Episode 015
守るための戦い(前編)

music:[baby baby]


前回までの『L.D.C.』

 魔界から来た麻宮朱里を取り戻すために魔界へ突入した龍助は、遥,リラ,リコと共に朱里が捕らわれている宮殿へ潜入開始した。
 
 途中、兵士の気配を感じ、近くの部屋に入ったのだが、そこでシャロンという小さな女の子に出会う。彼女の導きにより、テラスごしに龍助は朱里と対面することになる。しかし、外部にも厳重な結界が張ってあるために龍助達は朱里のいる部屋へ向かった。
 
 朱里の部屋に続く通路の部屋で魔獣を倒すが、次の大広間に大きな魔力を感じる。それは『レジェンド』のR.である涼だった。遥は作戦を練り直すために逃げるように言うが、龍助は逃げずに前に進むことを選ぶ。そして、遥たちも龍助を信じて、バックアップすることにする。今、守るための戦いが始まる。
 
 その頃、人間界では、光が龍助達の無事を心から祈りながら待っていたのだった...。

 人間界に一人残った光は、テニスに打ち込んでいた。
 龍助達が魔界へ朱里を取り戻しに立ち向かっているにもかかわらず、人間の光には力がなく遥の判断で大人しく龍助たちの無事を待つことになった。過去に、大好きだった兄を亡くした光は、朱里という仲間が自分の前から連れ去られたことで、これ以上、大切な仲間や家族がいなくなることに苦しんでいたのだった。
 
 いつのまにか心の中で少し気にかかっている遥を自分の手で守ることもかなわず、逆に魔界で龍助たちの足手まといになってしまう現状を自覚してはいるものの、落ち着かなかった。龍助達を信じてはいたものの、魔界という未知の世界で果たして朱里を取り戻してくるという無謀な作戦がどのようなことなのかも実感がわかず、何かしないと耐えられない恐怖に押しつぶされそうだった。
「俺はこれでは一色を守れないだろうが…。」
 テニスラケットで壁に向かってひたすら一人でテニスボールを力強く打ち返す。
 
 龍助の修行を手伝った時にテニスラケットで魔法の詰まった玉を龍助へサーブし、彼の防御訓練をしたことがあった。光は、人間でre-writeできない以上、自分に出来るこのテニスのサーブによる攻撃が、少しでも仲間を守れる可能性があるのではないかと考えた。勿論、遥達に聞かされた涼や魔界の兵士の戦力にはかなわないだろうが、少しでも遥や龍助達の力になりたかった。
「龍助。遥。リラ。…朱里を必ず取り戻せよ。俺は待っているから。ここで、お前達が無事帰ってくるのを…。」
 汗を流しつつ、光がラケットを振りながら心から祈る。その姿を、校舎から見つめる人影があった。
 
「何、見ているの?祐二先輩。」
 龍助の仲間の実が、教室からそっと外を見ている祐二を見つけ廊下から教室へ入って駆け寄る。実は、龍助たちが魔界へ旅立つ時に、遥が適応魔法を使って、龍助が存在していなかったように魔法をかけておいたので龍助や遥の存在を忘れている。
「あ、見つかってもた?いや、な、かわゆい女の子がおらへんかな?って思って、外を見とったんやけど、あかんな。いるの男ばっか。おまけに、寄ってきたのはおかまちゃんやん。」
「教室で独りぼっちで寂しそうに外を見ている人が、そんなことばかり言っているとまた千夏に怒られるよ。と、いうか、あたいドラムの練習に行くところなんだけど、なんでドラムやろうとしていたんだか分からない。なんか、思い出せないの。なんでだろう?」
「まぁ、細かいことは気にするな。どっちみち、いつものお前の突然の思いつきで音楽やろうなんて思っただけだろう。飽きたら止めればよい。やってみたいなぁ、って思って、なんか気になるんだったら、チャレンジしてみればいいんだ。」
「そ、そうよね。じゃぁ、練習に行くわ。じゃぁね。」
 実が、ドラムのスティックを持って軽音楽部の練習に行くために教室を出て行った。祐二が、微笑む。
「実の奴は、もう龍助のことを完全に忘れちまっているんやな。でも、ドラムを続けているのは、やはり龍助達との絆が何らかの形で残っているのか…。光の奴は、龍助のことをまだ認識しているみたいだな。後は、武司か…。光はあのディオール家に伝わる宝具のピアスの効果とはいえ、武司は、なぜ龍助達の記憶が残っているんだ?まったく。何が起こってるのやら。わいでも理解不能や。これも古文書の伝説に関係しておるやろうか…。魔界や天界,人間界のバランスが保てなくなってきているのか…?」
 祐二が教室から、また、必死にテニスラケットを振っている光の姿を見つめながら呟いた。
 
 

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 その頃、龍助たちは、宮殿の二階にある大広間への扉をゆっくりと開けていた。重い扉を押し開けると少しずつ部屋に入る。魔力を認知できない龍助ですら何か大きな見えない圧力を体で感じ、冷や汗を感じる。遥は龍助の左腕に捕まりながら、恐る恐る部屋へ踏み込んだ。その先にある魔力が過去に戦った『レジェンド』である涼のものと分かっていた。そして、遥も龍助も以前、人間界で彼と戦った時は圧倒的な力の違いで敵わず、朱里のデビルモードの魔力を解放した状態で、なんとか追い返してきたのだった。
 
 宮殿の大広間の奥の方から風が流れてくる。先ほどの通路と違いこの部屋は明るく照明が照らしていた。龍助達が入ってきた入り口とは反対側の出口の近くにある椅子にその男が座っていた。
 ゆっくりと涼が椅子から立ち上がる。
「南龍助とハルカリ嬢だな。待っていたぞ。」
 涼が龍助たちの前に立ちはだかった。風が吹きぬけ、龍助と遥の髪が大きく揺れる。
「涼さん…。」
 龍助が緊張して両手の剣を握る手に力が入り、唾をごくっと飲み込む。遥が左手のリコの盾で防御の姿勢をとりつつ、龍助から右腕を離しロッドを構える。
 
「お前は、何故危険を犯してまで、魔界へやって来たのだ。大人しく、人間界へいればジュリアを忘れて以前のように過ごせたのだぞ。それを、無力な人間が、魔族の女を助け出すために魔界に立ち向かうとは…。何故なんだ?お前に何がそうさせるんだ?人の歴史で繰り返されてきたように、お前もただ戦いたいだけなのか?」
「僕は、僕にとってかけがえのない大切な人に伝えたい思いを届けに来たんだ。あなたと戦いたいわけではないし、魔界に刃向かいたいわけでもない。」
 龍助が涼の目を見てしっかりと答える。
「分かっているのか?お前は、人間。ジュリアは魔族だぞ。歳の重ねようも違う。育った世界も。所詮、種族が違うんだ。」
「確かに、涼さんの言う通りかもしれない。でも…、それでも、僕は彼女と一緒に夢を追いかけたいと思ったんだ!そして、彼女の夢を叶えたいと心から願っているんだ。」
「初めから叶わぬ夢を描いて、それが何になるんだ。無駄なことは辞めておけ。価値はない。」
 涼がクールに突き放す様に言う。
 

イラスト:hata_hataさん

「希望の光は小さいかもしれないけれど、まだ叶わない夢と決まったわけではないんだ。無駄かどうかはやってみないと分からないし、価値があるかどうかは僕自身がやってみてどう思うかでしょう?それよりも何もしないで諦めてしまったら、その時点で終わりなんだ。僕は例え独りになっても諦めたくない。」
 龍助が一歩前に出て更に続ける。
「ジャンヌさんから聞いたんだけど、僕が記憶置換をされていないことを知っていながら涼さんが魔界へ帰っていったのか、ずっと考えていたんだ。それって、やっぱり、涼さんも人間になりたいという朱里の願いを叶えたかったんじゃないの?朱里も涼さんが人間になりたいのではないかと言っていたんだ。」
「馬鹿馬鹿しい。」
 軽く嘲笑いながら涼が少しだけ強い口調で言う。
「そう言いながらも、あなたは、僕達が夢を追い続けることを手助けしてくれたよね。おかげで、僕は大切な朱里を忘れないで済んだし、遥ちゃんやリラやリコや仲間と朱里に会いにここまで来れたんだ。僕はあなたに感謝しているんだよ。」
「ふっ。偶然だ。もし、その偶然が、お前達の小さな希望の光であれば、そのともし火が二度と蘇らない様に今度こそ俺の風属性の力を使って全力で消し去ってやる。」
 
「僕はあなたとは戦いたくないんだ。僕達は何故戦わなければならないの?戦う意味が無いよ。あなただって、心のどこかで戦いたくないと思っているはずだよ。」
「それって、優しい気遣いのつもりか?それは、優しいんじゃないよ。人を傷つけている自分を見たくないだけだ。所詮、自分のためだ。」
「戦いたくないっていう気持ちは、駄目なの?僕は争いを見たくないんだ。誰だって、相手を傷つけたら自分の心も痛むはずだよ。それは、僕だけで無くて、きっと涼さんも。」
「どうだろうな?そんな心は、今の俺にはもう無いのかもしれない。」
 訴える龍助を見る視線をそらして、少し寂しそうな表情で涼が淡々と答える。
 

イラスト:hata_hataさん

「お願い、通して。あたし達を朱里のところへ。」
 涼の表情を見て、今まで黙っていた遥が彼に願い出る。
「ハルカリお嬢様。あんたも魔界の大貴族であるディオール家のお嬢様だったら、魔界に刃向かって今やっていることがどんなに重大なことかわかっているのか?ディオール家が取り潰しになる様なことをやっているんだぞ。いたずらもいい加減にしろ。」
「も、勿論、分かっているわ。で、でも…、あ、あたしは、龍助と共に大切な朱里を取り戻したいの!あたしにとっても朱里はかけがえの無い存在だし、龍助が守りたいということを、あたしもリコやリラや仲間達と一緒に支えたいの!諦めたら、一生後悔するって、ここが言っているの。」
 遥が左手で胸を押さえる。
「遥ちゃん…。ありがとう。」
 龍助が感謝する。
 
「話しても無駄なようだ。お前達には悪いが、魔界を守るのが俺の任務だ。お前達はここから先へは通さない。残念だが消えてもらおう。」
 ゆっくりと涼が槍を取り出した。そして、次の瞬間、龍助に向かって槍を突き出した。槍はぐんぐんと伸びて、龍助の顔の前に迫る。
「悪いな、南龍助!」
 涼が口ずさんだ瞬間、龍助が右手の長剣で槍を払いのけた。
「な、何!!お前、いつの間にこれを見切れるようになったんだ?」
 払いのけられた槍を縮めながら引き戻して涼が構えなおす。龍助は、魔界へ来て数々の戦いを経験し、また、旅の合間にアルの指導によってリラとの修行を積んできたのだった。少しずつリラとの絆も深まりre-writeの適合性もはるかに上がり、本人達も気付かなかったが戦士としても知らず知らずのうちに成長していたのだった。
 
「面白い。break through!」
 涼が武器をbreak throughさせて、槍からドラゴンキラーと遠隔操作できる槍先にフォームチェンジさせた。左手のドラゴンキラーをさすりながら、龍助をにらみつけた。数個に分裂したやり先が龍助を狙って浮遊している。
 龍助が遥を気遣いつつ両手の剣を構える。遥は、氷の防御魔法の結界を二重に張る。そして、アルから預かっていたカプセルの道具を取り出して四方に投げた。カプセルが破裂して、少し冷気が広がる。それは、一定期間ではあるが氷属性者が有利に戦えるような環境にするための道具であった。結界の効果がワンランク高まる。
 
「氷属性魔法の強化の道具か。お前達もやっと戦う気になったか?所詮、魔界に歯向かっているのも、お前達も戦いを好んでいるだけだからだ。形あるものを奪ったり壊したりするために戦いたいんだ。」
「違う!!決して僕達は戦いたいわけじゃない。守るために戦うんだ!」
 槍先が龍助達の前の三方から同時に攻撃を行う。遥の張った結界が弾き飛ばすが、今度は槍先が一箇所に集中して結界を破りにかかる。
 遥も更にもう一重、結界を張るが少しずつ侵食され、一枚ずつ破られていく。
「龍助。あたしの魔法だといつまでも持ちこたえられない。アルから貰った氷属性者のためのカプセルも使いきったから、15分もすれば効力が失われて元の魔力に戻ってしまうわ。」
「分かったよ。僕が打って出る。」
「気をつけて。」
 遥が龍助に軽くハグをした。
「結界が破れる寸前に飛び出すよ。遥ちゃんは結界を再度自分用に張ってから、氷攻撃魔法で僕を援護して。頼りにしているよ。」
 そう言うと、龍助は振り返りリラの剣を構えた。
「よし、今だ!行くよ、みんな。」
 結界が破れた瞬間、龍助は右手のリラの剣を一振りしてオーラを飛ばし、左手の剣をかざして防御の姿勢をとりながら涼の方へ飛び込んでいった。同時に、遥は少し後方へ跳んで、即座に結界を張り、ロッドを振って龍助へ向かっていく槍先に向けて氷属性の攻撃魔法を仕掛けて阻止した。
 
 オーラの後ろを走りこみながら龍助は風を切っていた。剣にフォームチェンジしているリラの心の声が龍助にアドバイスする。
「もう一振りしながら左側から回り込もう。大丈夫おいらがいつも一緒にいるから。」
「うん。」
 もう一振りして二発目のオーラを飛ばす。
 涼が一発目のオーラをドラゴンキラーで弾き飛ばして、二発目を更に弾き飛ばそうとした瞬間、龍助が涼の左側へ回りこむ。
「何!?こ、こいつー!!!!」
 涼がオーラを弾き飛ばしながら、ドラゴンキラーの軌道を龍助の方へ強引に持っていこうとする。
「うぉー!!!」
 龍助が右手の長剣でドラゴンキラーを受けて防御しながら、左手の短剣で涼に切りかかろうとするが、彼の胸の寸前で止める。
「甘いな。ここは戦場だぞ。その甘さが、命取りだ。」
 涼の遠隔操作の槍先が後ろから龍助を襲う。遥が魔法攻撃で槍先の軌道をずらし、龍助を通り過ぎて壁に突き刺さる。
 
 龍助と涼が長剣とドラゴンキラーを何度か交わし、火花が散る。
「お前は何も知らないからこんな無謀なことが出来るんだ。知っていると動けなくなってしまうこともあるんだ。誰もが、お前達のように動けるもんじゃない!」
「僕だって、怖いよ。だけど僕には仲間がいる。一人一人は弱いかもしれないけど、みんなで理解して支えあって大切なものを守るために協力して乗り越えてきたんだ。」
 涼がドラゴンキラーで龍助を弾き飛ばすが、龍助は二回転がった後ですぐに立ち上がり、間合いを取って再度、剣を構える。
 
「人は変わるものだよ。それに、いったいどれだけ相手を理解できているかも怪しいものだ。自分だって、己のことを全て分かっているわけではないというのに、他人が分かるはずが無い。」
「そ、それは…。確かに、人は心変わりするかもしれない。それに、人の心を理解するのは難しいことだと思う。だからこそ、話し合って、触れ合って、時には喧嘩しながら、心を通じたいと思うんじゃないか?」
「そんな、つかみどころの無いはかないことばかり夢見て、お前は馬鹿だな。大馬鹿者だ!そんなところに、ジュリア クリスティーは魅かれたのかもしれないな…。いずれにしても、俺は、忠実に使命を守るだけだ。」
 龍助が剣を三度振って、オーラを三つ飛ばし涼を牽制する。しかし、涼はドラゴンキラーを盾にして、オーラの中へ突っ込み、押し返しつつ龍助の方へ突き進んだ。
 
「こんなもので、この俺を倒せると思うな!!!!」
 三つのオーラを押し戻しつつ龍助に接近する。遥が援護の魔法で攻撃するがびくともしない。
「く、来る!!」
「龍助、おいらたちのオーラを三つとも押し返しているぞ。一旦、後ろへ下がろう。」
 リラが心の声でアドバイスするが、踏み込んで後ろへ下がるだけの時間がない。
「龍助ー!!」
 遥が叫ぶ。
「間に合わない。それなら!」
 龍助が剣を構えて、心を決めて涼の方へ飛び込んだ。龍助の腕に付けられた朱里からプレゼントされたドラゴンの刻印がされた腕輪がオーラに包まれる。
 
 

イラスト:hata_hataさん

 朱里は、宮殿の奥の何重にも結界が張られた部屋の窓から先ほど龍助と遥の姿を見て涙を流していた。その耳には龍助からプレゼントされたピンクの小さな石のついたイヤリングがきらめく。もう、会うことが出来ないと思っていた龍助が自分を助けに危険を冒して魔界へやってきてくれた。魔界に投降して以来、これ以上、彼を危険に巻き込みたくないという思いと同時に、心のどこかで、もう一度龍助に会いたいという想いが交差して不安な気持ちで押しつぶされそうな日々を過ごしてきた。しかし、彼を結界の張ってあった窓の向こうに見た時、やはり、もう一度会いたいという気持ちの方が強いことを自覚したのだった。
「ねぇ、じゅり?ないているの?ゆい、かなしいのきらい…。」
「ううん。違うの。うれしいの。うれしい時の涙だよ。」
「うれしいの?」
 朱里がの顔をμと記された卵から生まれた小さい女の子の白鳥由依(しらとり ゆい)が覗き込む。朱里が博士から貰ったローブから由依の服を作ってあげたので、それを着ていた。
「だったら、ゆいもうれしい。」
「ありがとう。由依ちゃん。あのね、私の大切なお友達が近くに来ているの。」
「おともだち?」
 朱里が由依の頭をなぜてあげて、抱っこしながら椅子に座り優しく話す。
「うん。とっても大切なお友達。みんなに会いたいの。会って伝えたいことがあるから…。」
「つたえたいこと?」
「そうだよ。心のそこから思うこと。」
「だったら、あいにいこうよ!」
 由依が抱っこされた状態で、笑顔で振り返った。朱里も不思議に温かい気持ちになり笑顔になる。
 

イラスト:hata_hataさん

 朱里の膝から由依はちょこんと飛び降りた。そして、朱里の指を握って、引っ張る。
「いこう。」
「え、だって、この部屋は厳重な結界が何重にも張っているから、まずそれを解かないと私達は出られないの。」
「にひひ。だいじょうぶだよ。だいじょうぶ。」
 いたずらっ子ぽい笑顔になって由依が朱里の手を引っ張る形で、部屋のドアの結界の張ってある場所まで来た。ゆっくりと深呼吸すると、由依は瞳を閉じた。すると彼女の周りをオーラが包んだ。朱里と繋いでいない左手でそっとドアを押す振りをすると、ドアは開き、結界も解除された。
「ね?ほら、だいじょうぶ。」
「え?どうして?これは、魔族には解くことが難しいとされてる結界よ。」
「じゅり、いそがないとみんなかえっちゃうよ。いこうよ。」
 朱里の驚きをよそに、由依は部屋の外へ出るように朱里の指を引っ張る。
「そ、そうね。あ、ちょっと待ってね。」
 
 慌てて、鞄を手にとって、自分の大切なものを詰める。龍助から貰ったブーケも入れた。花瓶に生けていた涼からもらった花の束には水属性の癒しの魔法を涼への感謝の気持ちを込めてかけた。
「ありがとう。涼さん。あなたも夢が見つかって、それがかないますように…。ディアブロ王様、シーズ博士ごめんなさい。やっぱり、私、彼やみんなと一緒にいたい。」
 
「はやくはやく!」
 まるで遠足にいく幼稚園児の様にワクワクした感じの由依は朱里をせかす。朱里がうなずいて、由依と手を繋いで部屋を出る。
 結界の異常に気が付いて駆けつけた警備兵が朱里達を見つける。
「止まれ!!!お前達?そこの小さいのはなんだ?」

イラスト:hata_hataさん

 通路で警備をしていた兵士には由依の存在は知らされていなかったので、慌てる。それを見逃さずに、朱里がデビルモードに一瞬でモードチェンジする。そして、胸元の『L.D.C.』を手にとった。
「Light of revolution!」
 朱里がそう叫ぶと、『L.D.C.』が光に包まれてロッドの形にフォームチェンジした。
「い、いけるわ。」
「お、お前、氾濫を起こす気か!!」
「ごめんなさい。」
 朱里がロッドを振って呪文を唱える。兵士が防御姿勢をとるが、癒しの攻撃魔法で眠りにつきゆっくり倒れる。espoir[nu.ku.mo.ri.]のクリスタルによる癒しの魔法効果であった。
「少しの間眠っていてね。本当にごめんなさい。さぁ、由依ちゃん、いくよ。」
「うん。おやすみなさい。じゅりのぴんくのかみもきれいね。」
 魔力を抑えていた茶色の髪から、デビルモードにモードチェンジしたことで髪の色が変化したのに由依がうれしそうに言う。眠りの魔法効果で眠ってしまっている兵士に片手を振りながら、朱里に手を引かれて由依も歩きだす。
 
 廊下を進み、階下へ通じる階段の前に来た時、涼や遥のバトルの魔力を感じる。
「これって、涼さんと、龍助君達が戦っているの?遥ちゃんも?なんとかしなくっちゃ。」
 心配そうな朱里の横で、あどけなく自分の髪も変化しないものかと由依が髪をいじっている。
 次の瞬間、二人の後ろから人影が現れる。そして、急速に近づいてきた。
 
 
to be continued...

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■Episode 001:

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■Episode 002:

♪:[light pink -I love you.-]

■Episode 003:

♪:[nu.ku.mo.ri.]

■Episode 004:

♪:[real]

■Episode 005:

♪:[color]

■Episode 006:

♪:[my wings]

■Episode 007:

♪:[I'll be there soon.(すぐ行くよ)]

■Episode 008:

♪:[promise]

イラスト:hata_hataさん

■Episode 017:

♪:[ドキ×2]

■Episode 018:

♪:[let it go!!]

■Episode 019:

♪:[N]

■Episode 020:

♪:[tears in love]
♪:[destiny]

■Episode 021:

♪:[Touch to your heart!]
♪:[you and me]

■Episode 022:

♪:[Happy Happy Love]

■Episode 023:

♪:[INFINITY]

■Episode 024:

♪:[さぁ、行くよ! \(@^▽^@)/♪]

■Episode 025:

♪:[pain]

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[interrupt feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲1曲iTunesほか各配信サイトへ2018年11月21日配信開始!!『がくっぽいど(神威がくぽ) 10th Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

 

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[initiative feat.神威がくぽ] shin 


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[reduction feat.神威がくぽ] shin


[voice feat.神威がくぽ] shin


音楽配信:VOCALOTRACKS
VOCALOTRACKS様にてがくっぽいど曲をiTunesやAmazonほかを含む全 配信サイトにて一般配信中!!『がくっぽいど(神威がくぽ) Anniversary オリジナル楽曲』
(楽曲:shin イラスト:hata_hata様)

CIRCLE[shin entertainment]

麻宮朱里(普段着姿)

イラスト:hata_hataさん