Episode 019
揺れる想い(後編)

music:[N]


前回までの『L.D.C.』

 人間界で生活をしていた南龍助は、魔界から来た少女、麻宮朱里と出会い、朱里の『L.D.C.』に"Espoir"のクリスタルを集めながら人間界で学園生活を送っていた。
 
 ある日、彼らが通う学園に魔界からのキメラが迷い込んだが、遥をかばって光が負傷するものの涼の手助けもあってなんとか追い返すことが出来たのだった。
 
 朱里は遥に対して、龍助は涼に対して、互いにジェラシーの様な気持ちを感じ、お互いを想いつつも少しぎこちなくなってしまっていた。
 
 そんな中、龍助はバンドメンバーに『歩く電脳』と呼ばれている武司を誘うが、彼は頭ごなしに断るのではなく龍助達の練習を見てから断るつもりで軽音楽部へ放課後の20分だけ見学へ行くことを了承したのだった...。

 龍助が軽音楽部の部室で、シンセサイザーや機材のセッティングをした。実もドラムセットの前に座って調整をする。彼らの準備姿を、部室の端においてあった椅子に座って武司が見ている。
「準備できたよ。」
「あたいも。なんだか緊張するわ。」
「さっさと始めてください。もうモタモタしているから10分も経ってしまいましたよ。約束は残り10分だけですよ。」
 武司の言葉に対して、実が小さな声でぼそぼそっと呟く。
「なんでそんな言い方しか出来ないのかしら…。龍助君は本気で『歩く電脳』をメンバーに入れたいと言うけど、これじゃぁ、楽しい音楽をやる雰囲気じゃないんじゃないの?」
「まぁまぁ…。」
 龍助が冷や汗をかきながら実に言う。
「武司君、待たせてしまってごめんね。僕達、まだ準備にも時間がかかっちゃって。今から、一生懸命演奏するから聞いてね。」
 
 龍助がそう言うと、実に合図を送り、実はドラムを叩き始める。それに合わせて、エレクトリックピアノの音色で龍助がバッキングをする。
 武司は足でリズムを取りながら彼らのセッションを聞いていたが、3分ほどすると立ち上がって手を叩いて演奏を止めた。
「ドラムをクリックに合わせて叩けるのは良いのかもしれないけど、少しリズムが前のめりに走り気味。それに対して、キーボードは演奏が追いつかないでもたっているじゃないか。それじゃぁ、バンドなんていつになっても出来ないんじゃない?」
 実がムカッとして文句を言おうとした瞬間、先に龍助が立ち上がって言う。

イラスト:hata_hataさん

「ありがとう。そうかぁ。実君が気持ちリズムが前のめりで、僕がもたっているから、なんかしっくり来ないんだね。さすが、武司君だ。ねぇ、実君、アドバイス貰ったポイントに気をつけてながらもう一回やってみようよ。」
 
 前向きな龍助の言動に武司は驚いて帰ろうと思っていたが、再び椅子に座ってしまった。実も一度は武司の指摘に腹が立ったものの、冷静に考えると事実だったので、渋々龍助の提案に従って、ドラムを叩き始めた。
 すぐに上達する訳ではないのだが、武司のアドバイスに注意しながら演奏をすると、気持ちよいフィーリングでドラムを演奏でき、次第に実は笑顔になっていく。前のめりなリズムからジャストに近いゆったりとしたリズムになったことで、龍助の演奏も少しリズムに馴染んできたのだった。武司も、自分がアドバイスしたことで彼らが上達していくことに何か心の中に沸きあがる衝動を感じて思わず口元が一瞬緩んだ。
「すごいよ。さすが、武司君のアドバイスは。なんだか、さっきよりはしっくりきた。演奏していてさっきよりも楽しかった。」
「まぁ、あたいもそうね。武司君の指摘は当たっているわ。」
 武司がそれを聞いてから、立ち上がって鞄を持つ。
「まだまだだね。そんなレベルじゃ。君はバンドをやりたいって言っていたよね?」
 武司が龍助に言う。
「う、うん。」
「伊集院君のドラムは練習すれば何とかなるかもしれないけど、君の演奏だけじゃバンドには程遠いよ。D.T.M.を取り入れて同期演奏で、他のパートでカバーするのが良いだろうね。見ている感じだと両手で弾くのは大変だろうから、まずは右手のパートだけでも演奏できるように。ベースパートを打ち込みか、ベースを弾くベーシストがいれば、低域の演奏をしなくても形になりやすい。まぁ、本当はバンドだから生演奏だけで演奏するのもグルーヴ感があってかっこよいんだけど、下手な君が弾くよりもマシだろう。」
「D.T.M.を取り入れたいね、って、実君とも先日話していたところなんだ。ねぇ?」
「まぁね。光様も忙しそうだし、まずは、今の現状で出来ることでレベルを上げないと。」
 実も龍助にうなずく。
「おっと、悪いが、僕は予備校へ行くよ。じゃあね。」
 そう言うと足早に武司が出て行った。
「あ、『歩く電脳』が帰っちゃった。せっかちね。結局、駄目出しだけで、ゲットできなかったじゃないの。それにしても、まるで機械のハートの様だわ。」
「いや、そうじゃないよ。わざわざ、初心者の僕達の演奏を見に来てくれて、ちゃんとアドバイスまでくれたよ。それに。」
 龍助は部室の壁にかかっている時計を指差した。その時計が指し示している時間は、武司が20分だけという時間を20分以上も過ぎていたのだった。
「予備校の時間があるから、30分しかない、と言っていたのに、40分以上の間、僕達に時間をくれたんだよ。感謝しなくっちゃ。武司君が予備校に間に合うと良いんだけど。それに、メンバーに入らないと彼がまだ断ったわけでもないんだ。練習がんばらなくちゃ。」
 
 校舎を足早に出た武司は一言呟いた。
「まったく、話にならないなぁ。」
 武司が足を止めて軽音楽部の部室のある方向を振り返る。
「でも、誰もが初めは初心者なんだ。この僕だってそうだったんだから…。それにしても、音楽の楽しみに気を取られて予備校に遅れそうになるとは、僕としたことが気が弛んでいるな。予備校へ急がないと…。」
 校門を出て駅前に向かって走り出す。朱里奪還の際に魔界へ旅立つ龍助達時の様子を見てしまったことによる警戒心が武司の中であったのだが、龍助の優しいキャラに音楽を通して接したことにより、少し薄らいでいた。自然に武司から鼻歌がこぼれていたのだった。
 
 
 翌日の昼休み。校舎の屋上で龍助達が昼食をとっていると、そこに武司が現れた。彼は黒いソフトケースに入ったキーボードらしきものを背負っていた。
 裕二がいち早く武司を見つけて手を振る。
「おぉ、なんや武司。来たんやったら、突っ立てないでこっち来いや!」
 龍助達も武司を見て微笑む。武司は少し落ち着かない様子で、メガネに手をやりながらゆっくり歩いてきた。龍助が声をかける。
「昨日は部室へ来てくれてアドバイスまでありがとう。僕がモタモタしていたから40分近くも時間取っちゃって予備校間に合った?」
「あ、あぁ。少し走らなければならなかったけど、ぎりぎり間に合ったよ。」
「良かったぁ。実君と心配していたんだ。」
「まぁね。」
 実がサンドイッチを食べながら答える。龍助が、武司の持っている楽器が気になって尋ねる。
「ねぇ、それは武司君の楽器?」
「あぁ。」
「見せてもらっても良いかな?」
 

イラスト:hata_hataさん

 目をキラキラさせている龍助に武司が肩にかけていた楽器のケースを置き、ジッパーを開ける。中には、赤いショルダーキーボードが入っていたのだった。
「かっこよいね!これって、ショルダーキーボードなんだよね。良いなぁ。」
 龍助が覗き込みながら赤いボディーを触ってみる。その様子を見ながら武司が話し出す。
「君はバンドかユニットをしたいと言っていただろう?」
「うん。」
「これは、君に貸してあげるよ。僕はまだ色々と機材を持っているから。」
「え、いいよ。せっかくの機材を貸してもらうなんて、悪いし。」
 武司の言葉に龍助が慌てて言うが、武司はショルダーキーボードを取り出して龍助の目の前に持って少し照れくさそうに言う。
「ううん。これは君が弾くと良い気がするんだ。キーボードはどうしても動き辛いけど、これがあるとギターリストみたいに動けるようになる。ライブなんかで、きっと効果的なアプローチも出来るから。」
「借りとけよ。せっかくお前のために持ってきてくれたんだから。その代わり、大切に使って、武司の期待に応えて楽しく音楽が出来るように頑張れよ。」
 横から見ていた光が龍助にアドバイスする。
「ありがとう。貸してもらうよ。」
 
 手渡すと武司は立ち去ろうとする。
「ちょっと待って、武司君。」
 龍助が引き止めると、武司が足を止めて振り返る。
「ねぇ、お昼まだでしょう?一緒にご飯食べようよ。ここは風も心地よくて気分が良いよ。」
「みんなで楽しく食べると消化も良いぞ。」
 裕二が龍助のお弁当のおかずをつまみ食いしながら、武司にウィンクする。
「そうですね。たまにはこういった場所で昼食を食べてみるのも。」
 その言葉を聞いて、みんながにっこりする。武司は裕二と恵の間に座って、パンを鞄から取り出す。恵が黙ったままちょっぴりうつむき加減にお弁当を食べている。その頬はちょっぴり赤くなっていた。その様子を見て遥が微笑む。
 武司はその日を境に軽音楽部へ、時々訪れるようになった。そして、時々昼食時に屋上へ顔を出すようにもなったのだった。相変わらず、片手にはノートパソコンと参考書を持ってすましていたが、その口元には彼らの話を聞きながら不器用ながら少し笑みがこぼれるようになっていったのだった。
 
 

イラスト:hata_hataさん

 それから数日が経ち、龍助が休日の軽音楽部の練習を終えて、昼過ぎに実と校門で待っていた。ラクロス部の練習を終えた朱里と遥が訪れる。朱里の横には由依が手を繋いでもらって歩いてくる。由依が朱里達の学校へ遊びに行きたいとねだるので、休日の部活の練習であれば顧問の先生に許可を得て見学に来ても良いのではないかと龍助が朱里にアドバイスしたのだった。
 すると、由依が空いている方の手で龍助の手を持ってぶら下がる。
「ねぇ、ぶら~ん、ぶら~んして。」
 最近、なんとなく少しすれ違い気味になっていた朱里と龍助を案じて由依が気を利かせていたのだった。朱里と龍助が由依のあどけない様子を見て、優しく微笑む。
 
「なんだか、いい雰囲気ね。まるで可愛いお子様のパパとママみたい。」
 突然、校門の後ろ側の影から声がした。朱里と龍助が少し照れくさそうにする。
「だれ?」
 由依がその方向へ向かって言うと、男が出てきた。
「ミーよ。忘れちゃったかしら?」
「ミディーさん!」
 龍助が言うと、M.は龍助に抱きついてハグをした。
「龍助君に何をするの?あんた誰よ!!」
 その様子を見るなり、実が飛び出してきて引き剥がした。
「何?このオカマちゃんは?ミーにたてつくなんて、身の程しらずね。いくら龍助僕ちゃんのお友達だといえども、キャラも被りそうでなんだか超嫌な感じ。」
「何でよ!こっちの方がスーパー嫌な感じよ!!」
 どうやら、M.と実は何か同じものを感じるようで少し相性がよくないらしい、と、龍助,朱里,遥は思ったのだった。
 

イラスト:hata_hataさん

「それぐらいにしておけよ。M.。」
 呆れながら、ゆっくり後ろから出てきたのはアルだった。
 実が目を星にして言う。
「いい男、発見!!」
「え?」
 アルが振り返ると道の向こう側にハンサムな男性が向こうへ歩いていたのだった。
「俺じゃないのかよ。なぁ、…って。M.お前もか。」
「いい男ね。うっとりするわ。この街にも良い男が沢山いそう。」
 どうやら、M.も実も男性の好みは同じらしい、と、肩を組んでキャピキャピしているM.と実や、がっかりしているアルを見ながら龍助と朱里は思った。すっかり実とM.は意気投合している。そしてなぜか敗北感を感じているアルが立ち尽くしていた。
 学校のベルが鳴る。
「あら、もうこんな時間。あたい、せっかく素敵なお姉さまにお会いできたのに、用事が。またお会いしましょうね。それでは、皆様。」
 小さく何度も手を振りながら、あっという間に実は帰って行ったのだった。
 

イラスト:hata_hataさん

「アル…。」
 思わぬ人物の登場で遥が小さく呟く。アルとは、魔界へ朱里奪還の際に出会い、魔界を共に冒険をしたのだったが、朱里を奪還して以来、少し気になってはいたものの会うことがなかったのだった。
「じゃぁ、俺も再会を記して、M.の真似をして、我が愛しのじゃじゃ馬のお嬢様にハグを…。」
 そう言って、アルが遥にハグをする。一瞬、頭の中が真っ白になっていた遥が、はっと我を取り戻す。
「誰が、じゃじゃ馬よ!!!それにお尻を触らないでよ、エッチ~!!!」
 遥の拳がアルのみぞおちにクリティカルヒットして、一発K.O.でアルがずるっと倒れこむ。あっけにとられている朱里と龍助をよそ目にクールにM.が評価する。
「相変わらず、ナイスパンチね。」
 M.と遥がハイタッチする。
「ミディーさんほどじゃないわ。あたしも油断するとはまだまだね。あっ。」
 次の瞬間、冷や汗をかいている龍助を見て、慌てて遥がもじもじして小さくなる。
 
 
 実が帰って、近くに遥達以外がいないことを確認して、リラとリコも鞄から出てくる。
「アル…。なんとも…成長してないなぁ…。」

イラスト:hata_hataさん

「アル様はもう少し慎まれた方が宜しいですわ。人間界でもセクハラで訴えられますわよ。」
 うずくまっているアルが口を開く。
「いいんじゃないの?減るものでもないし。大体、遥はまだ子供なんだし。なぁ、リラ?」
「ア、アル…。」
「?」
 少し怯えながらリラが指を差す方向をアルが見ると、そこには遥がいる。
「…。」
 無言の遥の周りに氷属性の青い火花がチリチリと走る。
「い、言い過ぎた。あ、謝る。は、遥…さ…ん…?」
 遥が迫ってアルが後ずさりしながら校門の影で見えなくなった。
「…アールー!!!」
「ぎゃぁー!!」
 アルの叫びがこだます。リラがブルブルと震えている。
「ご主人様…。」
「リコは良い子だから遥の真似しちゃ駄目よ。」
 M.がリコを撫ぜてやりながら、苦笑いをする。
 何事も無かったように遥が出てきてリコを肩に乗せ、そのまま歩いてゆく。続いてアルがボロボロになってたんこぶを撫ぜながら出てくる。
「おじちゃん、ばか。」
「おじちゃんって…。きつい…な…ぁ…。」
 由依が龍助と朱里の手を持ちながら言い、がっくりしているアルを見ながら朱里と龍助は苦笑いをする。
「じゃぁ、ミー達も行きましょう。後で龍助君達に話があるの。」
 M.がアルの肩を抱いて支えながら歩いていく。龍助達も後に続く。
「お、恐ろしい…。遥はリコとの日頃からの修行の成果でパワーアップしている…。しばらく遥の機嫌が治るまでおいらは大人しくしておこう…。」
 恐る恐る、後からリラが付いていく。
 
 
「なぁ、話ってなんだ?突然、アルとM.が現れるなんて。それも、適応魔法を掛けて人間界に適応してまで。」
 リラがM.の周りを小さな翼で飛びながら尋ねる。すると、M.が人差し指を数回振って言った。
「M.は魔界でのレジェンドを名乗る時の名前でしょう?人間界ではモンデカルロ・正宗(まさむね)よ。ヨロシクネ。」

イラスト:hata_hataさん

「何で、お前、そんなセンスの無い名前なんだ!大体、ミディーって魔界名の一部も入ってないじゃないか。」
 ネーミングのセンスをリラが馬鹿にすると、M.は少しむっとして話す。
「あら、失礼しちゃうわね。モンデカルロってなんかおしゃれな響きじゃない?スペルではMがつくし。正宗もなんだか和風でできる戦士という感じじゃない?エキゾチックジャパンな感じ?日本では、武士っていうんだったかしら。こっちもMがつくじゃない。ミディー・ミディーもモンデカルロ・正宗もM.M.だから。マジでミリョクテキ。」
「…。マジでミリョクテキもM.M.とかけたのか…。」
 リラがひいていいると、M.がまた思いついたようで立ち止まって少し考えをまとめてから提案してみる。
 
「だったら、真咲 美出依(まさき みでい)とか。どうかしら?」
「もう何でも良くなってきた。それで良いよ。それにしよう。」
 M.の話についていけなくなってきて投げやりにリラが応える。
「なんだか、投げやりな感じね。まぁ、良いわ。真咲美出依よ。ヨロシクネ。あら、ミーの可愛いトカゲもどきちゃんは何処へ行ったのかしら。あ、置いていかないでよ。ミーは人間界でよく迷子になるんだから、ちゃんとエスコートしてよ。ここに来た理由もまだ話してないじゃない。」
「トカゲもどきでもないし、「ミーの可愛い」って、お前と主従関係の契約をしたわけでもないぞ!おいらは偉大なドラゴンだ。まったく変な奴に好かれてしまったぜ…。おいら、どうしよう…。朱里…。」
 前を歩いている遥や朱里達の方を見つめながらリラが困った顔をしていたのだった。
 
 
 途中で、光に出会った。どうやら、光が龍助に何か相談しに龍助の家へ尋ねたものの、学校へ部活へ行って留守と龍助の母から教えてもらい、学校へ向かっていたようだった。
「あら、ここにも良い男が。龍助君のお友達?はじめまして。真咲美出依よ。」
 M.が先ほど決めたばかりの人間界での名前で自己紹介する。
「こちら、魔界でお世話になったミディーさん。人間界では真咲美出依さんって名乗っているみたい。魔界から帰って魔界で起こったことを光にも話したけど、魔界の兵士の中でも精鋭の『レジェンド』のM.ってこの人なんだ。それから、こっちが、アル。アル・レインさんは魔界のトレジャーハンターなんだけど、実は元『レジェンド』のA.さん。二人には魔界ですごくお世話になったんだ。」
 龍助が光に、M.とアルを紹介する。
「光は、僕たちの人間界の仲間で、僕の幼馴染なんだ。ディアブロ王には特例として光にも知らせてもよい許可を得ている。」
「はじめまして。光です。」
 
 光がM.と握手をする。そして、アルに手を差し出すと、アルはなれなれしく遥の肩に自分の左腕をかけて右の手で握手をする。
「よう、アルだ。魔界で遥の言っていた人間界にいるもう一人の仲間って、あんたのことか。宜しくな!」
 光がアルと握手をしながら、遥の肩に乗っている腕を見て少しむっとするが、すぐに遥が肩に回された腕をつねってどける。
「痛いよ、遥~。仲間じゃないか~。」
「なれなれしくしないでよね。確かに、あんたには魔界では世話になったけど、遺跡でクリスタルのカケラを手に入れることができたんだからお互い様でしょう?佐伯君、こんな魔界のお馬鹿な『ベテラン盗掘師』は放っておきましょう。」
 遥が光の腕を引っ張って、先に歩き出す。
「ベテランはあっているけど『トレージャーハンター』だぜ!」
「アル…。それも自称だろ。」
 リラの言葉に、龍助が困った顔をする。
「それで、光は何の用事で僕の家に来たの?」
「あぁ…。こんなところで話すような大したことないんだ。またで良いよ。またで…。」
「光君…。」
 光の空元気な様子を見ながら、朱里が呟く。学園に魔界からキメラが迷い込んだ時に朱里と遥をかばって利き腕を負傷して以来、テニス部を休んでいると知っていたからだった。朱里がテニス部の朝の練習に出ている振りをして屋上で時間をつぶしている光の様子を知って、彼を呼び出し話をしたのだが、遥に心配をかけたくないと黙っているように強く言われていたのだった。
 朱里が水属性の癒しの魔法効果で外傷の傷は完治したように見えたのだが、何かかしらの異変で迷い込んだキメラから受けた傷は原因不明だが彼のテニスができない腕にしてしまったのだった。テニスに耐えられないものの利き腕の右腕は日常生活には問題がないので平常を装いつつ、くすぶっている光を朱里は黙って見守るしかできなかった。
 
「そうか、光の話がまたで良いのだったら、俺達の用事を聞いてくれよ。」
 アルが前へ出て話す。
「どうせ、あんたのくだらない話でしょう?もう、十分聞いたから帰ってよ。」
「ディアブロ様の特命でもか?」
 遥が魔界のディアブロ王の特命と聞いて、M.の方を見ると、M.がうなづく。
「最近、人間界に魔界からキメラや魔獣が迷い込む事件が多発している。まぁ、今までも時々は起こっていたのだが、魔界の兵士や展開の守り人が事態を治めてきた。」
 アルの話に割って入るように、珍しくシリアスな表情でM.が話す。
「だけど、最近、ちょっと多いのよね。それに、キメラや魔獣は魔力が比較的低いはずなのに凶暴化しているようなのよ。遥の報告によると、あんた達も迷い込んだキメラに遭遇したそうじゃない?」
 朱里が心配そうに『L.D.C.』を見つめる。
「今は水際でなんとか止めるように魔界も努力していて、人間界にまだ大きな被害が出ているわけではないのだけど、原因が不明な上、ミーとアルがディアブロ様の特命で調査に来たの。」
 

イラスト:hata_hataさん

「それって、私の『L.D.C.』に関係したことなの?アルさん?」
「まだ何もわからないんだ。この魔界一天才な俺も、色々と最近の事例や過去の調査結果、それから古文書などを調べまわっているんだが、お手上げだ。で、直接、現地調査に来たんだ。関係あるか分からないがニ,三,気になることもあるから。言っておくが、遥や人間界の夏の海の水着のお姉さま達じゃないぞ。」
「アル様、最後の一言がいつも余分なのです。」
 リコが、すまして駄目出しをした。
「人間界のこの町に『星の塚公園』という公園があるだろう?古文書をいろいろと漁っていて、そこに何か秘密がありそうなんだが、数日間調べてきたが、どうも先に進めないんだ。」
 ポケットから手帳を出してアルがぺらぺらと捲りながら頭をかく。
「だったら、あたし達も行きましょう。ディアブロ様のためにも、人間界の安全のためにも。朱里も良いわね。」
「うん。」
 責任感の強い遥が言うと、朱里がうなずく。ずっと話を聞いていた光が遥とアルを見ながら申し出る。
「俺も行くよ。龍助も行くんだろう?人間界のことでもあるんだから、みんなみたいに特殊能力はないけど俺も何か手伝いたい。」
「分かったよ。光も行こう。光が言う通り僕たちの人間界のことだし。」
「だったら、はやくいこうよ。ゆいもこうえんへいってみたい!」
 可愛く朱里と龍助の手を引っ張りながら由依が言うと、少し張り詰めた空気が和んだ。アルが由依を肩車して言う。
「さて、お兄さんと公園へ行こうぜ!みんな続け!」
 
 
to be continued...

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『L.D.C.』のシナリオはこの下のメニューの
が付いたエピソードをお楽しみいただけます。さぁ、『L.D.C.』の世界へようこそ!
イラスト:hata_hataさん

■Episode 001:

♪:[blue]

■Episode 002:

♪:[light pink -I love you.-]

■Episode 003:

♪:[nu.ku.mo.ri.]

■Episode 004:

♪:[real]

■Episode 005:

♪:[color]

■Episode 006:

♪:[my wings]

■Episode 007:

♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]

■Episode 008:

♪:[promise]

イラスト:hata_hataさん

■Episode 017:

♪:[ドキ×2]

■Episode 018:

♪:[let it go!!]

■Episode 019:

♪:[N]

■Episode 020:

♪:[tears in love]
♪:[destiny]

■Episode 021:

♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]

■Episode 022:

♪:[Happy Happy Love]

■Episode 023:

♪:[INFINITY]

■Episode 024:

♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]

■Episode 025:

♪:[pain]

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[interrupt feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2018年11月21日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 10th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

 

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[reduction feat.神威がくぽ] shin


[voice feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲をiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信中!!『がくっぽいど(神威がくぽ) Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

CIRCLE[shin entertainment]

アル・レイン

イラスト:hata_hataさん