Episode 023
謎の天使(中編)

music:[INFINITY]


前回までの『L.D.C.』

 朱里達を学園に迎えに行こうと、由依が一人で散歩に出てしまう。その途中で道に迷ってしまうが、ミストスに出会い道案内をしてもらう。
 途中、ミストスとの話の中で、由依は天界の者と打ち明けられる。本当の家族に会いたいのを我慢していた由依は、天界に朱里と行きたいと言うが、危険が迫るのでミストスが口止めをする。そして、また会う時までに決めるように約束をして分かれた。
 
 その後で、人間界へ逃げ込んだセルの行方を追っていたJ.が、ミストスの魔力を感じて現れた。由依にその場にいるように言い残し、ミストスが姿を消した方向へJ.が追いかけていった...。

 由依にその場に待つように言って、J.は微かに感じるミストスの魔力を追いながら走った。角を曲がって道を少し進む。そこには人影は無かった。
「隠れたつもりか?何者だ!」
 J.が大鎌を取り出して構える。そして、ゆっくりと振りかぶり、目の前に振り下ろした。その瞬間、ミストスが姿を現し後ろへ跳んで避ける。大鎌は空気を切り裂き、道路にひびが入る。
「危ないですね。そんなに敵意剥き出しとは。初めまして。ミストス.Cと申します。私は天界の天使族です。どうぞお見知りおきを。あなた様は、魔界の精鋭『レジェンド』のJ.様ですね。本名は、ジャンヌ Fi. シーズ。Fiとは、fifthの略で、おそらく第5番目のクローン。そして、お父上は魔界のディアブロ王立研究所最高責任者のハイウェイ・シーズ様。育ての親で、血の繋がった親族ではありませんが。」
「な、何!」
 ミストスがJ.の事を口にしたので、更に警戒をして大鎌を構えなおして尋ねる。
「どうやら私の事も色々と調べているようだな。その上、隠れてこそこそ様子を伺うなんて、何を企んでいる!お前もセルの仲間か?セルは何処だ!!」
「あぁ、クラシス様のタロット占いでおっしゃっていた邪悪な者の名前は、セルというのでしょうか?残念ながら、私はセルという者とは関係ありませんよ。」
 
 服の襟を直しながら静かにミストスがゆっくりと答える。
「それが本当という証拠は?」
 すり足で一歩前に出て、大鎌の間合いを合わせながらJ.が言う。ミストスは淡々と答えた。
「ありませんね。ただ、勿論、セルという者の仲間という証拠もありません。私達を放っておいて下さいませ。どうも魔界の兵士はしつこい方が多いのでしょうか?確か、あの男性…。R.様でしたか?あなたと同じ『レジェンド』。人間界では速水涼と名乗っていらっしゃる。あの方も一度お会いしました。」
「R.に会ったのか…?もう一度言う。何を企んでいる!」
 気にかけていた涼の名前を耳にして、J.が動揺する。
「貴方様に言う必要もありません。我々は天界の者。あなたは魔界の反逆者であるセルにその刃を向けるべきであって、私に構っていらっしゃる場合じゃないのではないですか?」
「何!!からかっているのか?話したくなければ、身柄を取り押さえて話してもらうしかない!」
 J.が大鎌を頭上で振り回した後、一気にミストスへ突っ込み壁へ追い込もうとする。ミストスはギリギリのところで大鎌の刃を交わしながら、しばらく避けていたが、かすって髪が数本、中に舞う。
「分からない人だ。いや、魔族でしたね。なるべく争いは避けたかったのですが。しょうがありません。」
 そう言った瞬間、一瞬にしてJ.の後ろへ回り込み、小さな氷属性の攻撃魔法を数発J.に食らわす。
「今のあなたの心では、まだ天使族の私にすら勝てません。あまりに隙が多すぎる。」
 J.が体をねじって大鎌を強引にミストスの方へ振るが外れる。外れた大鎌の上に飛び乗った後でミストスが氷属性の攻撃魔法で足元を攻撃する。体勢を崩したJ.に向けてミストスは氷属性の結界でJ.の足元を封じ込めて身動きを止める。
「ちっ。貴様!」
 魔力はJ.の方がはるかに高いのに関わらず、ミストスの最小限の氷属性の魔法で軽くあしらわれてしまいJ.はイライラしていた。そのストレスが高まった時、大きな鼓動を胸に感じた。
「うっ。」
 左手で胸を押さえて一瞬ひるんだJ.に向けて氷攻撃魔法が迫る。大鎌を地面に突き立て刃の部分を盾にして辛うじて防ぐ。
 
「どうしました?攻撃の手が止まりましたが。」
「うるさい!うっ…。」
 ミストスを睨みつけてJ.が叫ぶ。そして彼女が魔力をコントロールできなくなって暴走し始めた。以前、魔界での龍助達との戦いの時に暴走したことがあったが、その時と同じく表情はきつくなり、魔力が急激に上昇する。氷の結界が破れて、大鎌の上に乗っていたミストスを振り落とした。
 身軽にくるくると宙返りをしてミストスは後方へ降り立つ。
「おや?これはいけませんね。自分の魔力をコントロールできずにもてあますとは。」
「う、うるさい!!!break through!!」
 J.は暴走のあまり、我を忘れて、武器をbreak throughさせてしまった。大鎌が光包まれて、鎌の部分が二つに分かれ手で握る。棒の部分は背中に装着する。ちなみに棒の部分は折れ曲がってヌンチャクの様にも棍棒の様にもなる。break throughさせることで更に魔力が上がるが、同時に耐性の無いJ.にとって寿命を縮めてしまう恐れが高い。
「なめるな!消えろーー!!!」
 J.がミストスに向かって突っ込むと、氷属性の結界を張って押し返す。そして、更に周辺に結界を大きく二重に張る。これは辺りに被害が及ばないように、空間を隔離するような役目を果たす。同時に、辺りの魔族の兵士等がJ.の魔力の上昇に気が付かない様なカモフラージュにもなる。
「参りましたね。この力は…。以前、話に聞いたことはありましたが、本当に魔力をコントロールできないで暴走してしまう魔族が存在するとは。この方も、戦いの道具として生み出されてしまったのか…。天界と魔界の争いの歴史の名残りなのでしょうか。それとも、研究者のあくなき探究心が行き過ぎた結果でしょうか。いずれにしてもなんとも悲しい限りです。」
 うつろな表情で氷属性の魔法をJ.の周りにミストスが放つと、J.が両手に持った武器で砕く。そして、右手の刃の武器をブーメランのように投げてミストスを狙い撃ちする。ミストスめがけて飛んで行った武器は彼の胸に当たった。
「やったか!ざまぁないぜ!」
 J.がそう叫んだ時、ミストスが氷になって砕け散る。しかし、J.の右後方から声が聞こえる。
「甘いですね。膨大な魔力に任せて、目で相手を追っていらっしゃるから、ダミーに引っかかってしまうのです。」
 ミストスがコピー魔法の道具を使って、瞬時にダミーを作り出していた様だった。そして、J.がダミーを狙っている間に、トラップを仕掛けてJ.の周りに魔法陣が浮かび上がる。逃げようとする間もなく、雷属性の魔法がJ.を襲い武器を落として、膝ま付く。
「おや、お目覚めですか?少しは頭も冷えたでしょう。私は、あなた方と戦いたくありません。どうか放っておいてください。あなたの追っているセルという者についてはかかわりは無いのです。今のところ。」
「なんだと…。それはどういう意味だ!」
 暴走していたJ.が落ち着きを取り戻し、地面に落ちていたbreak throughさせた武器が元の大鎌に戻る。
「そのままの意味ですよ。心を解き放って、真実の瞳で物事を捉えてみて下さい。」
 そう言うと、一度お辞儀をしてミストスがゆっくりと立ち去って行った。辺りからミストスの魔力らしきものも感じられなくなった。
 
「何者なんだ…。私に止めを刺そうと思えば簡単にさせていたのに、何もせずに立ち去るとは。天界の者と名乗っていたが、何を目的に人間界で動いているんだ?」
 ゆっくりと立ち上がると、水属性の癒し魔法が入った魔力回復用の道具を取り出して使う。魔界の一般の兵士が応急処置に使う道具で、J.の様な上級魔族の魔力を回復するのには足りなかったが、幾分かは回復した。
 怒りと焦りと嫉妬で自分の魔力をコントロールできなくなり、我を忘れて命に危険が及ぶ可能性のあるbreak throughまで使ってしまった自分の未熟さに改めて悔しさがこみ上げる。ミストスに完敗したことよりも、自分自身の迷い打ち勝てなかったことに涙がこみ上げて頬を伝う。
 
「なかないで。さみしくないよ。」
 

イラスト:hata_hataさん

 ふと気づくと、J.の目の前に由依が立っていた。由依は待っている様に言われて、おとなしく残っていたが、しばらくしてもJ.が戻ってこないので様子を見に来たのだった。ミストスが結界を張って戦いの場を隔離していたため、周りに感知されないようになっており、由依もミストスがJ.を倒して立ち去った後で来たので、何が起こったのかも分からなかった。
 涙を流している姿を由依に見られてしまったので慌てて涙を腕で拭き取るが、悔しさでこみ上げてくる涙は止まらず恥ずかしさでJ.はしゃがみこんでしまう。
「だいじょうぶ。ゆいがいるから。ねぇ、おねえちゃん?」
 由依がJ.の側に寄って抱きしめて頭をなぜてあげる。不思議なことにJ.は温かい気持ちに包まれて癒されていった。
 しばらくすると、すっかり落ち着いてJ.は座り込む。すると、由依も横にちょこんと座る。
「……あり…が…とう…。」
 罰が悪そうにうつむいたままJ.が由依に言うと、由依はにっこり微笑んだ。
「どういたまして。いや、どういたしまして。」
 二人が小さく笑う。
 
「お前は確かジュリアが連れていた子供だったな。名前は…。」
「ゆいだよ!じゃんぬちゃん。」
 J.をジャンヌちゃんと由依が呼んだことに違和感を感じて、J.が訂正する。
「ジャンヌじゃない、J.だ!」
「じゃんぬちゃんじゃないの?」
 由依が寂しそうにする。それを見て、J.が言う。
「お前が言う通り、ジャンヌが本当の名前だ。お前が呼ぶ時は、ジャンヌで良いよ。」
「ほんとうのなまえか…。いいなぁ。ゆいのほんとうのなまえはわからないから。ほんとうのかぞくも…。」
 空を見上げながら羨ましそうに由依が呟く。
「お前は、卵から生まれたらしいからな。」
 J.は自分がクローン技術で生み出された事を思い出す。自分よりも幼い由依も本当の親を知らなくて寂しい思いをしていることを感じた。他人に自分の気持ちを話してもどうせ分からないと思い、幼い頃から自分の事をあまり話さなかったJ.だったが、由依には素直な気持ちで接することが出来た。
「でも、私も本当の家族はいない。育ての親がシーズ博士だ。」
「さみしくない?」
 由依がJ.の顔を覗き込みながら尋ねる。少し考えて、J.が答えた。
 
「…。寂しくないと言えば嘘になるが、私には育ての親の博士がいる。本当の親がいないという事実が変わるわけではなく、正直満足できるわけではないが、自分の居場所がそこにあるから。博士には感謝している。私みたいな者を娘として育ててくれたから。お前だって、そうだろう?ジュリアや南龍助がいる。育ての親が…。」
「そうだね。じゃんぬちゃんとゆいはにてるね。」
 そっとJ.に寄りかかって由依が嬉しそうにする。
「ふっ。そうだな。」
 J.が軽くため息をついた後でにっこりする。
「じゃんぬちゃんもじゅりとおなじにおいがする。やさしいかんじ。ゆいすきだよ」
「そうか。」
 由依はJ.にすっかり懐いて甘える様に言う。J.も由依の温かさに癒さていた。二人が空を見上げると、そこには二つの雲が一緒に南の空へゆっくりと流れていく。ちょうど、J.と由依の様に寄り添っていたのだった。
 
「そうだ、人間界にセルという悪い奴が現れたからお前も用心しろよ。私は任務でそいつを追っているところだ。悪い奴が何か変わったことをしなかったか?」
 J.はミストスが由依と接したかどうか分からなかったので尋ねてみたが、由依は何事も無かったように答えた。
「うん。ゆいがまいごになって、みちをおしえてもらったの。」
 その言葉を聞いて、J.は頭をかしげるが、どうやら由依を見る感じ接していないか危害は無かったと判断した。
「…?よく分からないが、危険な奴を感じたらすぐに逃げるんだぞ。」
「うん。」
 J.が立ち上がって由依に手を貸して立たせる。
「よし。それでは、私は任務に戻る。ん?何だ!」
 
 その時、J.がかすかな魔力の接近を感じる。J.は戦いの後で魔力を極限に下げて気配を消していたのだが、魔力を完全に回復しきっていないJ.が緊張しながら由依を庇って前に立つ。

イラスト:hata_hataさん

「このあたりよ!あ、あんた、由依ちゃんに何をしているの!!離れなさい!!」
 接近してきたのは魔界から帰ってきた遥だった。魔界から帰ってきて直行で学校へ登校していたが、帰宅中に遥もJ.のかすかな魔力と由依の魔力を感じて走ってきたのだった。
 遥は魔界に一度帰ってセルの逃走に魔族が関わっていたことを知り警戒していたのだが、由依を連れ出したのがJ.と勘違いしたのだった。
「ちがうの。じゃんぬちゃんはわるくないの。ゆいがひとりでじゅりとはるかちゃんたちをおむかえにきちゃったの。わるいのはゆいなの。」
 由依が慌ててJ.と遥の間に入る。それを聞いて、遥はデビルモードから学生服姿へモードチェンジして戻る。光と朱里も後から駆け寄ってくる。

イラスト:hata_hataさん

「悪かったわ。あたしの早とちりみたい。ごめんなさい。」
 遥が頭を下げると、J.は首を振って気にしていないと意思表示する。
 
「私はセルの行方を探していて、偶然、由依に会ったんだ。それだけだ。」
「そうなの。魔界で父に直接聞いてきたんだけど、まだセルの行方は分からないみたいね。あたし達が目撃したにも関わらず取り逃がしたから…。」
 J.がセルの行方をまだ探していることを聞いて遥が呟く。
「気にするな。ハルカリ様は兵士じゃないだろう?セルを追うのは我ら魔界を守る兵士の役目だ。」
「そうね。」
 遥がうなずくと、朱里と光もうなずく。
「それでは、失礼する。くれぐれも気をつけろよ。」
「じゃんぬちゃん。またね。」
 右手を前にして魔法陣のゲートを開くいたJ.が由依を見てに微笑む。彼女の髪に飾られている小さな花の髪飾りが日差しに反射して輝く。由依が、小さな手を振ると、J.は小さく手を一度振り、ゲートの中に飛び込んだ。そしてゲートが閉じる。
 

イラスト:hata_hataさん

 朱里が駆け寄り、しゃがんで由依を抱きしめる。
「駄目じゃない!一人は危ないからお留守番していてね、っていったのに。心配するじゃないの。」
「ごめんなさい。」
 由依が謝る。すると、朱里がぎゅっと更に抱きしめる。母親がいたらこんな感じなのかな?と、由依は思ったのだった。
「分かったら良いの。今頃、リラも心配してるよ。」
「かえったらりらにもごめんする。」
 光と遥が二人を見つめる。
「まぁ、お留守番はつまんないもんな。一人でちゃんと学校までお迎えにこれたんだから、褒めてあげなくちゃ。」
「そうね。あたし達を迎えに来てくれたんだし。優しい子だね。由依ちゃんは。ありがとう。」
 遥が由依の頭をなぜてやると由依が照れる。
「えへへ。」
「でも、次は朱里や一色達に心配かけるなよ。」
 光が由依のおでこを指でつつくと由依がうなずく。
 その日は、朱里達のラクロス部の放課後の練習は休みだった。龍助は実と武司と共に軽音楽部の練習だった。光も誘われたのだが、今日は病院でのリハビリがあったため帰ってきていたのだった。
 リコが遥のカバンの中から顔を出す。
「うん。りこもおかえり。ゆいもりらもまってたよ。」

イラスト:hata_hataさん

「りこもゆいちゃんとあいたかったですわ。ただいまですの。」
 朱里が由依と手を繋いで言う。
「みんなで帰りましょう。」
 
 帰宅中に、J.との話やミストスとの話を思い出しながら、由依は小さく呟いた。
「ゆいがほんとうにいるべきばしょか…。」
 そして、リラは龍助の家でタオルケットを蹴飛ばして寝言で呟いた。
「もう、おいらこれ以上食べれないぞ。でも、もう一杯だけ御替わり…。」
 
 
 数時間後、J.が人間界の町を歩いていた。適応魔法をかけて魔力を抑えて、人間界で人間に見えるようにする。姿もデビルモードではなく、普通の人間の女の子の姿になった。
 以前、龍助と出会った花屋の前で立ち止まった。カラフルな花が店一杯に並べられており、良い匂いが漂っている。
「花か…。由依も好きかな?きっと好きに違いないな。」
 無邪気で優しい由依の事を思い出しながらJ.が思わずにんまりする。
「お花をお探しですか?」
「あ、いや、その…。」
 J.が戸惑っていると花屋の店員が優しくJ.に話しかける。
「見ているだけでも良いですよ。その花も良い香りがするでしょう?」
 一厘花を取ってJ.の顔の辺りに持ってくる。黙ったまま花の香りを楽しむ。禁忌のクローン技術で生まれた身の上によりいじめられないよう、幼い頃から戦士になるべく励んできた彼女にとって花をじっくり見て感じることは今まで無かった。店員が手に持たせてくれたので、一厘のその花を眺めていた。
「お花も見て下さって香りでリラックスしていただけるだけでも、きっと喜んでいますわ。」
 黙ったままのJ.に花屋が仕事をしながら話す。
「花の時期はあっという間なんですよ。植木は多年草だと、ちゃんと育てればまた来年もありますが、生け花だとあっという間なんです。でも、一生懸命、今この瞬間を華やかに彩っているんです。綺麗でしょう?」
「き、綺麗ですね。」
 そう答えるのがやっとだった。店員は掃除を終えて、花の手入れをしながら微笑む。J.が花を返そうとした時、後ろから声がかかる。

イラスト:hata_hataさん

「その花を5本ほど花束にしてくれ。」
 振り返ると、涼が立っていた。お互いに適応魔法をかけて極限に魔力を抑えてカモフラージュしているのでJ.は声がするまで気が付かなかった。店員が涼に尋ねる。
「分かりました。プレゼントですか?」
「あぁ。その彼女に。」
「それではプレゼント用にラッピングしますね。」
 花屋が手際よく花を5厘とその他幾つかの小さな花を一緒に束ねて綺麗なリボンをかけてラッピングする。
「はい、どうぞ。」
「代金はこれで良いか?」
「ありがとうございます。」
 涼が店員から花束を受け取ると、ドキドキしているJ.に手渡す。そして、店を出ていく。
「おい、J.行くぞ。聞きたいことがある。」
 涼の声にはっとして、J.が店員にお辞儀をして店を出ていく。
「またいらっしゃって下さいね。ご利用ありがとうございました。」
 
 数メートル歩いた先に、涼のバイクが置いてあった。J.が花束を持ったまま追いかける。
「な、何で、わ、私にこれをくれたんだ?からかっているのか?」
「お前がその花を好きそうだったから。良い表情をしていた。それだけじゃダメか?」
「え?」
 涼の言葉でいつも男性の魔族に負けまいと突っ張ってきたJ.だったが、真っ赤になって黙り込む。
「そういえば、悪かったな。さっき、J.って呼んで。人間界ではジャンヌか?それとも別名があるのか?」
「まだ、考えてなかった。ジャンヌで良いよ。」
「そうか。」

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 バイクの場所まで着くと、カバンからデニーが顔を出す。
「初めまして。ジャンヌ様。デニーと申します。綺麗なお花ですね。とても貴方様にお似合いです。羨ましいですわ。」
「あ、ありがとう。」
「人間界に眠っていた第二の『L.D.C.』がこれだ。これに”Espoir”のクリスタルを集めるんだが、そのクリスタルに宿っている召喚獣の一つがデニーだ。まぁ、こんな俺のパートナーというところかな。」
 涼の胸元に『L.D.C.』が輝く。J.がそれを見ながら尋ねる。
 
「聞きたいことって?」
「セルが逃げたと風のうわさで聞いた。本当か?」
 デニーをなぜてやりながらバイクのキーを取り出す。
「本当だ。間違いない。私の落ち度だ。」
「気にするな。お前だけのせいじゃない。これはかなり仕組まれたものだ。魔族の中に裏切り者が何人もいると思われる。」
 少し曇った表情で涼がJ.に言う。
「やはり、R.、いや、りょ、涼も裏切り者がまだいると思うか?」
「あぁ。ある筋からの報告でもどうやらそうらしい。誰が裏切り者なのかまでは特定できていないらしいが…。」
 ディアブロ王の許可を得て『レジェンド』の役目を離れ、人間界にてしばらく潜伏していた涼が連絡を取っている者についてJ.が聞いた。
「ある筋?それは誰だ?」
「お前も知っている。トレジャーハンターのアル・レインだ。」
 隠密などの情報員かと予想していたので、思いがけない名前で驚く。
「アル?どういう関係?」
「この第二の『L.D.C.』に纏わることでも研究をしているらしい。その報告とかで、たまにアルと連絡を取ることがある。『L.D.C.』はまだ分からないことばかりだからな。」
 第二の『L.D.C.』を手に入れた経緯を涼はJ.に説明した。
 
「なるほど。そんなことがあったのか。」
「あぁ。それから、人間界で何度か魔獣やキメラが迷い込んできて、それを排除した。」
 涼が何度か魔界へ追い返したキメラや魔獣の件をJ.に話す。
「何か、異世界の壁にも異変が起きているんだ。原因をシーズ博士も研究されているんだが、解明に至っていない。残念ながら、人間界へ迷い込んだ魔獣やキメラは魔族の兵士が一件ずつ処理していくしかない。これもセルと関係あるのか?」
 J.が涼に質問すると、涼は首を振って応える。
「分からない。セルの仕業かもしれないし、二つ目の『L.D.C.』が目覚めてしまったからかもしれない。いや、また違う理由かも…。」
「違う理由?」
「あぁ。最近、天界の天使族が動いているようだ。」
 天界の天使族と聞いて、J.はミストスと戦った事を思い出した。
「そいつはミストス.Cって名乗っていた。取り押さえようとして、逃げられた。」
 J.がミストスとのバトルについて詳しく話した。
「そうか。お前も取り逃がしたか。俺もだ。まぁ、デニーのおかげでお前の様にダメージを受けはしなかったが。傷は大丈夫か?」
「あぁ。もう大丈夫だ。」
 涼の優しさを感じJ.はうれしかった。
 
「そうか。それは良かった。朱里と南龍助達にも危険が及ばなければ良いが…。」
 その言葉を聞いて、「やはり、涼は朱里が好きなのではないか?」と思う。涼と朱里が兄妹という事を知っているのは、涼,ディアブロ王,シーズ博士等一部の者だけである。朱里ですら知らされていない。涼から思いがけず花束をもらって、思わず普通の女の子らしくしてしまっていた自分に「涼は私に仲間として花束をくれただけなんだ。」と、必死に言い聞かせる。J.の心が揺れる。セルを取り逃がした時にクローンの自分を涼は助けに来てくれるか、と悩んだことがあったが、そのことを思い出してしまい、更に動揺してしまう。
「まぁ、お前もまだ人間界にいるんだったら、また会おう。俺も、色々と調べてみる。特に、ミストスとセルは関係ないのかもしれないが、どちらの動きも気になるからな。おい、聞いているのか?」
「…そ、そうだね。私は一度魔界へ帰って報告したら、すぐにまた人間界へ戻ってセル優先で行方を追うわ。りょ…、涼も気を付けてね。」
 上の空だったJ.が慌てて応える。
「了解だ。ジャンヌ。無理だけはするなよ。応援が必要だったらいつでも呼んでくれ。連絡方法は、このデバイスへ。」
 涼はバイクに飛び乗ってエンジンをかけ、デニーがJ.に頭を下げてお辞儀をする。涼に花束をプレゼントしてもらったお礼を言うのを忘れていたことに気づき、J.が別れる前にドキドキしながら言った。
 
「あ、ありがとう。は、花束のプレゼントは初めてで、うれしかった。」
 
「だったら、もっと早くプレゼントしておけば良かったかな?じゃぁな。元気出せよ。」
 クールにそう言うと、涼はバイクに乗って去って行った。ボーイッシュな突っ張ってしまういつもの自分とは違う素直な気持ちで涼に礼を言えたことにJ.は頬をピンクに染める。これも花のおかげかも、とJ.は花束を持ちながら思ったのだった。涼が見えなくなるまで、ずっと立ったまま花束の香りに包まれていた。
 
 
to be continued...

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■Episode 002:

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■Episode 003:

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■Episode 004:

♪:[real]

■Episode 005:

♪:[color]

■Episode 006:

♪:[my wings]

■Episode 007:

♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]

■Episode 008:

♪:[promise]

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■Episode 017:

♪:[ドキ×2]

■Episode 018:

♪:[let it go!!]

■Episode 019:

♪:[N]

■Episode 020:

♪:[tears in love]
♪:[destiny]

■Episode 021:

♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]

■Episode 022:

♪:[Happy Happy Love]

■Episode 023:

♪:[INFINITY]

■Episode 024:

♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]

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VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2016年11月02日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 8th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

 

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VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2015年09月09日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 7th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

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2月18日(水)よりドワンゴジェイピーにて特設ペー ジを設けていただき先行配信、2月25日(水)よりiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 6th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

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涼(サングラス姿 L.D.C.装着時)

イラスト:hata_hataさん