リコが気付いて、カレーのついた由依の手を優しくなめてあげた。
 
「あー、もうめんどくさい。」
 
 光が一口サイズにナンをちぎってカレーに漬けて、遥の口に押し込む。

イラスト:hata_hataさん

「な、何をするの…。…お、美味しい…。」
 遥も龍助達も光の行動に驚いたが、少し緊張気味だった遥の表情が和らいだのを見て、ほっとした。
「当たり前だ!俺がお前に食べさせてやりたいと思ったから誘ったんだ。いや、お前達をだ。ほら、ちゃんとリコにもあげないとかわいそうだろう。リコはいつもお前を気遣っているんだから。」
 珍しく光が少し強い口調で口を滑らしてしまって、少し照れくさそうにしながらリコにもナンをちぎって手渡す。朱里と由依が遥を見て、にこっとする。遥が「俺がお前に食べさせてやりたいと思ったから誘った」という光の言葉を思い出して、自分への好意を感じて、はっとして、真っ赤になる。その膝元で大人しく光からちぎってもらったナンをうれしそうに食べているリコも光にぽっとなっていて、にっこりする。
 お替りのナンが出来たという店員の声がして照れくさそうに光が取りに席を立つ。その背中を見送りながら、遥が礼を言う。
「あ、ありがとう。」
 振り返らず、光は左手を軽く上げて応えた。
 
「リコもごめんね。もう大丈夫。なかなかカレーとナンって美味しいわね。今度、恵と一緒に料理の勉強をして覚えるわ。」
「遥ちゃんは、恵ちゃんとよく一緒にいるけど、料理の勉強をしているんだ。良いお嫁さんになりそうだね。」
 龍助がそう言うと、自分の事を聞いてくれたことがうれしくて、少しデレっとなりそうなのを隠しながら、クールを装いつつ遥が応える。
「まぁね。魔界でも指折りのディオール家の一人娘としては何でもできるのよ。恵も人間界のお嬢様だから、お嬢様同士、異世界の友好ね。」
「さすが、遥お嬢様ですわ。お父上もお喜びですわ。」
 リコも誇らしげに遥を称えた。ナンのお替りを数枚持ってきた光が席に戻る。
「お、なんだ、恵の話?それじゃ、あいつも誘うか?今度の休みにみんなで海に行こうと思って、その計画を相談するために、今日、誘ったんだ。」
「光の言っていた計画って、海だったんだね!」
 龍助がカレーにナンを浸けながら言う。
「そうなんだ。この街の東の駅を越えたところに海岸があって、昔は龍助とよく遊びに行ったんだけど、由依ちゃんや一色や朱里やリコの女性陣もお誘いして私目がエスコートしようかと考えました。レディーの皆様、如何でしょうか?」
「うみ?うみ、うみ、うみ。」
 由依が海を知らないので朱里の服を引っ張って尋ねる。
「水溜りの大きいのだ。おいら知ってるぞ。しょっぱいんだ。泳げないおいらはちょっぴり気が進まないなぁ。」
「なんだ、リラは泳げないのか?」
「おいら水竜じゃないからな。泳げなくて良いもん。人間の光と違って空飛べるし。」
 それを聞いた光が食いしん坊なリラに提案をする。
「泳ぎを覚えれば楽しいぞ。それに、夏の海には、海の家が出て美味しいものが沢山売ってる。かき氷や、おでんなんか美味しいぞ。そうだ、最近、おしゃれなお店も増えたから、アイスなんかもあるかも。二段、三段と積んでカラフルで冷たくて美味しいぞ~。」
「かき氷におでんに、アイス~!おいら、海へ行く!絶対行く!賛成!」
 あっさり光の誘導に引っかかって、リラは乗り気になった。うれしそうに尻尾を振っている。
「さんせい!ゆいもうみいく!みんなでいく!じゅりもはるかおねえちゃんもりこもいこう!ゆい、たのしいのすき!」
「まぁ、しょうがないわね。由依ちゃんがそう言うなら。あたしも付いていってあげてもよくてよ。」
 遥も賛成した。それを聞いて、朱里が遥に言う。

イラスト:hata_hataさん

「だったら、今日の帰りにでも、駅前で水着を買いに行こうよ。お店のショーウィンドウでも綺麗やおしゃれな水着が沢山飾ってあったし。以前、龍助君と行ったおしゃれなお店とか、遥ちゃんも行って帽子を見たデパートとか。」
 
「み、水着。」
 龍助が少しむせる。
「お、朱里や一色はどんな水着を買うのかな?セクシー系?可愛い系?パレオとかもおしゃれで良いよな。なぁ、気になるな、龍助も?」
 光が龍助に振ると、龍助が真っ赤になりながら、照れくさそうに応える。
「あ、う、うん。ちょっとね。」
「あんた達もアルとおんなじね。もう…。」
 呆れた感じで遥がカレーをスプーンですくって食べる。
「由依ちゃんも一緒に女の子だけで行くから、どんな水着かは当日のお・た・の・し・み。」
 
「恵も海へ呼ぶんだったら、どうせなら千夏も呼びましょう。」
 遥がラクロス部の千夏も誘おうと提案すると、光が鶏肉に赤いスパイスで味付けして焼いたタンドリーリキンを食べながら言う。
「実の奴は多分、勝手に嗅ぎ付けて来そうだな。あいつはなぜか勘が鋭いから。」
 龍助もサラダの皿を手にとって提案する。
「だったら、武司君も呼んで良いかな?」
「『歩く電脳』?昔はあいつも一緒に海へ行ったりしていたけど、予備校とかで忙しいんじゃないのか?まぁ、駄目もとで誘ってみろ。あと…、誰か忘れている様な?まぁ、いいや、とりあえず、今度の休みは海へ行くこと決定!じゃぁ、水で夏の海に乾杯。」
「乾杯!!」
 みんなが乾杯している時、図書館で一人、勉強中の裕二がくしゃみをする。
「なんか、俺を噂しているのか?どこの女の子や?お、少しあいつが動くのか?まずいなぁ。時の流れにしばらく任せるしかないんやけど…。」
 何かを感じた裕二が小さく呟いて窓の外を見る。外は入道雲が広がっていた。
 
 
 その日の夜、帰宅した後で、恵に海へみんなで遊びに行く計画を電話して、誘った後で、遥がため息をつく。
「どうか致しましたか?遥様?」
「ううん。恵は初め迷っていたけど、小島君が来るから来なさい、って誘ったら、小さな声で行くって。あの子は引っ込み思案な性格だから、小島君が気になっているのに、もじもじしていて想いも伝えられないのよ。」
 そう言った後で、自分も恵と同じ様に想いを伝えられないままなので、また遥はため息をついた。光の言葉が、なぜか最近、気になる自分を遥は感じていた。しかし、遥が魅かれている龍助のことを考えると、彼には朱里を想っていることも知っているし、朱里も彼のことを想っていることも分かっている。龍助への想いは、自分の心の中にとどめて、大切な友人である二人を応援するべきだと思う自分もいた。だから、光やアルのことがなんとなく気になるのか、これは恋なのか、ただの勘違いなのか、自分自身も分からなかった。今日も、遥への好意ともとれるような光の言葉で、少しドキッとした自分がいた。躊躇していた遥にナンをちぎって口に入れてくれた時に、光の指が少し唇に触れたのを思い出しながら、自分の小指でそっと唇に触れた場所に触れる。

イラスト:hata_hataさん

「遥様。元気出してくださいませ。リコはいつも遥様の味方ですよ。」
 リコが遥の肩に小さい翼でふわっと停まり、彼女の頬に自分の頬を優しく寄せた。リコの柔らかく白い毛に触れると、とても遥の気持ちも癒された。
「いつも、ありがとう。」
 
「今日のナンもカレーも美味しかったですね。最後に出てきた冷たいラッシーというヨーグルト風味のインドの飲み物も美味しかったですわ。遥様は、ホットのチャイでしたね。」
「そう。チャイ。ミルクで紅茶を煮出した感じの飲み物で、口の中がカレーで少し辛い感じになっているのを和らげてくれて、美味しかったわ。」
 食後のドリンクだけはお替りできず、ラッシー,コーヒー(アイスorホット),チャイ(アイスorホット)の1つ選べるので、光が自分の分をラッシーを選び、ストローを二つ指し、リラとリコにプレゼントしたのだった。リラは照れながらも、リコと一緒にラッシーを味わったのだった。
「ラッシーも美味しそうだったわね。今度、また私たちだけでも行きましょう。カフェとしても利用できるみたいだし。」
「楽しみですわ。海へ皆様で遊びに行く計画も。遥様や朱里様の水着姿を龍助様や光様はきっとびっくりされますわ。とても綺麗でしたから。」
 買ってきた水着などが入った紙袋の方を見て、遥が少し照れる。
「ちょっぴり恥ずかしいけど。気に入ってもらえると良いなぁ。水着も朱里達と今日、買ったし、後は当日、晴れると良いわね。」
 誰とは言わなかったが、龍助に気に入ってもらえると良いなぁ、と遥が思っていることをリコは感じていた。
 部屋のCDプレイヤーのスピーカーから夏の眩しい日差しと青い海を感じさせる[Touch to your heart!]という明るい楽曲が流れている。遥が口ずさむ。
 
「Touch to your heart!
青い海へ みんなで飛び込もうよ
Touch to your heart!
伝えたいあなたへの想い 届け!」
 
 少し遥の表情が明るくなったのを確認して、リコの額に飾られたクリスタルが少し輝き、うれしそうに尻尾を振ったのだった。
 
 
to be continued...

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■Episode 001:

♪:[blue]

■Episode 002:

♪:[light pink -I love you.-]

■Episode 003:

♪:[nu.ku.mo.ri.]

■Episode 004:

♪:[real]

■Episode 005:

♪:[color]

■Episode 006:

♪:[my wings]

■Episode 007:

♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]

■Episode 008:

♪:[promise]

イラスト:hata_hataさん

■Episode 017:

♪:[ドキ×2]

■Episode 018:

♪:[let it go!!]

■Episode 019:

♪:[N]

■Episode 020:

♪:[tears in love]
♪:[destiny]

■Episode 021:

♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]

■Episode 022:

♪:[Happy Happy Love]

■Episode 023:

♪:[INFINITY]

■Episode 024:

♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]

■Episode 025:

♪:[pain]

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[interrupt feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2018年11月21日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 10th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

 

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音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲をiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信中!!『がくっぽいど(神威がくぽ) Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

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一色遥(普段着姿)

イラスト:hata_hataさん